またいつか

悠紀

この気持ちの続きは

またいつか


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スマホはもってない。

高校は専門のところだから私は追いかけれない、大学は行かないだろうし私が目指してるのは県外のところ。部活も、バイトするって言ってたからきっと入らない。


「はぁ…」


そこまで考えて思わずため息をつく。ここまで繋がりが断たれてしまうと もうこの先会える気がしない。それなら、やっぱり勇気をだして___


「普通センパイ様の卒業式でそんな顔するか?」


カラカラと笑いながら現れた目の前の人、伊吹いぶきくんを全力で睨みつける。お前のせいだよ、なんて死んでも言えないけど。


「...だってもういぶくん達 部活来ないでしょ」


学年が違うのが悔しい。

三年生の部活が無くなった今、先輩たちと会えるのなんて休み時間くらいだったのに。その機会すら今日でなくなってしまう。

折角仲良くなった大好きな先輩たちと離れるのが、普通に寂しい。私の目指してる高校に行く人、一人もいないし。


「それは知らね、ひなせ次第だな。つか俺 のん甘露かんろ探しに来たんだけど、甘露は?」

「生徒会の人に呼ばれて行っちゃった」

「ふーん、じゃあいいや。暖 行くぞ」

「えっちょっ...!?」


強引に手を引かれて歩き出す。抵抗しているのに、シンプルな力の差で勝てなくてズルズルと引きずられてしまう。

甘露を待っていたのに、仕方ないか。

諦めて隣を歩いているのに何故か手は離してもらえない。ひんやりとした手が気持ちいいくらい室内は暖房が効いていた。


「...いぶくん?」

「寒いから大人しくカイロになっとけー」


寒いのは本当だと思うけど、さっき伊吹くん普通のカイロ持ってた気がする。まあ伊吹くんの考えがわからないのはいつものことだしもう慣れた。とりあえず、私はついて行くしかないみたいだ。


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「はぁ、だる。なんで主役が換気とかしなきゃなんねえんだよ」


先生にプリントをもらって、その足で部室へ向かう。仕方ないじゃない、このあとサプライズでお別れ会するんだもん。


「あはは、甘露待たないからだよ。さっさと窓だけ開けて戻ろうよ...ってやば」


そう言って窓を開けた途端、強い風と共に散ってしまった桜の花びらが大量に舞い込んできた。

乱れた長い髪を直していると、伊吹くんが掃除用具箱からホウキを出していた。


「えー片付けてくのこれ」

「このままにして怒られんのお前だと思うけど?」

「むぅ...確かにそうだけど」


そんなこと言われてしまうとなぁ、なんて思いながら差し出されたホウキを手に取る。怒られるのは嫌だ、あの先生怖いし。


真面目に掃除している伊吹くんの目をじっと見つめる。視線は合わないけど、黒い瞳の中では桜の色がいっそう綺麗に見えた。


「...なんだよ、見てないで手を動かせ」


ぽすんという音と一緒に頭に落ちてきた優しい拳。見ているの、バレてた。


「ねぇねぇ...いぶくん、お花ちょうだい」


卒業生が胸につける花、好きな人に貰うんだって甘露が張り切っていたのがかわいかったんだ。甘露、成功してたらいいけど。

...私も伊吹くんの欲しいな。そう、ずっと思っていた。ずっと迷っていた。


「...お前ひなせに渡されてなかったか?」

「もらった。でも私はいぶくんのが欲しい」


取り合いにならないようにって貰った花も綺麗だけど、私だって好きな人からもらいたい。めんど、なんて言いながら外してくれてるんだから ほら、そういうところ。


ん、これでいいだろ。なんて言いながら差し出してくれた黄色い花。桜を象ったこれは毎年色が違うから、ボタンなんかより特別感がある。

嬉しい、断られたらどうしようって本当は怖かったんだ。


知らないでしょ、甘露だけじゃなくて皆好きな人からもらおうとしてるんだよ。名札貰うんだってはしゃいでた子もいたけど、お花の方がなんとなく難易度低い気がして。


好き。

ずっと前から好きだった。不器用だけどとっても優しくて、困ってる人に絶対手を差し伸べちゃうところとか大好きだった。

悩んでいたらすぐ見抜いてくれるところ、たまに見せる太陽みたいな眩しい笑顔も。

全部ぜんぶ、大好きだった。


それでも、どれだけ考えても、きっとこの恋に未来はないから


「えへへ...卒業おめでとうございます、伊吹せんぱい!」


今は、精一杯笑って送り出そう。


さようなら、私の初恋

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またいつか 悠紀 @yuuki-123356

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