戦隊ヒーロー達の憂鬱

シロクマKun

第1話 誰がレッドをボコったか?



 レッドがうつ伏せに倒れていた。 



 後頭部にでっかいタンコブがあり、その脇にノートパソコンがやや歪んだ状態で落ちている。落としても壊れにくい、金属ボディの角が大きくひしゃげているのが、衝撃の大きさを物語っていた。その角に少々、血も付いている。

 レッドのタンコブにも血が滲んでいるので、これが付いたのだろう。


 さて、レッドという名前でこの被害者の正体がうすうすわかった事だろう。

 そう、彼は戦隊ヒーローのリーダーなのである。

 その名を「家電戦隊デンシジャー」のデンシレッドと言うのだが、取り敢えずレッド、とだけ覚えてくれたら問題ない。

 

 なので、サブタイトルを付けるとしたら、

「レッド殺害未遂事件」といったところだろうか。


 まず、場所を説明しておこう。ここはデンシジャーの秘密基地内の休憩スペースの1つだ。時間は現在、朝の8時くらい。

 部屋にいるのはレッドと私。因みに部屋に鍵は付いていない。


 この事件はまだ、皆んなには伏せてる。知ってるのは今ここにいる私だけだ。そして私は決心する。こっそり調査をしてやろう、と。



 私はまず、ブルーの部屋を訪ねた。 


 レンジャー達は普段はそれぞれ別の生活を送っているが、今日はみんな揃って基地内の、それぞれの部屋にいる。昨日、基地内で忘年会があった為だ。


「よう、お疲れ。ん? 昨日の忘年会の後? 部屋でゲームしてたけど女と会ってたけどな?」


「ホントかい? 因みに何のゲーム?」


ゾンビをガンガン倒すだけのゲームおねーちゃん押し倒してたなだぜ? タイトル忘れたけどカスミちゃんって子


「へえ、ブルーってそういうのが好きだったんだ?」


「いや、ピンクが貸してくれたしな好きなのはエロい女だが 今はハマってる敵の女幹部もハメたいわ


「ピンクと仲いいんだ?」


「いや、普通じゃね? 特別仲いい訳じゃないぜ飲み会にジャージで来る女は無理だわ?」


「そう? あっ昨日の昼間、外出したよね? 何か用事あったの?」


「用事はないよ。単なるドライブナンパに決まってるだろが


「ふーん。ところでブルー。何か変な事してないかい?」


変な事なんか、なんもしてないぜ?カスミちゃんのパンツは被ったけどな


「なら、困った事とかないかな?」


う〜ん、特にないかなカスミちゃんどこいったんだろ?


「OK、邪魔したね」

 ひとまず、次に行くか。



△△



 さて、イエローに聞きに行く前に一つ報告しておこう。

 実は私には、人の本音を聞く事ができるという特技がある。これは誰も知らない、と言うか、誰にも言えない秘密の特技だ。 

 誰だって言いたくない本音があるだろ?

 私自身、できれば捨てたい特技だ。



▽▽▽


 イエローに尋ねてみる


「今? 部屋でTV見てたなホントはカレー食ってた


「ねえ、なんか香辛料の匂いしない?」


ふーん、そうか? 芳香剤かなダイエットしろって言われてるけど?」


「ところで忘年会中はおかしな事なかった?」


「うーん、そう言えばピンクがやたらグリーンに絡んでたなぁ俺のグリーンにナニしやがる


「へぇ、そーなんだ。後、なんかなかったかな?」


「レッドがトレーニングに行った後、すぐ指令が追い掛けてったくらいかなあのオッサンはレッドに夢中だから?」


「そう。後何か隠してる事とかない?」


「か、隠してる事なんかねーよ。グリーンのパンツ、くんかした事か?


「ごめん、邪魔したね」


 いろいろ突っ込みたいが、まず次に行こう。



 ▽▽▽



 今度はピンクだ。


「あぃててて。二日酔いでさぁ、それでナニ起こすなよボケ?」


「昨日の忘年会の二次会、どうだった?」


「へ? いつも通りだったよ?記憶飛んでるけど


「グリーンに絡んだって聞いたけど?」

'

「ああ、酔っ払って、ちょっと絡んだかもあいつはペットだしww」


「何か変わった事はなかったかな?」


「そー言えば、ブルーがしょっちゅう席外してたなぁあたしのパンツがなくなったんだけどしかも料理持ったま今もノーパンだよ笑


「イエローの様子とかどう?」


「イエロー? 特に変わったとこなかったけどガチのモーホーに興味ないし?」


「ありがとう、邪魔したね」


 次に行くか。



 ▼▼▼



 今度はグリーンの部屋だ。



「やあ、お疲れ。昨日の二次会? 大変だったよ、ピンクに絡まれてさーあの酒乱なんとかしてくれ


「グリーンは面倒見がいいから」


「いや、そんな事ないよ僕が本当に気になる人は…


「他に何か変わった事なかった?」


「えっ、別になかったと思うなぁなんでポケットにパンツが入ってたんだろ?


