第3話〜ウネウネの恐怖

うーん、それにしてもママンはどこに行ったのかな。


あのふっわふわを全身で堪能したい。


あのサイズ差、わたしが小さいのもあるけど、飛び込んだらきっと素晴らしい楽園(パラダイス)に違いない!


それはさておき。


わたしのまわりにはまだ卵があるんだよね。


その数4つ。


わたしの弟や妹たち、なんだよね。


前世じゃ妹が一人いて、兄弟には憧れはあったけど、まさか鳥類の兄弟ができるなんて予想もしてなかったなぁ。


いや、もしかしたら全員妹かもしれないけど。


ふとした疑問なんだけど、卵が孵った時に親がいなかったら、小鳥はどんな反応をするんだろう?


たしか刷り込みって最初に見た動くものが対象だから、下手したらわたしがお母さんだと思われないかな。


うーん、4人の子持ちか。


結婚どころか誰かとお付き合いもしたことのなかったわたしに子育てなんてできるかな?


今は子育てされる側に戻ってるんですけどねー。


そういえば生まれたてのヒナにラジコンを見せて、それを親だと思い込ますなんてことをやってる実験動画があったっけ。


車のラジコンが動くと必死にカモのヒナが付いてくんだけど、可愛かったなぁ。


……けどあれ、よく考えたらヒドくない?


その後のヒナがどうなったのか気になるなぁ。


…………………………。


パタパタパタ


あ、ママンだ!


青い毛玉みたいに丸々としたママンが小さな翼をパタパタ動かして飛んでくる。


そのままモサァ!っと巣に着地。


突進するわたし。


とうっ!もふん!


わたしの全身を楽園(もふもふ)が包み込んだ。


ぐへへ〜、モッフモフでんなぁ〜。


フワモコやっほい!


全身を使って堪能しちゃうぞぃ!


おっと、成人女性がやっちゃいけない顔をしてた気がする。


今のわたしは鳥だけど、さすがにそれはいけない。


というか何か本能?欲求?に素直になってるかも。


けど今はそんなことよりもふもふよ!


わたしはママンの羽毛と同化する勢いで埋もれて行った。


…………………………。


ふぅ…。


堪能しましたわぁ♡


夢の天然羽毛布団さんはまさに夢心地だった。


心なしかママンのつぶらな瞳ひとみに呆れが見て取れるけど、わたし、ヒナだからわかんなーい!


おっと、本格的に幼児退行してた。


コツン


「ぴょ〜?(うん?)」


ママンに頭をこつんてされた。


え、怒ってる?


おそるおそる顔を上げて、ママンの顔を見てみるけど、怒ってるわけではなさそう。


なんとなくだけど。


目があったママンの顔が近づいてきた。


「ぴょ?(え?)」


そしてそのままわたしのくちばしを啄むようにくわえ込んでくる。


え、ママン!


なんて熱烈なキス!


いけないわ、わたしたちは親子、しかもメス同士なのよ!


くちばしの横のあたり、頰にあたる部分を挟まれて、口が勝手に開いた。


ってこれあれだ!


鳥のヒナにエサをあげる時のやつだ。


くちばしの横のところをつまむと反射的にくちばしが開くらしいんだよね。


よくヒナを保護した人とかが練り餌えをあげるのにこうするって聞いたことがある。


けどそれってある程度日数が経ってないとうまく口を開けられないんじゃなかった?


孵りたてのヒナの口を開かせるなんて、ママン、ベテラン!


って……!


「びよぉ⁉︎(にゃあぁあ⁉︎)」


喉の奥に侵入者が!


生きてる!


これ生きてるよ!


ウネウネしてる!


そういえば小鳥の餌ってちっちゃなワームとか虫じゃん!


ワームさんが!


いきのいいワームさんが喉の奥にいぃぃぃ!


こんな時、人と同じ味覚や触覚があるのが恨めしい!


いや、やめて!


いやああぁああぁあ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る