第北章 仕事ノ創出で導きます

「社会問題を解決する、ボランティアじゃなくちゃんと関わった人に報酬が出せるビジネスにする、もっと広い視野で麻雀を始める意義を考える」

「私よりよっぽど社長にふさわしい」

「そりゃそういうマインドばかり学んでいるからね。結局そういう環境だから、私も起業に前向きなだけ。そんなことを学んでなくて、天然で麻雀が強いわけでもないのに他人に麻雀をしたいと思わせる説明ができる。社長だよ。私も美果ちゃんの潜在能力を引き出して恩返ししたいよ」

「贖罪の意識じゃなくて?」

「幼なじみだからって私と琢磨の間に来られるのはね。私にも譲れないものはあるけど、譲っていいもの与えて美果ちゃんが幸せになるものは与えたい」

「別に嫌いにならないから、こんなことで」

なんでそんなにこのあくびマンを重要視しているのか、分からない。

「睡眠不足な現代人を救う貴重な指標に、琢磨君がなるかもしれない」

「崖霜家の、利用価値ってこと?」

「嫌な言い方するなあ」

そのくらいは言わせてよ。

「睡眠が足りなくなる遠因は、エンタメが時間獲得競争からのわずかな富合戦に突入しているから。全員が疲弊するだけで、未来がない」

規定の時間にアクションを起こさせるアプリゲーム、暇な時間の奪い合いでコンテンツを盛り上げる構図はよくよく考えるとおかしい。結果全員が睡眠不足で人体不満社会になっている。ビジネスの根本から間違っているのかも。

考えを放棄させ、受動的に娯楽のインプットマシンになるだけだと、娯楽の提供先だけが幸せで自分は変わらない不満は解消されないまま。インプットしたなら、アウトプットしないと。

「どうせオタクになるならば、業界の負の連鎖を変えてくれ」

病魔は根深い気もするけどね。

なんかみんな思い描く異世界像は同じで、それを書いている作家さんが心穏やか幸せであればいいのだけど。

現実では味わえない浮遊感は、適度に注入するくらいがちょうどいい。

麻雀も、のめり込み過ぎると道留の家みたいに一家離散の原因になる。ほどほどでいい。

「プロになるのは美果ちゃんの夢だろうから止めないけど、私達相手で凹んでいるようじゃ、プロは無理じゃない?」

3人が初心者アマチュア離れしている麻雀の上達ぶりをみせるからでしょ。

「だから美果ちゃんはその触媒役が1番合ってるよ。私も尋歌も琢磨もバラバラの性格でバラバラの未来を思い描いていたのが、麻雀で一致した」

「私の都合だけど」

4人で麻雀卓を囲みたいっていう。

「けどそれでぼっちからの脱却を試みて幼なじみとお嬢様の恋愛のキューピッド役になるくらい、結びつきを強めた」

尋歌、もうやめて。

「美果の力」

「ほんとに会社するの?」

「例えでいっただけ。私だってそういう思想に囚われているだけかもしれない。家の教育によって」

どんな形であっても、チャレンジしろと。今の提供してもらっている物やサービスは、本当に自分の欲望を全て叶えているか。そんな小さな話でなくて、技術発達でみんな幸せにしているか。幸せでないならどう課題を解決しようか。共感力があるなら、多分女性のほうが起業に、小回り利く働き方って女性のほうが必要としている。性別の労働環境格差もそもそもおかしいし、他人に憤りを感じる前にやることがある。

「責任転嫁やバッシングからは何も生まれない」

結局は罵倒をネットの海に垂れ流すだけで益を産まない。

「私は日本語しか分からない。結構。語学の数を増やすより、自分を説明できるための切り口を深く知って語学転換したくなる思想領域に入ればいいんだよ」

世界の点々が日本の変に有名になってしまった県名に集まり、違うプラスのイメージをもたらす場所で、本当に変わる?

「とらわれるな変わろう未来を明るくしよう」

そう思えない人がまだまだいるからこそ、ってこと?

「どこにいっても美果ちゃんや琢磨君、尋歌ちゃんの故郷は福島ノ福島でしょ?」

聡美は故郷がない。故郷は地球、過ごしたい場所を選べ。たしかに様々な場所に行けるなら、この時はこの地域でに勝手に思うけど、自分の故郷がないのは。

「私、適正のない人に社長向いてるなんて言わないから。偉いとか目立つとかじゃなくて会社の役割に過ぎない。どう見ても尋歌は優秀だけど社長じゃなくて技術サポート役でしょ? そういうこと」

聡美は家柄上、このことに関しては高校生の言葉遊びで行っているのではないと分かった。

「麻雀の新たな雇用創出ルートを作って麻雀に導ける人を増やすのよ。プロになるより美果ちゃんに向いていると思う」

そんな選択肢、あるなんて発想すらなかった。

「日本は起業しない文化だからね、周囲同調していればその発想には思い至らない」

ましてや都会でもないこの地で。でも会社員として普通に働く環境は誰かが確実に作っている。今の雇用環境が悪ければ、過去に産まれた企業が変わるより、起業のほうが少数精鋭で早いのかも。

麻雀に絞るなら、私でも取引先はどこになるかってすぐ分かる。麻雀オタクを伊達にやってない。

なんか、琢磨から気をそらせる聡美の高等テクだなとは思うが、指摘しないでおこう。

「理不尽なサービス残業で乙女の貴重な時間を浪費する美果ちゃんは私、見たくない」

「もはや聡美にどう感情をぶつけていいのかも分からない」

さっきからずっと立っていて疲れた。戻ろう。

「あとさ、琢磨はもっと何かないわけ?」

今さら口調や態度を変えてもおかしいし、琢磨は聡美といると自然体で顔が和らいでいる。もう幼なじみ効力は切れている。

こんなの見せられながら、社長やれって?

「美果なら、できる」

お前らのせいで出来ないんだ琢磨、聡美。

「だから他人にあたるのは」

負け組って、私のことか。1番麻雀愛が強いのに1番麻雀が弱くて、唯一長い付き合いの幼なじみをあっさりお嬢様にもっていかれて、なんか社長になれとか言われる。

田舎の庶民には金と地位を与えれば態度を変えるだろうと値踏みされているようで、気に喰わない。

「私の日本を離れる時は変わらない。だから高2の夏からは、邪魔者はいなくなる」

琢磨の想いが海外にあるのにどうしろと? また琢磨はこだわりがないから愛のためにとかでなくひょいと付いていきそうで怖いのですけど。

じゃあその時期までは普通の恋愛関係をなにがなんでもすると?

「私はお伺いを立てた」

「聡美はなんでも軽やかにこなすね。教養の成せる業なのかな? 」

人生の幸福を考えた時、崖霜聡美とは女と女の対立をするより、利用したほうがいいと考える。スペックで勝ち目はない

「今まで通り、麻雀卓を囲む部員として集まってもらっていいのかな?」

「美果が良ければ」by尋歌

「美果ちゃんが私的に執拗に聡美を口撃しなければ」by聡美

「美果が心穏やかでいられるなら」by琢磨

「この部の時はイチャイチャしないで、恋愛はよそでやって」by私

私が嫌とかじゃなくて、麻雀は麻雀でこれまで通り向き合いたいので。この先ひどい失恋をしても素知らぬように麻雀プロとして卓に座るかもしれない。就職して顔に出さないようにする。大人って醜い愚かな面ばかりJKからは目につくが、たいていの大人は偉い。なんとかアルコールやタバコやギャンブル他にもそれぞれの方法論で、大人が背負う十字架として役割に向き合うためにストレス逃がし策は必要だと。

社会の空気を汚す、アルコールは依存症の怖さ、そしたら電子化したり依存症対策などバックアップを施してまで、ストレス逃がし策は大人は必死で守る。

両親世代でも普通にゲームしていたり、逃がし策はオタク領域にもある。野球観戦も貴重なストレス発散の場? ひいきのチームが負けでストレスをもらいに行ってどうする? なんて野球に興味のない普通のJKは思う。

私達側だけが冷静判断できることを例に出し、自己優位合戦でギスギスするのも嫌なので、私達が弱い分野も出そう。

ダイエット信仰。

痩せれば全てが幸せになる、キレイを創る美を作る精神のモヤモヤも解決する。他国のJKより痩せすぎで栄養失調状態なのにダイエット信仰から逃れられない日本の女性。

別にメディアに出るプロ見られるプロで、あ、そういうモデルも痩せすぎなモデルは出すの禁止みたいな風潮あるから、やせたいにしても健康的でないとね。

高額な投資いる? 普段の食生活の見直しで。人格の変わる月の決まり事は……手応えがないことに甘えないで食を決めればいいし、なんのための学校? 保険の先生に聴けばいい、この学校には女の人生の先輩が保険の先生としている。相談できる。

