第2話〜インプリンティング

『……これで最後になりますが、本当によろしいのですか?』


『はい、大丈夫です!』


『……そうですか、本来ならば同じ人として生まれ変わることも可能でしたし、いくつか特典をつけておきましょう』


『特典、ですか?』


『ええ、貴女の来世に幸があらんことを』


…………。


思い出した!


ママンと出会って1時間ほど。


存分にふわふわな羽毛を堪能したかったけど、ママンはすぐにどこかへ飛んでいっちゃった


あのずんぐりむっくりな丸々ボディーで飛べるのかと思ったけど、思いの外パタパタと普通に飛んでたよ。


ってそれはさておき。


思い出したのよ!


わたしは生まれ変わったんだった!


仕事先から帰る途中、歩道橋を上ってる途中にめまいがして、転がり落ちて。


そのまま死んじゃったんだよね。


それで気付いたら綺麗な女の人…あれ、男の人だったかな?が生まれ変わらせてくれて。


あれ、過労だったのかな。


わたしが働いてたとこはブラックな会社で、3日ぶりに家に帰る途中だったんだよね…。


何連勤だったのかは思い出せない。


お父さんには悪いことしちゃったな。


男手一つでわたしを育ててくれた、お父さん。


あの真っ白な部屋でも散々悔やんだし、泣いたけど、何も返せずに先に死んじゃったんだよね…。


……うん。


あの部屋でずいぶんな時間落ち込んじゃったし、わたしにできることは生まれ変わったんだから今度こそ元気に生きることだよね!


ごめんね、お父さん。


わたしは生まれ変わって、今度は元気に寿命まで生きていこうと思います!


すぐ前向きになれるのはわたしの長所だってお父さんも言ってたし!


…………。


さーて。


段々と記憶が戻ってきた。


生まれ変わった以上、何も覚えてないのかと思ってたけど、これも特典ってやつなのかな?


あー、けど結構思い出せないこともあるのかな?


まず前世でわたしがどんな名前だったのかが思い出せないし。


人の顔とかもなんかボヤけてて思い出せないなぁ。


ま、生まれ変わったんだし、そこんとこは気にしてても仕方ない!


今はとにかく元気に生きることが先決!


な、わけだけど。


「ぴょ〜(う〜ん)」


そういえばね、わたし。


生まれ変わったら何になりたいってあの白い部屋で聞かれたとき、こう答えたのよね。


『生まれ変われるなら、次は自由な鳥になりたいです!』


はい、ドーン!


何を考えてたのかね、わたしは。


そうです、今のわたし、鳥です。


足元にはわたしが出てきた卵の殻の破片があります。


ことりちゃんです。


ピヨピヨ。


アホかーい!


寿命なんてあっという間にくるわ!


というか食物連鎖的に生きていけるか結構きわどいよ!


前に調べたことがあるけど、小鳥って平均寿命がほんの数年だったりもするんだよ⁉︎


短ければ1年くらいで死んじゃうって聞くし。


ニワトリとかだって確か10年くらいだったはず!


あー、けどペンギンとかは30年くらいは生きるんだっけ?


大型の鳥とかも何十年も生きるんだよね。


よく鶴つるは千年なんて聞くけど、実際半世紀以上生きる個体もいるんだって。


猛禽類なんかも半世紀くらいは生きるらしいね。


うーん、鳥さんたちって本当にすごいね!


(°▽°)


まぁわたしはよく見かけるスズメとかハクセキレイとかの小鳥が好きだったんだけど。


…って今はちゃうねーん!


今はわたしが小鳥やねーん!


鏡とかないからよく分からないけど、辺りの木の大きさとかから大体の予想はつく。


完全にスズメとかと同じ小鳥サイズだよー!


…………。


はい、落ち着きましたー。


もうどうしようもないね。


小鳥なりに必死に生きましょう!


前向きに前向きに。


(o△o)


鳥さんなんだし三歩歩いて忘れちゃおう。


まぁ実際はそんなに鳥さんたちっておばかじゃないんだけどね。


むしろ賢い子はほんとすごいんだから!


…………。


今のわたしは小鳥さん。


そういえば刷り込みって言葉があるんだよね。


かっこよく言うとインプリンティング!


まぁわたしもあんまり詳しくはないんだけどね。


それでも一度くらいは聞いたことのある言葉だと思う。


生まれたてのヒナが初めて見た相手のことを親だと思い込んでしまうこと。


人や動物のあとをヒナがトコトコトコ!と必死についていこうとする動画なんか見たことがある人も多いんじゃないかな?


わたしはそれがもう可愛くて!何度も再生したものだけど。


まさに今のわたしの状態が刷り込みなのかな。


ママンを一目見てママンだと思ったし。


はぁ。


よーし、立派な成鳥になるぞー!

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