家族が揃いました!
空は暗く、街灯が明るい住宅街の道。
達裄の家から俺の家までは約5分ぽっち。
光の家もそこから10分掛かるか掛からないかという近場。
光の家は昔通った我が母校(小学校)と区切りが別れている地区であり、残念ながら別々である。
自宅からは雨の家の方が遠いが母校は逆に同じである。
その為光とは中学で知り合い、雨とは達裄より古い付き合いだったりする。
「なんか面白い話ないの?」
光と世間話を続けて、ネタがなくなりわずか5秒。
すぐに話題転換。
お喋り好き2人の会話はとりあえずポンポン進んでいく。
因みにとある彼とは話していても聞いてんのか聞いてないのかわからない反応が多いので結構付き合うのは困難であったりする。
「特には。……お前彼氏作らねーの?」
「え、なんすか急に?」
「いや、達裄が彼女出来たからって」
「は……?」
常に動いていないと死んでしまうの代名詞で有名な光が棒立ちになっていて、俺の視界には目が点となった顔を見えていた。
わかりやすいなこいつと思っても口にはしないけれど。
「そこんとこどうなん?」
「え?え?ちょ、ちょっと……!?何その話!?」
「あ、ごめん。出来たのは彼女じゃなくて妹だったわ」
「…………、ははっ……、あんた嵌めた?」
思考停止、安心した目、突き刺さるような冷酷な目。
ころころ表情の変わる様はまるで万華鏡のように変わっていき怖かったが面白かった。なんだこのゲームヒロインの立ち絵みたいに可愛らしい反応は!
そういえばさっきヒロインに光は無理という結論に至ったわけではあるが。
「でもこれは真面目な話、あいつは落とすのむずいぞ」
「まだ私が達裄の事諦めてないみたいな考えやめてくれない?」
「あいつとことん嫌われる奴には嫌われるし、好かれる奴にはかなり好感度高いしな」
光の言葉は無視するが、さっきの妹達や流亜ちゃんとか久保(こいつは男)とかには向こうから見て好感が尋常じゃなく一気に上がってる。
そう考えると影太は好き寄りだけど普通の仲という実は達裄にとって珍しい人物である。
あと嫌われるという意味というかあいつは無視されるがそれに近い。
達裄自身は何考えてるかさっぱりである。
「1番達裄の事好きな達裄教の奴がなんか言ってる……。ホモ的な意味で」
「達裄教は否定しないけど、ホモじゃなく親友的な意味よ?」
「いやどっちも否定しろよ」とぐさっと突かれた突っ込みが返ってくるのであった。
「でも俺はお前と達裄がくっ付いてもらいたいなって思ってるんだ」
「前から疑問だったんだけどさ、どうしてあんたって私も特別な枠組みに入っているのよ?」
「うーん」
これはこれで結構言うのが恥ずかしいし、絶対雨には聞かせられないなとかこいつと関係ギクシャクするのも嫌だし、男として悪者になるとか。
なによりあいつも嫉妬しそうな言葉ではあるけど。
「単純に好きだからか」
「えー、ないわー」
「……そんな退かないで」
告白(?)振られてもうた。
冗談の話ではあるが、でも半分はガチも混ざっている言葉ではあるが。
もう終わっているもので特段ショックも無い。
「好きって言っても当然ライクな」
「はぁ……」
「俺、ライクって意味では雨より光の方が高いんだぜ」
「これは雨には絶対内緒な」と一言付け加える。
ラブの意味では天と地の差があるぐらい雨がぶっちぎりではあるけれど。
光はそんな言葉を聞いて無言になり、数秒考え込み、脈絡なくスマホを取り出した。
慣れた手つきでスマホの操作をしながら俺にしてやったといった感じの嫌な予感バリバリの笑顔を浮かべた。
左手に持ち右手で操作していたスマホを右に持ち替え耳にスマホを近づけていた。
「さっきの仕返し~。雨ちゃんにはダメなんだよね?」
おそらく彼女と妹をすり替えたあの言葉遊びの事であるのは明白の理であり、これ理不尽に罰ゲームに近い事されると身構える。
「あ、もしもし達裄?」
「そっちもダメぇぇぇ!」
俺気付いた。
素直になれない奴と素直になれない奴の恋愛って泥沼だ。
すごく面倒だって第三者の俺がお手上げ状態なるくらい身に染みた。
―――――
「おーい、なんなんだよー」
洗濯機の事を考えながら家に入った瞬間に光から電話があったかと思ったら星丸の悲鳴とすぐに切られた通話状態。
イタ電なのか?
ギブアンドテイクでこのイタ電返してやるべきか。
「タツ兄~、昔みたいに一緒にお風呂行こうよ~」
「は?」
居間からはわけのわからない事を言っている妹の声と反対するその他女性の声がギンギンに発せられていた。
何故遠野家って一緒にお風呂に浸かるのが好きな家庭なのか?
自分の一族の変態度や厭らしさが極端に突き抜けていると心配せざるを得なかった。
その後何故か恋と葉子と瑠璃の計4人でウチのやや広めのお風呂になったのだが一般家庭より広めってだけなので4人ではキツキツであった。
次にお風呂に入る予定であっためぐりにお湯がないとこっぴどく怒られてしまった。
理不尽な事に俺にだけ叱られた。
1番権力あるのはもしかしたら末っ子だったりするかもしれないという恐怖に囚われた。
「一緒にお風呂入ってもお兄ちゃん全然かまってくれないのですよ」
ぷんぷんと可愛らしい擬音でも充てられそうなトーンの恋は勝手に部屋のベッドに潜り込んでいた衝撃。
一昨日までの恋と過ごした約1ヶ月の間に一緒に横になって寝たのは5回もないくらいであまり頻度も高くなかったのだが、何故に今日であるのか。
いつ入ってても何故今日という疑問は付くのであるが。
それに今日の恋は嫉妬や焼きもちを感じられる。
この妹が俺なんかにと思い込んで、自意識過剰になり脳内の中でかなり痛い人物になっていた。
「ごめんな恋。お前の事も大事にしてるからさ」
恋の顎の下に手を伸ばし、すりすりと手でくすぐると恋は気持ちよさそうに目を細めた。
この生き物可愛いなと日々、恋の可愛さが増していっている。
「家族増えましたねお兄ちゃん」
「そうだな。不思議な気分だよな」
「うん。その感想はきっとみんな抱いているだろうね」
「そうかな?」
すると「そうだよ」とにっこりと微笑む恋は言葉を続ける。
「みんな家族の少ない複雑な家庭で育ってきてますからね。本当の幸せな家族になれたらいいですね」
「幸せなぁ……」
「私も見たいし、音にも瑠璃にもめぐりにも葉子ちゃんにも見せたいなぁ。お兄ちゃんには絶対そうなって欲しいです」
両親とは別居で姉と暮らしていた恋。
父親が居なく、母親も帰らなく子供だけで育ったような家庭の三つ子。
両親が他界、祖母と暮らし遠慮してきたであろう葉子。
1人であった俺。
こんなメンバーでの幸せな家族。
それはとても掴み取って歩んでみたい夢である。
傷の舐めあいになるような後ろめいた家族にはなりたくないって決心した。
果てしなく遠い夢物語では終わらせたくない。
――この日、遠野家の兄妹のみで形成された家族が出来上がるのであった。
俺の誕生日プレゼントは何故か妹でした……。——絶対お兄ちゃん主義! 桜祭 @sakuramaturi
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