1人で悩んでないで相談先を確保して女性の心に溜め込む共感欲望を満たしにいこう。

ぐだぐた言ってもしょうがない。夏休みまでもう少しってところで、放課後の麻雀打ち再開。


「繰り返す時空、キエーーーーイ」


ん、なんだ今の変なオッサンの声。

学校側からも連日合唱や吹奏楽の音、運動部の掛け声、役満時の熱狂演出、リア充に対する爆発音など様々な学校音が周囲の住居に響き渡り迷惑をかけている。近隣住人の生活音を超える奇声もお互い様だ。

ただ、なんかただの奇声じゃなくて、なんか私達に向けて発中白たような、違う、発生されたような。

この麻雀言い違いが合図だった。

私達の空間は、麻雀修行空間になり、時空が繰り返すのでお腹もすかずいわゆる身体変化がないままに麻雀を打ち続けることができる。麻雀に対する気持ちもやっと4人固まった体制のまま維持され、対局経験値だけが積める部屋。


ユルサレール博士の仕業だ。


私の地元もトンネルが昔に通って街と街のつながりに寄与した。トンネル工事をされた山の連なり、地元の利益のため、遠くの町村に一応は県庁のある福島ノ福島の富を行き渡らせるため、トンネルは動脈になる。

しかし、犠牲はある。博士はその山々が好きだった。何でもない山々に穴が空く。微妙な生態系が壊れる。

だから、許される。ユルサレール博士として目覚めさせるは地方の現実。

学校の部室を異空間化する、許される。

それが、ユルサレール博士。

例えば、麻雀対局じゃない人生指針のヒントも対局しながら得られる。

例えば聡美の言うように社長になって3人を率いてある程度成功を収めたら、好きになる男より稼ぐ女にならないか。将来の相手に逃げられないか。

「金を稼いでいることではなく、麻雀を仕事にしたかった愛を話せばいいんだよ」

稼ぐきっかけになった業態の魅力を話せばいい。稼いだ結果としての金に焦点を絞るからおかしなことになる。

原発被害補償区域に入っているかいないかで人生の裕福度が露骨に変わる県の現実、金は惑わせる、そもそも原発置いたのだって、地方の食べていけない現実から始まったのである。

「麻雀愛を高める空間にしてあげた」

いや、私は嬉しいけどさ、3人はそれぞれ別の夢が。

しかしここでもユルサレールの力学が。

半荘1回終わると、3人の気持ちは繰り返す。つまり、また半荘1回分を始める気持ちに戻る。私は何度も麻雀を打っているのを分かっているのに、私だけこの空間を出たらおばあさんになっているとかないよね?

「だいじょ~ぶ」

その返事が1番大丈夫じゃないんだが。

それも含めてユルサレール。

気持ちは繰り返すが、3人も私と同程度の麻雀経験値は積まれるという。私だけ回数の記憶があるようにしたのはなぜ?

「ユルサレールからの特別扱い」

博士も、恋愛で色々あったそうで、私みたいな小娘を応援したくなったと。

とりあえずプロには絶対なる。そのうえでプロライセンスを生かして麻雀にどう自分が寄与できるのかに関しては視野を広く持とう。

麻雀界に若い力は絶対いるはずで、この空間は麻雀だけしていたい特殊領域に入った者にとっては、夢の空間。歳もとらない。ずっと夏休み前のいつもの部活のいつもの半荘が、望む限り回数を重ねられると。

周囲と分断しているから、それはもう色々な。

ま、悪いけどああそうですかと琢磨を諦める私ではない。

行動は普通に麻雀を打っていても、気を伝える。

麻雀に携わると幸せになれる。その安心して麻雀打ちになれる仕組みも、多分女だから気づけることがあると思う。

出来ないことだらけだけど、聡美と琢磨と尋歌がいれば、できるんじゃないかって気がしている。

正しい努力を正しい戦略でもってすれば、多分こんな空間をこさえなくても麻雀プロとして活躍できる人はすっとなれる。

私は恋愛でも麻雀の強くなりかたでも凡人の愚かさを抜け出せずにもがいていた。見かねたユルサレール博士の助力。

博士も、幸せになってね。好きな山々をトンネルに開放した以上の幸せが訪れますように。

私は私の方法論で幸せを魅せることが、この特殊空間を渡してくれた博士に返せる恩返し。

いつまでも、麻雀ファンではあるのだけど、あの場所に立ちたい。対等になりたい。そのための鍛練の時間。

私はもう夢中になって麻雀にのめり込んだ。3人は空間仕様によって半荘終了後はまた半荘を始める前の心持ちで麻雀牌に向かってくれる。

空間を抜けた時、してはならないこと。

特別なたまごを探したくなる衝動にかられるが、今の自分を不幸にする入り口になるので、辞めなさい。思い出しなさい。

分かりました。今もそこそこいらだちはあるけど、自分の未熟さのせいだから。せめて麻雀の強さくらいは3人超えてないと、対等に話せない。マジでずっと麻雀のことを考えられる人生にしたいし、もちろん仕事だけじゃなく充実しているって実感できる人生にしたい。ここで頑張らないでいつ頑張るの? こんなに幸せな空間を与えてもらって、チャンスに気づけて、心身共に健康で、努力しないのはもはや罪。

ざっと、私の好きな麻雀チーム戦のレギュラーシーズン分は打ったかな。3人はそれだけの対局経験値を積んでいることを知らない。空間を抜けた時に、1局打っただけなのになんか麻雀の経験値が上がった不思議な気持ちになるだけらしい。私とユルサレール博士だけが、真実を知っている。

歳の離れた友達? 変な関係じゃなくて、琢磨と子どもの時に山の楽しみかたと注意するとこを教えてくれた教師ではない先生。だから琢磨も会えば分かる。もうすっかりあの頃のガキっぽい男の子みたいな振る舞いはしなくなったけど、根は少年なはず。隠すのがうまくなっただけだ。

私も少女の頃の幸せな気持ちだけではいられない。大人になっていく責任が増える。相変わらず義務教育を抜けても進学校でも授業の基本は答えのある正解を書く、だが人生の正解はない。あるものもなくなるし、ないものを得ることも。受験勉強も努力経験値として取り入れるべきで、せっかくそんな学校にいるし、頑張ってみてもいいのかな? 尋歌がいるし、方法だけ教わったら後は自分の努力次第。麻雀の努力は後々でもできるけど、受験勉強の努力は後々はできない。私みたいな勉強嫌いは特にしない。

でもあなた人前に立つ憧れられる応援される雀士になりたいのでしょう? 認められる努力のかけらはかき集めて糧にしないと、そりゃ麻雀プロになるよなって周囲を納得させないと。

麻雀を打つことをもっともっとライトに身近にしたい。このために青春を捧げたい。

そうであれば、決まった。

どんなに辞めたくなっても辞めない心構えだけが、あとは必要だ。

人生の転機で離れることはあったとしても、何かしら麻雀には触れていたい。今やネットで麻雀に触れることだってできる。地方だからは言い訳にできない。ネット環境がダメで……好きなことのためなら整えるために一生懸命になれる。行動できないなら、麻雀をまだそんなに好きじゃないのだ。何かしらの手段で、麻雀の時間を増やす努力をはじめるはずだから。

私の麻雀スタイル、多分全く麻雀を知らない人が打ちたくなるスタイルが、1番いいのかな? 配牌からの牌の選び方を見て、感心されるのではなくなんだこんな娘はと見くびられ、それなら俺が私が麻雀打ちになったるわの踏み台でもいいと思っている。時々ほんとに強くて勝つ。

琢磨の軽睡眠打法とかまともじゃないし、聡美のリスク承知打法は、特に麻雀チーム戦のルール上攻撃寄り思考になりやすいので、プロも意識する打ち方ではある。尋歌のリーチ嫌い打法は、邪道だと思うが尋歌の麻雀の見方はそれが正解で、実際につかんでも安全そうに見えても、降り放縦をしないし、選択肢をリーチしないことによって作っている。リーチを大事にしていて乱発しないから、リーチ嫌いに見えるだけ。

麻雀愛著しい私に麻雀プロになる夢なんかまるでない3人が真剣に向かってきてくれている、それだけで感謝。

3人はただの半荘を繰り返している精神状態だから何ともないけど、私は記憶しているのになぜ飽きないのか。

色々あったけどこの3人と卓を囲めるというのが、とにかく幸せでパッケージングされたのが、現実離れしているのかもしれないけど私の考える理想の異世界だ。

みんなが考える異世界の理想とは違うかもしれないけど、老けずに麻雀の経験値だけ積める空間をこしらえてくれて、ありがとう。

すべてはユルサレール博士の許される人徳がなし得る技能。

色々理不尽なことはあるけど、身近な人が不幸に片足つっこんでいるのを、不幸になれと願う人なんていない。恥ずかしがらずに救いを求めればいい。

幼なじみをとられて嫌な気持ちと琢磨の魅力を分かる人は私だけじゃないという喜びと、なんかごっちゃなんだよね。

?を!にしていく人生の喜び。

「本気で来てくれないから、あなたの大好きな麻雀でも打ち負かされるのよ」

聡美の意見はもっともだ。恨めるだけの努力をあなたはしたのか。お嬢様という立場でのんきに暮らすこともできるのに、人知れず麻雀を強くなる努力をそうとは見せずにできる。スゴい。

