第4話 そして現在……(第2章へ……)

 三年も経てば、二人の付き合い方に擦れ違いや平行線を描く部分が見え隠れしてくるものだ。

 海鳴は八束のことを、特別好きだという感情を抱けずにいる。そして、海鳴は、八束が自分に勝手に恋をしていると思い込んでいる。出会った日から間も無くして、お互い性的な関係を持つようになり、初めの頃は八束が海鳴に与えてきた行為も、次第に海鳴も覚えるようになり、八束に与えられるようになっていった。八束が満足のいくように……。だが海鳴は次第に、卑しい自分を愚かな人間だと思うようになっていった。 

 現在、海鳴は八束の不機嫌さに耐えている。しかし、己の感情を抑えていることも無い。

 いつだって八束に対しては、本音でぶつかっていた。だがそれに対し八束は、海鳴の感情が複雑すぎて理解できずにいる。相手である八束だって海鳴と満足の性交渉ができないでいる。フラストレーションが溜まり、もしお互いの気持ちを確かめあう方法が性行為しかないのだとしたら、それは間違っていると、お互い気づき始めていた。

 海鳴は、いつか八束に面と向かって、伝えたいことがある――。


 それは――亜結樹の事が好きだということ。

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【片割れの天使に無礙な口づけを】《柊八束―過去編―》 メラミ @nyk-norose-nolife

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