「ひとつしか見えないと遠回りになる。他の物事も麻雀に結びつけられる柔軟性が美果には必要ね」

他の競技、他の娯楽の良さを謙虚に学び、麻雀に生かせることはないか。

「ゴルフに一生懸命になれた時、改めて麻雀に向き合うことができるかもしれない」

道留はモデルケースに成りうる。引退後のスポーツ選手の道としてプロ雀士、ない話ではない。何より勝負師としての経験値をそのまま麻雀に持ってこれるのは、アドバンテージ。スポーツの種類関係なく、相互に良くなってほしい。

「こうしなきゃは他人に任せて、自分は自分のできる尽くしを聡美にしてあげたいし、尋歌の勉学に対する情熱は襟を正すきっかけになるし、長く一緒に時を過ごした美果とどう向き合い直したらいいのか、俺も分からなかった」

すれ違いだったんだ。一方的に男が悪いって言って女子会は盛り上がっても、生産性もなければ幸せにもならない。生産性ない会話は女は好きだしその悪口大会自体が楽しいからそれはそれでいいけど、そんな会話相手が幸せをつかんだらどうする? 孤独を分かち合ってくれる人は歳と共にいなくなる。自問自答の寂しい女の出来上がり。生涯未婚率で男女に差があるのは恋愛に対する意識と必死さの差、それでも女性の孤独は珍しくもない社会に突入している。赤の他人と価値観を合わせる作業ほどめんどくさいものはない。女性は慎み警戒しないといけないし、待ち過ぎて気づいた時には絶望に先に直面するのも女。身体的にしょうがない事実があるのなら、幸せのための逆算で考えないといけない。

男子プロに比べて女子プロは稼げると聞くが、衣装代は自腹で出ていくお金も多い。麻雀が打ちやすくてかわいい衣装の専門レンタル屋ってないの? アパレルだって大手じゃなかったらネットを用いて細分化したほうが絶対いい。麻雀プロ専用の服屋さん。

いつか誰かがやってくれるだろう。そんな気持ちであの麻雀チーム戦が産めるわけない。ビジネスでの実績と他業種に協力を持ちかける交渉力と麻雀に対する熱い想いと、兼ね備えないとできなかった麻雀チームリーグ。

スポーツ選手みたいなユニフォーム、みんなで集まってグッズ持って応援って文化。そのものが素敵。

男性プロにもカッコいい衣装を着て麻雀を打ってほしい。衣装に興味なくおまかせできるならおまかせしたい人も男ならいるはず。麻雀への情熱や腕前をサポートできる企業、いいかも。

高校を卒業したら服の勉強してみたいな。ふんわりファッションに憧れじゃなくて、麻雀打ちに適した服作りの応用ができるように基礎固めから。私以上に服に対する情熱をもつ人に協力してもらうにも、私も服に興味ある姿勢を示さないといけない。麻雀に対する熱い想いは元々あるから、あとは手段と行動、実践だな。

しなきゃいけないこと、起業する意味、麻雀に限っても色々有りそう。

「ちょっと起業に興味出てきた?」

なんも分からないけど。失敗したらどうなるの?

「私の家のバジェット低く見積り過ぎ」

崖霜一族の金余りは、浪費のためではなくビジネス挑戦の火を消さないため。これはと思って始めても失敗のほうが多いのが起業だ。でも1回の成功で今までの損も回収できる。

「普通の人はリスクをとれないから今の仕事はブラックだと分かっていても辞められない。うちは挑戦しないことのほうが罪になるから」

成功したなら早く任せて次の挑戦をしろ。崖霜家の繁栄を支える基本思想。そのかわり自分の欲望で金を溶かすのは再チャンスを与えない。

優秀な部下もトップの役割ができるとは限らないんじゃ? 確かにそうかもしれないが、思考錯誤ぶつかってモノを考えないと、現場にブラックを強要するワンマン社長がのさばる会社だらけになる。同じ社長の立場に立って駆逐するしかないんだよ。

「私に優しくできる美果ちゃんならどんな立場の人にも優しくできる」

優しくしているわけではないんだけどね。1面で見れば対立関係かもしれないけど、人間いろんな側面があるし、私達タレントじゃないからひとつの側面しかないキャラじゃない。物事にはいろんな側面があって、基本聡美は海外経験の豊富さからくる日本に囚われない発想のできる私にはない要素を持っている。

尋歌も静かな面ばかりが目立つがあえてのリーチ嫌いはゴリゴリの個性だし、芯が強い、余計な口を利かない良さ、分かる。

琢磨も眠そうな表面上の側面と真剣に麻雀に限らず物事を見ている面とある。道留もゴルフだけじゃない。

多角形の人間が、まあ欲にまみれた愚かな面もありながら、進まなくてはいけない。

麻雀好きな普通の女の子。ちょっと個性的な人を引き付ける体質があるけど、私はどこにでもいるいち麻雀ファンでしかない。

福島ノ福島から応援していても、遠くだし平日だからリアルに会えない。学生にはあまりにも条件が厳しい。

福音が、訪れたのは今年に入って。麻雀のチーム戦はチーム数が増えたことで日程が増え、たまに土日にやるようになる。この影響で、休みでも、イベントに行ける。

ファンって個性は捨てたくない。だって好きだから。ファンじゃなくてフラットに麻雀を見られてプロになれそうなのは3人と道留なんだと思う。そのほうが早く強くなれるのかもしれない。自身の麻雀道だけに時間を使えばいいから。ファン活動は他人に任せて自分の雀力を上げろ、確かにそうなんだ。

結局、貴重な日曜日のイベントには予算やもろもろの都合で行けなくなるのだが。ちなみに現実の麻雀チームリーグは野球のオフシーズンに行われる。

「美果ちゃんが本気で社長業したいなら崖霜家の総力を上げる」

毎年ある国の国家予算規模の事業投資を行っても破綻しない程度の財力。

マーケットが世界だからなんだろうね。

「麻雀だって日本ローカルルールのままにはしたくないんでしょ? 国際感覚理解は絶対必要になる。世界の娯楽の需要のされかたを知る必要がある」

麻雀をしている姿がカッコいいと世界の人も思う工夫がいる。

「麻雀に関係ないよそんなことが、実はものすごく必要かもしれない」

答えは遠くの近くにある。受験の答えとは違う。というか誰も問題がなんなのかすら分かっていない。設問の方向性から間違っているかもしれないのだ。社会の課題とはそういうことだ。

麻雀ひとつとっても、神視点で見られる立場でやいのやいの色々言う、スポーツ観戦らしいっちゃらしいが、やはり運動スポーツではないので、ファンのあり方も模索の時期。ただ広がればいいのか?

「私もファンだから、こうあってほしいは色々ある。でも運営も少ない人的資源の中で見せてくれている」

理想と現実のギャップは簡単には埋まらない。

「もうさ、楽しいことはいっぱいあるんだよ。その中で麻雀が選ばれるには、だよ。それよりも」

「それよりも」

「琢磨の正妻は私だ」

「……やっぱり、争いは避けられないわね」

普通なら、年数が勝つ。聡美もそう思ってひきながら探っていたらしい。

琢磨の本心は、崖霜家のバックグラウンドなしでも聡美に手をあげる。

自分で自分に傷つく結論。

「麻雀の腕とは関係なく、琢磨にふさわしいのはどっち合戦を、審判尋歌でやるべきね」

ちなみに麻雀対局中のこういう会話は、3人も覚えたうえで半荘1局は繰り返される。

どこまでも麻雀の成長に都合のよい時空。

そんな時空も、博士はユルサレール。

だって、麻雀が好きなんだもん。

「なんだこれ」

時空を抜けるタイミングも、私に委ねられている。

抜けた途端に副作用来ているとか、ないよね?

相対性理論だから? あれは時間がゆっくり進むで、繰り返しはしないはず。

この時空内が高速で動いていて通常空間よりも時間を大幅に増やせたと。ではどうなっているのその仕組みは?

琢磨の特殊体質もそうだけど、ユルサレール博士のしわざだな。

1局が366局になった時点で、時空を抜けた。

みんな、理由不明の疲労感が。そりゃそう。

あれ? 疲れもないのか?

さすが、ユルサレール博士の時空ですね。


「どういうつもり?」

私と琢磨が一緒になれるのは、家への帰り道。一緒に帰りはしなかったが、帰り道に帰ろうと思えば帰れる。子どもの脚力で山を登って自転車押して、琢磨の山の家に向かっていた。

「聡美がいいなって、雰囲気だよ」

「私に止める権利はない」

「二股は女の敵でしょ? 敵つくりたくないよ」

そう、何事においてもこだわらず、敵をつくらない発言で切り抜けてきたのが琢磨だった。

「聡美は俺に限らず周囲の人を明るくできる」

「私もそれに救われた」

琢磨の家に至る山をちょっと登り、山の斜面を利用した公園に、私達は自転車を置き、話す。

「俺にどうしてほしいの?」

「……言わせないでよ」

そもそも私と帰ってくれる時点で。

「聡美とはどんな話するの?」

「海外の話かな? 俺は俺で興味ある事柄とか考え方とか」

「考え方?」

「へりくつみたいなの? 美果は嫌がるあれ」

私が考えおこちゃまだったから、押し問答みたいなの、嫌なんだよ。

「今は大丈夫だよ、子どもじゃないし」

「張り合いたいの?」

明確に、俺の本心は崖霜聡美だよと宣告するために説得されているみたいで、怖い。

「私がきちんと子どもを脱却したら、琢磨は振り向いてくれるの?」

なんてことを言ってしまったのだろう。

嫌な女だ。

「確かに甘酸っぱい高校時代の恋愛がもたらす安心感を琢磨に限らず誰にも与えられない迷走女が今の私」

こういうのは、自分の心の中で消化することであって、他人にぶつけてうさを晴らすものではない。

「最悪最低身近な人にも愛想を尽かされる生きている価値の」

「価値はたくさんある女性が武井美果」

こうやって同情誘う語り口で琢磨にフォローさせる私。

「まず、俺と聡美を出会わせたのが美果」

ああ、やっぱり。

「俺に麻雀の魅力を教えてくれたのが美果」

キューピッドとして優等生だと。

私の幸せは望むなと。

「美果にしかできないこと、たくさんある」

「たくさんあってもひとつが叶わないと意味がない」

「男に恨まれる男になりたくないし、誠実な男でいたいな。女性も一途な人のほうが安心でしょ?」

「そんなに聡美のこと好きなの?」

「美果も聡美が人として好きだから、もっとガーって罵倒したくても言えない」

否定できない。聡美に私もゾッコンだった。人たらしって言うのかな、そんなとこまで私のことを分かるの? って気づき力がすさまじい。

国も文化も違う世界の人と密に交流する素地は、言語ではなくそういうことだってのが、聡美に学んだ。

「俺が聡美に提供できる価値」

「そうよ、釣り合わないから」

「無、かな」

ない、じゃないの?

「日本っぽいだろ? 無の境地」

確かに神宮寺琢磨に欲はなさそうだ。聡美と恋人でいたい欲は、今存分に感じるけど、なんとなく今を楽しく生きる人って印象。

「そのままで何もなくても幸せを実感できたら金を追い求めるラットレースもいらないし、まず何より睡眠の幸せを現代人は軽視し過ぎだ。何かを見て触れて得ないと、自分の人生は幸せになれないと大きな勘違いをしている」

「悟った、ってこと?」

「俺はポーズもいらない。禅の思想を自分なりにアレンジして」

なんかスゴいこと言い出した、同時に、聡美が惹かれた理由もなんとなく分かった。

金持ちは、実は不安。精神的な幸せの充足は実はそんなとこにはない。もちろん金で解決できることはできる。

聡美の空虚な部分に入り込んだと。極めて日本人らしい物事で。

「軽睡眠、軽く寝ながら麻雀というゲームに気を込めずにうち回していく」

気を込めたらツモが良くなる、確かにない。

「1人でいるときの気の持ちようはもっと重要で、世俗を外す間を1人の時間にもうけていく」

世俗を外す間、これは分からない。

「普通だったら山奥にこもって座禅組んで厳しい修行して、だと仕事がある学生の本分がある人々には無理でしょ? 孤独な時間の過ごし方講義みたいなもんかな」

情報はパッと得てながら作業をしない。瞑想もライトに日常に取り入れる組み込む。

「なんかの宗派とかではなく、今あるものに感謝できる心の充足を得る自分なりの方法論」

怖いよ、彼氏がいきなりこんなこと言い出したら。でも聡美にはビシバシ刺さる。あーなるほどね。別に恋人を得る行動を起こさないのに恋人ができた理由は分かった。

神宮寺琢磨オリジナルの無の探求。そんな大層な名字しているだけあるね。

「誰かの影響? ヤバイツボ買ってない?」

「そんなの必要なの? 自問自答するのに」

確かにそうだ。

身近な幼なじみがこんな悟らなきゃいけなくなる災害、福島にあったわ、めっちゃデカイのあったわ。何十年たっても消化できないことあったわ。風向きで福島ノ福島まで土壌汚染がどうのあったわ。

悲観でも変に明るくでもなく琢磨はそっちに向かったのね。

「だるまって言ったら福島ノ白河だけどさ」

だるま、ああ、あの。禅や悟りと関係あるんだ。

「福島ノ福島でも大事に」

まあ日本らしい置物だよね。なんか縁起いいイメージあるし。

「だるまの起源に関して細かいことは言わないけど、まあとにかく得ようとしないこと」

「聡美が別れたいって言ったら?」

私の願望だけど、女心は変わりやすいからね。

「追わないよ。元より偶然の産物だ」

聡美がここの日本の拠点にした奇跡、私がキューピッドになってしまった私にとっての悲劇。

「ゼロかヒャクかの欲望の捨てかたは実践者を減らす悪手だ。修行のための修行ではなく、人生の目的を単純明快にして進みやすくするように削ぎ落とすための思考深化」

「私は?」

「麻雀のため。迷いがなければ、もう美果に深化の必要はない」

「麻雀バカを期待されている?」

「尋歌のところに行ってみな。俺とか言い出しっぺの聡美以上に、美果を社長にしたがっている」


そこは、お忍びで有名人も通う、福島ノ福島にある川俣シャモの店。

「おいしいもの食べよう」

JKなりたての子が私を誘ってくるような場所ではない。

「ビジネスの話でしょ?」

尋歌の顔が違う。麻雀でも中々に勝負師の姿を見せるけど、あくまで麻雀は私の好きな分野。多分今から話すことが、尋歌の好きな分野なんだなあって顔してる。

「怪しい何かを売ったりなんてしないよ」

私が怖がっているのを察したのか、服装も尋歌に合った、なんだ普通にかわいい服も着るんだって安心した。いつでも制服なイメージだから。学校期待のエリートってイメージが抜けてないな。麻雀に誘っておいてそんなイメージで尋歌を見てはいけないと反省。

「プログラミング、小学校でやったじゃない」

なんとなくね、私のガラじゃなかったけど。尋歌得意そうだよね。

「動画編集で、人気者を助けたいじゃない」

いつでも編集家として仕事できるように準備している、らしい。

「麻雀がいかに素晴らしいか、外にいる人に文章にして伝えること、できる」

中心に私が立ってくれたら、私の麻雀熱量を麻雀を知らない人に変換して麻雀グッズを買いたくなる文章を書くことができるという。

「美果がやってと言うのなら、私本気でやるよ」

「私次第ってこと?」

「私1人で私の収入を増やすのは簡単だけど、それで何するの?」

勉強ができる人は何でもできるんだなあ、理解度が違いすぎるんだろうね。

「84歳のおばあちゃんでもプログラマーとして世界中を飛び回っているのに、JK成り立てが隠居人みたいな発想じゃいられないでしょ?」

電子仕事イコール若者の時しか出来ない仕事でもないと。

「収益化出来ないなら私が支えるから、社長になってよ」

「こんな勧誘される? JK1年生で?」

「歳は関係ないよ」

若すぎるも関係ないってことか。

「むしろチャレンジして失敗は若いうちにしたほうがいい。立ち直りが早い。ケガの治りが早いように」

今の若さは永遠ではない。高校生活なんてあっという間に終わる。大人になり、適当に就職し、なんとなくの収入レベルで終わるのか?

「麻雀っていう刺激的なゲームに私達を引き込んだ、責任をとってもらわないと」

変に稼ごうとしても喰われるだけ。私は麻雀普及という儲けとは関係ない好きの軸があるから強いと、尋歌は言う。

「企業理念が既に存在した状態で始められる」

ただ自分が稼げればいい、確かにこれでは仲間は集まらない。稼げた時に必ず喧嘩になる。

「美果は麻雀好きに導かれるとどのような楽しみが待っているかを説明できる夢想家でいればいい。バックアップは3人でするから」

なんでこんなことになったんだっけ? 麻雀をリアルにしたいって同級生から3人集めたらこうなった。食べ物はおいしいけど、会話内容に緊張と動揺のスパイスが効きすぎている。ぷりぷりの鶏肉の料理がこの店を盛り上げる。そしてどんだけサイン色紙あるんだ。この店だけのために本人直々の予約で来る有名人もいるらしい。

「まだ、気持ちが固まってないよね。しょうがない」

「突然社長って言われる私の気持ちよ」

「でも聡美が経営の星の元に産まれたのは知っていたし、私がなんとなくパソコンはじめガジェット関連強そうなの、琢磨が凡人が考えがちな欲望を断捨離してシンプルに考えられそうなの、美果は知っていた」

なんだろ、そこまでとは思わなかった。私だけが平凡な人間だってことが、より一層強まった。

「他人の嫉妬で手に入らないむき~ってなっている美果は見たくない」

そのむき~って言った時の顔好き、もう一回やって。

分かりやすく赤面する尋歌。

「学問よりこっちのほうが楽しそうじゃない。やっぱり勉強はやらされているの?」

「うーん、勉強ってお金をかけてもらえて生きる糧につながる唯一の武器なのね。ただ受験勉強ロボットになるだけじゃなくて、学生時代の本分を自分の夢に繋げるレバレッジにすればいいのよ」

私としては、おそらく琢磨も元女子校の地元進学校に入るまでで力尽きたのですが。聡美と尋歌なら日本全国どの進学校でも余裕で行けそうだけど、なぜかここにいる。

「あなたたちに会うため導かれた、のかな?」

尋歌が夢みたいなことを語るとか、上機嫌。学校でおとなしい尋歌じゃない姿。

「麻雀AI、だって」

とうとう麻雀にも、AIの波が。

「ただの雀士には興味ありません」

AIは麻雀の腕前だけじゃなくて、ライトノベルの美少女が放つ台詞っぽいことまで学習するんだ。まあしようと思えばできるのか。そんな感じでプロが挑発されるのはたまったもんじゃないな。

「やるならすぐやってほしい。勝者総取りだから」

躊躇せずにやってほしいと。

「どうなってもしらないから」


だって何ができるのだろう。

麻雀が好きになるグッズ。

クッションでいいのかな?

麻雀牌の、出来たらすべての牌を。

「麻雀に囲まれていたい人生、素敵じゃない」

ちょっと横になりたい時の枕に、ぎゅ~っと抱きしめたくなった時、麻雀チーム戦のグッズでもあるけど、もっとなんていうのかな? 種類が欲しい。

「いきなり大胆だね、私がバックにいるから予算とか気にしない感じ?」

私の当面のライバル、でも今は最強のビジネスパートナー。

「もちろんサンプルを作って、麻雀プロとか関係者に売り込みに行って売れるなとなってから本格的に商品開発、だけどゴールはそう、ってだけ」

どうしたの?

「美果社長、ついていきます」

大げさ。そのくらい分かるよ。赤字にしたくないもん。

「無計画じゃない販売計画。調子乗って流れで社長やってる考えなしの男に聞かせてやりたい」

聡美が言うと具体的過ぎて怖いよ。

「調子乗っていきなり店舗数増やして社員に恐怖政治強いてるワンマン社長とか」

だから怖いよ。

「業態を絞っているからね。極致需要だもの」

麻雀グッズ以外で本気になれそうなのないし。

麻雀×快眠グッズプロジェクト。何より睡眠のプロがいるし。アイツは何もなくても眠れるけど、眠りの環境整備事業なら矛盾するけど目を覚まして働くだろう。

赤ちゃんがすっと眠る、大人も雀士こりが身体に負荷を。

これだと、単なる生涯のビジネスパートナーに出会うための手段だよね、学校が。

「そんなもんだよ」

なぜ、異世界に行きたがる? 今の空間がみんな息苦しいから。でも凡人だから、脱出の恐怖がある。

「もうだから遊びじゃなくて仕事をしちゃえばいいのよ。尋歌が1人でどれだけ稼いでいるか知ってる?」

あのおいしい川俣シャモの焼き鳥屋で余裕で私におごれるくらいには。

「想像以上だと思う、私もあの領域は無理」

勉強できるだけじゃない、むしろそっちのほうが尊敬する。

「あなたの社長業に尋歌が付き合う金銭的メリット、何もないのに美果ちゃんのために働きたい気にさせる。才能じゃない?」

自分のことは自分が1番分からない。

「起業の目的がはっきりしている」

麻雀に携わっている人、これから携わろうとする人みんなを幸せに導きたい。

「売るターゲットがはっきりしていて、計画的」

日本中の雀荘に必ず、プロも愛用する快眠麻雀グッズ。そこから麻雀ファンに広げていく。

心身共に健康なベースがあって、魅了する麻雀を打てる未来の提供。健全な麻雀イメージの次の段階。

やること。試作品をとにかく知ってもらう。ここでJKパワーを使う。

「私、麻雀ファンで、あのグッズ作ってみたくて友達と協力して」

ふかふか麻雀クッションの別牌バージョン。印刷技術の高さを示すなら、あと豪華さも考えると鳥さんだよね。一索。

最初は簡単なのからのほうがいいか。とにかくクッションの質を体験してもらう。

JK離れした開発力を自然にアピールする。地方だし、お金もないからと、自作した。本当はスモール事業にしようとしているが、それは伏せる。

「資金調達は尋歌ちゃんと私でやるから、美果ちゃんに求めるのは事業計画」

決めることが、私の仕事。

「私の家に来てくれない? 多分この段階まで来たら、ノウハウは大事」

世界中で事業を興しては潰し、スクラップ&ビルドを繰り返し時代に合わせて作り替えてきた常時起業家の崖霜家には、そういうののプロがいると。

「子ども扱いされないよ」

ここではじめて私は、数字に強くなっとけば良かったと悟るのである。いや覚悟決めて覚えるけどさ。学校の勉強のやらされじゃないから向き合えたのはあるかな。だって自分の理想の麻雀環境のためだもの。

麻雀×快眠が本当に需要あるかは綿密にリサーチする必要ある。麻雀×何かは確実に麻雀に興味のない人に麻雀を知るきっかけになるし、最初は快眠目的ふかふかクッション目的でいい。へーこれ麻雀の牌なんだ。

喜んでもらえて事業継続できる仕組み。高校卒業後に専念していいのか?

聡美と尋歌が学校内でも特別扱いされていることは知っている。聡美はそもそも日本のどの高校でも良かった。尋歌は学業で文句言えない成果を出し続けている。私と琢磨も勉強覚えるためにって言えば、先生は何も言えない。

覚えること任せることすぐ行動に起こしたほうがいいこと知識をつけてじっくり取り組んだほうがいいこと。学ぶための高校生活にしよう。

あなたを麻雀好きに導くための手法。なんとなく何回か麻雀について動画上げたりブログ書いていたけど、大きく方向転換。


とにかく崖霜家に行く。広いし快適だし新幹線駅近ですね。分かりやすく和の豪邸。

企業的に言えば、福島ノ福島支部って感じ?

なんか、めっちゃ歓迎された。

「なんか独立したいじゃないマインドの御友人、聡美様と同い年で」

初対面の人に泣かれた。聡美の親、ではなく専属のメイドさんらしい。さすがお金持ち。

メイドさんも起業家志望だったが、考えの甘さをこの家の者に指摘され、私は尽くすほうが向いていると判断し、メイド道を歩むことにしたという。

「あの、別に会社を作ると決まったわけじゃ」

麻雀プロになりたいが第一なんですけど。せっかく麻雀に携わるなら、そういうこともしたいなってだけで。

「素晴らしい」

ダメだ、話にならない。

会社をいちからより廃業寸前の会社を買ったほうが早いだの、なんか色々あって分からないよ。

「就職したくないから起業ってわけ」

「ではないですよもちろん」

メイドさんの問いにはもちろんNO。

そもそも麻雀と関連しなくても、麻雀プロをするなかで心身共に健やかに過ごせるものでもいい。既存商品で満足出来ない。作るしかない。私の願望ではなく麻雀の世界の人達が必要だって言うか、私と似たマインドを持った仲間が必要とするか、そのスキルいくらで欲しいと言ってくれるか。

継続的に収益化する仕組み。

何も考えずに学生をするはずだった私の人生は、大きく狂った。JKブランドが利くうちに、社長になるための専門的な物事を、ここで学ぶようになる。

「とにかく現状であまりお金をかけずに物を作りたい」

だってJKだぜ? いくら人知れず尋歌が稼いでいようとも、聡美がそういう家だろうとも、それに頼っちゃいけない。

メンターとして、私にとってここ以上の場所は知らないから、それは頼るけども。

今のとりあえずの生煮えなアイデアでしかないので、まあ鍛えたい。

本音、崖霜家に来る理由をつくれて美味しい食事にありつける。頑張る若者ブランドを生かす。

「だから美果ちゃんが抱きしめたくなるほど好きなの」

同じ人を好きになったなら、性格は似るんじゃないの?

そう、本来はこういう話をしたいのである。

「琢磨の魅力」

「付け焼き刃のモテたいを出さない自然体」

それだけで、この学校内ではかなりの優位。

「一緒にいて、安心する」

常時寝ているようなやつ、故に安らぎの環境を自然に作れて女子も安心できる。

「気づく」

モテたいがための俺が俺がと前のめりになることはしない、が、ここぞという時に助けてくれるし与えてくれる。ギブのタイミングが神ってる。

だいたいなんで麻雀×快眠かって言えば、テスターとして神宮寺琢磨というこれ以上ない適任者がいるからであって、そうでなければ違う組み合わせにしていた。

「正直なんで最初は福島なんだろうって思っていた」

そりゃそうだ、世界で変に知られ過ぎている災害の地名。

「一生の友に会うためだったんだ」

「他国にはいないの?」

「一生って自然と思えたのは初」

「やっぱり世界に行けば行くほど日本人だって意識する」

「かもしれないけど、こだわってもいない」

聡美を見てるとそんな気がする。

「両親がバリバリ事業やっている中で私を育ててくれた」

すき間を見て愛情を与える時間を確保していた両親。一族の系譜を自分なりに生かす。

「両親から見ても、琢磨君は一目置かれると思う」

はあ、そうなるよね。

ここで、聡美は耳打ちしてくる。

えっと、それでいいの?

「美果ちゃんの本気が知りたいから」

なんか、すべて手のひらの上って感じ。結局、転がされている。

「結局麻雀だけしたい。道留君も含めた4人は4人の人生を歩みながら麻雀も嗜んでくれたらうれしい」

うん、別に案ってだけだし、起業とかも。

より良い方法はないかなって考え続ける。

「でしょ?」

「私の心の中を全部分かったように」

「時に琢磨の振る舞いは、眠そうな顔して働く人間、それが意識高い経営者でもイラつく素質を持っている」

そんなに成功しているなら自分に鞭打って自分を叩き起こすんじゃなくて、もっと寝ていたい幸せな時間を起きて仕事している時間も継続できる仕組みを作れば?

やることなくて寝過ぎて頭痛いは論外で、みんな睡眠欲の重要性を軽視し過ぎ。そもそも外敵に襲われずに安心して眠れるのが財産なんだから。

必ず琢磨はこう言う。そこに禅とか煩悩に対する向き合い方とか重なってできている。

「他人に合わせる必要なんてないと、琢磨は教えてくれる」

誰にも教わってないという。なぜ快適な睡眠の時から離れないといけないのか? 金持ちになったらより豪勢に眠れるようになるのか?

「どうしても金を稼がなければいけないのなら、睡眠がいい。そうでなければ、修行したい」

勝手にどこかの打ち捨てられた禅をするのにふさわしい場所を見つけ、勝手に開祖になるという。

「……俗世からどんどん離れていってしまう」

琢磨は怠けたいわけではない。娯楽を楽しむにしたって時間がなくなる時代だから、仕事で成功すればするほど、時間がなくなる時代だから、効率よく休息できるならしたいってだけ。

分からなくもない。現実はイライラとストレスだらけ。

「本当に?」

平尋歌は1人で既に、自分のできる範囲でお金を稼いでいる。それでも成績トップなんだから、先生は何も言えない。

そんなエネルギーどこから? 尋歌は福島ノ浜側からこっちに引っ越してきた、いや、引っ越さなくてはいけなかった、かな。

何かに稼ぎのもとを頼る暮らしはダメだと強烈に人生で刻まれた尋歌は、そこから猛勉強したし、そこから自分の力で稼ぐ必要性に駆られた。別に金の亡者になったわけでもなく、都会に電気を送って地方を潤していた巨大な電気の元が壊れれば、まあそれでも今までの生活でいいやとのほほんと考えられるはずもない。

多分聡美と尋歌にこの学校の必要はない。もう自分で生きていける。特に尋歌は。なぜ学生でいるかと言えばJKブランドの有用性は期間限定で、その立場でいることで守られるから。

「いや、そういうことではなくて」

実は睡眠欲を大事に考えていることが、ヒント。

「女の子はつい無謀なダイエットし過ぎちゃうからね」

ダイエットしか考えることがないのか女子、多いね。人生寂しい。

根元的な欲求の制御すらまともにできない女に、同列の欲求段階の睡眠について考えている琢磨を非難する権利はない。

とは言っても食べ過ぎてしまう、分かる、私もそうだもの。あー太ったって普通に気にするよ。

「感情ではなくデータ」

麻雀でも冷静なうち回しが持ち味の尋歌にとっては、体型体重の維持もデータの蓄積で簡単に対処できる。1番重要な体重データを目を反らし、そもそも一時の体重増減だけでなくこの時期の体型変化に関しては大人の女とは違う動きなのだから、知らなきゃいけない。

何より琢磨は自分の睡眠欲さえ満たせばいい奴ではない。

「でも今は、聡美の彼氏」

事実から目を反らしてはいけない。

「だからさー、せいぜいあと1年だよ」

「分かるけど」

「相当好きじゃない、琢磨のことが」

「悪い?」

「悪くない」

いろんな文化の幅を知っているからなのか金持ちに産まれたからといってこんなに優しくなれるわけもない、人間としての魅力度は、女としての輝きも、悔しいけど聡美が優れている。出来すぎちゃんだ。

「普通の恋する乙女よ」

「競争相手に絶望しかもたらさないハイスペック乙女ね」

ちなみに日中に軽睡眠状態って、ちゃんと寝れてないじゃん、これは間違い。軽睡眠は琢磨流の覚醒方法で、実際は寝ていない、それで絶望しかもたらさない豪運を引き寄るか一流プロ並みの判断力で麻雀最強の力を一時的に呼び寄せる。

「琢磨君もハイスペック男なんだよ」

ただの眠り大事男じゃなかった。モテモテの男だ。それをそうは見せないからなおスゴい。

「本当に美果ちゃんには悪いと思っている」

「聡美がいなかったら私も恋心気づかなかった」

だから私が先はあり得ないんだ。本当にただの幼なじみ止まり。なんとなくで片付けていた。

「琢磨にモテ要素ある?」

「ない」

マニュアルをことごとく逸脱している。そういうことではない。

「男女の仲というより4人でいるのが楽しい」

「だから美果ちゃんのおかげだって」

聡美が日本にいる間だけでも、私達はかけがえのない友情で結ばれている。

「女としては複雑なんだけど」

「だからさ」

ほんと、聡美ってませてるよね。分かったよ、それで聡美がいいならいいよ。

「だから高1の終わりまでには」

好きにして、時間ないことをこれだけエネルギーにされたらそりゃかなわないわ、旅の恥はかきすてって言うけど、聡美にとっては自分のルーツの国も旅先なのかもしれない。

「だらだらと学びなく大人になっていく人になってほしくない。行動してほしい。適度に効率よく質の高い睡眠で疲れと美容を手にいれて欲しい」

何すればいいの?

「美果ちゃんは答えが出ている」

本当にしたいことだけしていていいのかな?

「わざわざ嫌なことをするために人生の時間を浪費したい?」

したくない、けど。

「異世界に行くことすら誰かの決めた人生になったらもう逃げ場ない」

結局は自分で決めないといけない。その代わり、決めたものは他人が興味をひかなくてもいい。まずは自分の楽しいことを優先。

「ここまで行ってまだ誰かの過去の常識に縛られたいなら琢磨君と」

分かった分かった分かった、そういうのなし。

彼氏を人質に使うなよ。

「美果ちゃんですらこれだけ頑固に現状維持を望むくらい、病理は根深いか」

不満がこの国にはたくさんある。世界にも。

それを好転できればスターになる。若者が挑戦しないで誰が挑戦するのだろう?

「悪いけど、今の精神状態の美果ちゃんは修行が必要。会社にするしないの必要関係なく、私の家で独自に学ぼう。うちでの食事がいいもの食べられるとか動機は最初それでいいから」

品質のよいものをちょっと食べる。理想。

実質私に選択肢はなかった。

聡美が正しいというより、私が自信を持ちきれてないことが要因なんだと思う。


「御友人でも容赦なくていいんですね?」

「かまわず」

聡美の4文字がこれほど怖くなるなんて。

「大丈夫よ、リラックスしてください、怒るわけじゃないですから、日本の勘違い社長には怒ることいっぱいありますけど」

働いている現場の愚痴じゃないから怖いんだよ、このメイドさん。

「美果さんは麻雀を生涯の仕事にしていきたいそうですが、そうなった場合の1週間、想像できますか? ちょっと間をおいて」

想像の時間。

「その1週間、その生涯を心の底から楽しめますか?」

麻雀漬けの日々。麻雀を打っている姿を見たら常時一打を考える日々。

「まだ迷いがありますね?」

なんか色々な価値観を知った。なるほど人生の進路に悩むってこういうことか。

バカを爆発させてつき進め。点検は周りがする。

「より、喜ぶ対象が増えることは何か」

麻雀好きに導く路線。

「まだまだ麻雀好きを練られていない印象ですね? いいんです、まだJKも1年生でしょ? にしては上出来です」

若く見られるむず痒さ。

「30、40過ぎても迷子している大人多いですから」

ブレそうなのが怖い。あまりに私は何も知らなかったと。他に興味が移ってしまうのではないか。でも、それを合間にやればいいという考えもある。

「JK時のしたいことは大人になって身の丈を知ったとしても、また思い返してやりたくなる。そのような魅力を秘めています」

挑戦しないのが悪。挑戦して駄目で普通に暮らしても、それはそれで良くて。琢磨が日頃言うように人生の状態じゃなくて自身の心の充実感で判断しろ、と。

「お風呂入りたい」

気づけば何時間もメイドさんと対話して学習していること、珍しくない。

「ごめんなさい、人の家なのに」

あまりに礼儀がなってない。連日の疲れからつい本音が。

「見せてくれた」

「えっ?」

「私に対して心を開いてくれた。おばさんだからあれかなと思ったけど」

「お姉さんです」

本当に、そう思う。

「誉め言葉代分のお風呂、入って」



土湯温泉かな? ってくらいのお風呂の広さ。駅前だよね? こんな土地あったの?

いずれにしても、崖霜家は企画外だ。世界の一流企業に勤める人間がごろごろいる。そのネットワークを生かした世界中の課題を解決するビジネス、というより繋がり。文化や娯楽、あらゆる世界の一流とつながる術を持ち合わせている。国の大小、都会か田舎かは関係ない。だから福島ノ福島に日本での拠点を。

はぁ~いつも以上に身体を丁寧に洗い、肌のハリもペチペチ叩いて確認。無駄に肩をぐるぐる回してリラックスさせてお風呂へ。

1人でこの広さ。泳げるよね泳がないけど。

サウナもあるんだけど。

改めて自分の身体の隅々まで見る。聡美と比べて自信持てないなあ。いい乳液使っているとかじゃなくて根本遺伝子から違う。

あー眠い。家までバスでなんとか帰った。家についた途端装備を外してすぐに寝た。

バタンキューの見本みたいな眠りかた。



この期に及んで、自分の気持ちを表明してない私。麻雀のことじゃなくて、本人にきちんと。

「女心を狂わせる」

「寝たいだけなのですがそれは」

いつだって琢磨は寝たいだけ。

「本心は」

「だから崖霜聡美一筋だって」

「私がありながら、ふらっときた金持ちになびく」

「幼なじみって恋愛状態なんだっけ?」

違うけど、少し考えてよ。

空気を読んで、聡美も尋歌も帰ってもらったんだから。

明日は夏休み初日。またしばらくは学校という縛りから解放され、各々の自由と宿題なる鎖をつけて夏を謳歌しなくてはいけないのだから。

加えて、勝手に自分で勉強を追加。豪勢な家に行けていいなあ? 勉強しに、だよ。

「美果さんも、本気で聡美様の領域へ行きたい、と」

かなり邪心の入った理由なんですが。

「私にはまぶしすぎますけど」

メイドさんには関係ないっていうか、聡美側の味方をするべきで。

「美果さんにはこの夏休みを使って同等の状態になってほしいと、聡美様から」

「なんで?」

「聡美様にとって本気でぶつかれる相手だと、判断された」

あらゆる富と引き換えに、圧倒的同期生不足の人生。幼い頃から孤独な経営者の精神鍛練。

「琢磨さんは巻き添えにあった、というのが正しいでしょうか」

やっぱり。

「そうでもしないと美果さんが本気になってれないと。でも打算ではなく、聡美様も本気で恋しているみたいで」

はぁ、だよね。

「理性でどうなるものでもないですからね。もちろんお相手への迷惑行為は慎んでほしいですが、内なるときめきは止めようがない」

世界のトップ層と本気で渡り歩く聡美は恋にも妥協しない。麻雀バカなだけではどうしようもない。

「私が社長になれば変わるの?」

自分の好きの追及、小さなビジネスだよ? 麻雀好きな少数の人を幸せにするスモール商売案。何より私が快眠グッズに麻雀を抱いて寝たい。

「なろうと思えばなれる知識を教えるために、ここがあります。みんなと同じ夏休みを返上して勉強する美果さん、カッコいい」

金持ちの道楽で福島ノ福島に豪邸を建てたわけではなく、世界の要人を招待するための高級ホテル代わりにするという。

「日本人は勤勉な精神を捨ててしまった」

単に世界と比べて落ちぶれただけではなく、かつての強みも放棄してしまったと。

それでも小さな地域の中では、一応塾の実績で書かれる高校に滑り込んだから知ることができたのかもしれない。まずみんなに出会ってないし、運命的な学びのきっかけに学校教育がというより、この場から関連して、私が麻雀で結びつけたメイドさんとの繋がり。

「現代に即した勉学の方法論を導入できるか競争が、世界中で行われています」

豊かさの未来が決まる。

「もし美果が語学をマスターしたいなら、ずっと私がその語学を話し続けて美果さんの頭に刻み込ませることもできますし」

今の時代、言語転換能力よりは、言語転換したくなる内容が大事だとメイドさんは言う。

「美果さんの麻雀道はそれまでのプロをなぞらなくてもいいのです。美果さんは美果さんですから」

多分ここに来なかったら、普段の勉強もちゃんと向き合えなかった。

いい子になる必要はない。むしろ先生以上に勉強して、世界を切り開けと。好きを極める過程で必ず勉強しなくてはいけなくなる。与えられた世界の与えられたステータスは誰かの都合のいい免罪符を与えて、努力を若者に放棄させる劇薬だ。

書き手を嫉妬させるくらい成功してみせろ。

「まあ、響かないでしょうけど」

「私は、あなたの期待に答えたい」

言われてやる勉強は嫌だけど、私は学びに来ているから楽しい。

「進路が定まるから勉強すべきことが分かる」

考えなくていい仕事、置き換えられそうじゃない? アイツらに。

「美果の麻雀愛は特異な者。他人を麻雀にひきつける素質を生かさない手はない」

「分かるんですか、麻雀」

「聡美様の分析ですよ」

気持ちがぐらぐら揺れ動く。

単純に割りきって嫌いと言えればどれだけ分かりやすいか。でも自分の心に嘘をついている。

そもそも争いの火種である幼なじみに対しても、感情が一個ではない。私達が勝手に争っているだけで、本人は睡眠快楽の道を探求したいだけかもしれない。

寝る効能か睡眠の神秘な力か、琢磨はがつがつ来なくても魅力的に見える。人間が根元的に欲する休息の究極系について、現代人はあまりに粗末に扱っているのかもしれない。軽睡眠で覚醒モードも、琢磨なりの現代を生き抜くための苦肉の策なのかもしれない。

本当はずっと寝ていたい、誰しも思う。トータルの睡眠時間を増やすとかではなく、睡眠時の気持ちよさと回復力に余計なことを考えないで行動に移せる力が加わる軽睡眠状態。

謎の力、だよね。

「4人がビジネスパートナーでいる限り、美果さんに不幸は訪れませんよ」

そもそも私の好きに巻き込んでこの関係がスタートした。私もみんなの得意を吸収したい。麻雀でも結局私だけが凡人だと分かって絶望していたから。

「邪心が混ざるようならば、道留さんも加えて5人の組織にしても面白い」

麻雀のためか琢磨のためか私のためか分からなくなっている。本心と現実と折り合い。

ここで世の中の勉強をするのが1番効率いいからしているだけ。自身の仕事もあるのに私のために時間を使ってくれるメイドさんには感謝しつくしてもしきれない。

「私のこと心配してくれるんですか?」

あの、私にまでへりくだらなくても。

「美果さんも聡美様と同等に接するようにと」

聡美なりの責任の取り方なんだろうか。

独占したいだろうに、女だったら。

耳打ちされた時、驚いた。その考えは私にはあまりにも刺激的過ぎた。もちろん全部を明け渡す気はなく、自分と自分の一族の繁栄を第一に置いた上で私達に世界基準の考え方。

田舎の人間を騙してない?

聡美はきちんとデータで示してくれる。私のデータが信用できないなら、自分でも検索して。

私はしぶしぶ、尋歌はその会話をどこで聞きつけたのか、検索素人と検索玄人がそれぞれ聡美の提案を独自に調べた。尋歌は他国語のサイトも原文で読めるから、情報収集に格段の差が産まれる。

要するに、聡美が責任を持ち、私と尋歌は女性としての幸せを分け与えると。確かに一般的ではない考え方。この国では。

尋歌はそもそもそのつもりらしく、即座に了承。

私は、そう簡単に譲る気はなかった。

どう考えても勝てないの分かっているけど、素直に納得は出来ない。

「だと思ったわよ」

さすがに家では、キャラが変わる聡美。

「私の専属メイド、優秀でしょ?」

聡美の思うがままにさせはしない。

でも、だいぶ譲歩した提案であることも確か。何より私の将来が明るくなるよく考えればもっともな提案。

「みんな狭い常識が常識だと思っているのよ」

第一知る機会がない。

「知るためのツールはあるのに現状を打開しないとか」

「気づきを産まれた時から与えられているあなたじゃないから」

「尋歌は知っていたわよ。地方にいても知ろうと思えば調べられる。新幹線の駅がありながら、県庁までありながら、その地方アピールは虚しいなあ」

福島ノ郡山のほうが色々ある、気がする。横に連なる路線もあるし。もっと言えば東北いちの都会に行けば、もっと。

「もっともっとって欲張りすぎ。現状を見つめて現状でできる道を自分自身で構築しなければ、自身で堪能できる富を他人に奪われる」

ストレス解消と称して富が逃げていく。

自己啓発と称して富が逃げていく。

ある程度知ったら、あとは行動あるのみ。

「産まれた時から差がある現実を横に置いてぶつかれる麻雀、私の孤独を癒してくれた」

10万点代のトップからマイナス4万点のダントツラスまで、激しい点棒移動の主役はだいたい聡美から始まる。トータルで勝っている。それが聡美のスタイル。

「与える仕事をいちから創る人間は、そのくらいの荒波を常時浴びるものよ」

そういう家に産まれたから、聡美もまた環境の影響を受けている。

「美果ちゃんは着実に強くなっていると思うけどね」

私は凡人なりの、地道な努力でしか麻雀を強くすることは出来ない。

何も出来ない。

「どんなに検索しても美果ちゃんの人生においてしたいことの答えは出てこない。方向性が決まればそれに関する情報は調べられても」

私はまだ迷いながらも決めているからいいけど、世の中の多くの人は今おすすめって言われてはじめて動く、だから遅い。

「新たに夢に向かうにしても、理由は独自であったほうがいい」

麻雀好きに導ける人になるために。私は熱狂できることを知っているが、知らない人が自然に知って喜ぶその橋渡しに。

「変わってもいいから、今考えられる最良の回答だと私は思うな」

聡美に言われると、うれしい。

うれしくなっていいのかな?

憎まなきゃいけない? 幼なじみを奪ったから?

「幼なじみは、奪ってないよ」

時間を奪ったわけではない。凡人の知らない世界を知りすぎているから、色々決断が早いだけだ。

「一瞬の判断ミスで何百億損する世界にようこそ」

ようこそされたくないよ。自分達というより抱えている社員のために文句言われながら判断するのがトップの務め。そういう両親を見て聡美は育った。

「福島ノ福島がいいと思って、私達もここに別荘を建てた」

目立つ、バカデカイ温泉みたいなお風呂の家。

「崖霜家の日本の故郷は、ここになった」

聡美も、故郷を欲していた。金で買えるものではないが、金で建てて穴埋め。都会の土地よりは安いだろうからリーズナブルなのかな? この家にとっては。

「麻雀の定説だって多分どんどん変わる」

元より確率通りにいかないゲームだ。覆ることは容易にあるだろう。

「人生における常識も無惨に変わる」

崖霜聡美という存在が私にとっていや日本人にとって非常識の塊です。だけどこれが世界視野のトップを知りその道で生きるよう育てられた娘の視点。

「私の提案もちょっと留学して現地の子と仲良くなれば、検索以上のナマの声が聞ける」

常識が私達となんで違うのかを知ることができる。

「逆に私達も自分達の特異性を誇り、正しく紹介する責務がある」

日本人代表として、説明を求められる度に日本を自覚する。特殊と言われるが、何が特殊なのか?

「いいとこどりで、短所を小さくしていく」

日本の短所もあるし、他国の他国ならではの短所もある。広く世界を知って、短所を小さく長所を大きくしていく。

悪魔の提案。聡美の提案に乗れば、間違いなく一生安泰。お金の心配をしないで人生を過ごせる。聡美側にもメリットがある。普通なら拒むことを聡美の常識破壊力によってねじ伏せられる。尋歌は抵抗することなく、あっさりその提案を飲んだ。尋歌は自分で稼げるから、稼がないと地元が地獄を見たから、尋歌なりの幸せの形。

私は、さすがにひょいと現れた大金持ちに幼少期から一緒にいた彼を明け渡すほどお人好しではない。でも現状は明らかに大金持ちの魔力に負けている。

「他人への優しさも金次第」

そんなことはないとは言えない。福島ノ福島にも、補助金の力でこっちに移り住み収入に見合わない家を買った大人がいる。範囲に入るか入らないかで天国と地獄を分けたのも、金の力。

勝ち取らなければ養分にされると、教えてもらった。

「わざわざ言わないだけだから。実は言葉にしている人は冷酷なのではなくて優しい人」

「私も、あなたから勝ち取らなければ」

「争いたくないなあ、美果ちゃんとは。一緒に繁栄しましょう。美果ちゃんが社長の会社で従業員として働くし、琢磨も働かせるし会社経営の知識も教えるし」

「麻雀がしたいだけ」

「麻雀プロも個人事業主だからね? 会社員感覚では無理だよ? 自分の芸名だろうと名前が商品であり社名なんだよ」

自分自身が法人名、確かに有名な人は有名税があるっていうし、無名な人以上に素行に対してチェックする人が現れる。法人とは別個の動向観察が行われていると言っていい。

「どうしようもなくルーズになりたいなら勝手にすればいいけど」

好きなことをするのにも勉強大事。出来ないなら任せるのも社長判断。世間を知らない個人であっても人として、業務を今までと変わらずするために。

「ほうれんそう、麻雀プロとかタレントになる人こそ大事」

報告・連絡・相談。挨拶もかな? 華やかに見える世界も大変だ。見られる仕事だから、外見も維持しないと。

「なんでもじっくり腰据えて勉強できる時期はしたほうがいいよ。自分の夢のための勉強をね」

専門学校、とか?

「進路の将来性とか、若者は判断できない。そのスキルを他に生かす道も考えつつ、がいいんじゃない?」

少なくとも会社立ち上げの基礎知識は1人でも少人数でも組織化するのに役立つ、か。

そんなに乗り気になれない。麻雀をしたいだけだ。でもこの3人にすらなかなか勝てない私が、麻雀プロ。おまけに負け続けてもメンタル屈強ならいいが、むしろすぐ折れる。ファンだって負け続け無様な姿の私で麻雀を始めたいとは思わない。そうではない麻雀に触れたくなる道も、考えたほうがいいかもしれない。

ネットで売る、麻雀×日用品。女の子がよく使う小物、よく見るとこっそり麻雀要素が。

なんも考えず好きだからそういう店したがる女子で、にっちもさっちもいかなくてぶらついている女子、いそう。従業員として引き抜けそう。

私のすることは、指示通り働けば、儲けのサイクルが回ることを伝授すること。もし社長になるならね。

従業員がもしかしたら人じゃなくなるかもしれない。それも含めて経営を回すために判断するのが、社長の仕事。実務や労働量ではなく、判断して方向性を決めるのが、責任をとるのが、仕事。

「聡美の面倒を、私が見るの?」

やだなあ。

「私は私で会社経営を任されるし、尋歌もあの通り自分で仕事し出すでしょ? 合間には変わらず麻雀をするかもしれない。道留もゴルフに折り合いつけて麻雀道に戻るかもだし」

琢磨は?

「相変わらず軽睡眠での能力覚醒を駆使して睡眠時の気持ちよさと能力覚醒で食い扶持を稼ぐ両立をはかるような。それ以外は、欲から降りていく今みたいな人生」

欲から降りていく、確かにそうなんだけど琢磨は結果として男の理想の人生に近い状態になっている。惚れといてなんだけど、男の嫉妬は買うよなあ。

琢磨からすれば、マズローの欲求の最底辺すら満足にコントロールできない人間が、何最上級意識しているんだと。

食欲をコントロールできずにダイエットに余計な金銭を捧げる。

性欲をコントロールできずに失敗する大人で溢れかえっている。

地味だけど大事な睡眠欲も、マスターすれば健康と美と集中力が得られる。もっとかな?

太ってでも美味しいもの食べたいは個性だからいい。モテたいも健全な思考。睡眠時間の長さだって個人差。

要は自分を見つめ直して欲の濃淡を決めて人生を調理出来ない人が、もれずに負け組になるのだと、琢磨は言う。欲の味付けは人それぞれ。どんな味がいいかすら分からない。時にその料理は人に振る舞う必要もあって、調整できる?

自分の欲の味付けと相手の欲の味付けの間をとれる? それが気遣いになる。

琢磨はシンプルにそこしか考えてないと言っていい。シンプルに重要な要点に絞るのは麻雀の時も変わらない。バランス型だがスタイルははっきりしている。

そんな琢磨が、改めて好きになる。

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