「じゃあ、困った事とかはないかな?」


グリーンってポジションのキャラ設定が慌てて座布団の下に隠したけど、イマイチ掴めないトコかな後で見たら無くなってるし?(笑)」


「グリーンってそんなもんじゃない? ありがとう。邪魔したね」



 ▽▽▽


 最後に指令の部屋に来た。


「おはよう。昨日は楽しかったな」 


「おはようございます。そうですね。私は二次会は行かなかったですが」


「ああ、君は途中で抜けたな。忘年会の時ぐらい仕事を忘れたらいいのに、君は真面目だなそこがいいんだけど


「いつ何時、ここに敵が襲ってくるかわかりませんからね」


「ん?この基地のセキュリティは万全だよ?」


「敵の怪人とか、化けるのが上手いじゃないですか?」


「外見似せたくらいじゃ、セキュリティの突破は無理だよ?」


「なら安心ですね」


「まあ、そういう事だ内通者でもいない限りな


「話変わりますが、指令は何か困った事とかありませんか?」


「困った事か。今は敵への対応が全てだなこの気持ちをどう伝えればいいのか…?


「ありがとうございました。ではこれで失礼します」




 △△△


 さて、これで全員の聞き取りは終わった。博士や、メカ整備のおっちゃんらは正月の帰省でいないし。後は意思を持たない作業ロボット達だけだから関係ないし。


「どうするかな?」


 と、思っていると、グリーンが声を掛けてきた。

「あっあの、ちょっといいかな緊張するっ?」


「うん? どうしたの?」


「年が明けたら……一緒に初詣に行かないうわ〜言っちゃったよ?」


「え? 私と……、君で?二人でって事?」


うん、そう二人きりで


「ええっ! それはどういう……」


「僕は……貴方のことがす、す、す、す、す……」


 その時、

「ちょっと待ったぁーっ!」

 という叫び声と共に、指令が飛び込んできた。


「グリーン! 抜け駆けは許さんと言ったろうまったく、油断も隙もないわ⁉」


「指令こそ! 昨日、ベタベタ迫ってたじゃないですか逃げられても追い掛けて行ったし⁉」


「あ、あれは今後の作戦についてだな辛抱たまらんかったから……」


「二人とも、取り敢えず落ち着いて……」

 と、私が二人を諌めた時、


「ちょっと待ったーっ!」

 今度はイエローが飛び込んできた。


「グリーン! お前、俺という者がありながら浮気は許さんっ……」


「ちょっ、何言ってんのイエローバカか?コイツ⁉ いつ僕がアンタのモノになったよいやいや、絶対ムリ!⁉」


その声を聞きつけたのか、ブルーとピンクまでやって来た。


お前らマジ、うるさいんだけどこっちはそれどころじゃないのに??」


「なーにー? 修羅場ウケる〜(笑)?」


こいつら、野次馬に来たな? まったく、迷惑な奴らだ。


 が、グリーンと指令はまだ互いに押し合いなから、私の前まできた。


「どうか、僕と……」

「どうか、私と……」二人の声がハモる。



「「一緒に初詣行って下さいっ! !」」



 その時、また一人の男が飛び込んで来て叫んだ。





「ソイツはニセモノだーっ!俺がレッドだーっ」




 ▽▽▽


 みんなの視線が最後に来た男に集中する。


「「「えぇっ、レッドが二人!?」」」


どういうことだ敵の怪人か??」


どっちも怪しいぞどっちもグリーンに近づくな⁉」


まさか敵の侵入やめてよ〜仕事納めしたのに?」


どっちがホンモノこの際どっちでもいい?」


「敵の侵入とか、そんなバカなセキュリティは⁉!」


俺がホンモノだーっコイツが俺を殺そうと!」



「うるさいわお前らっ! いっぺんに喋んな! 1回落ち着け!」

 と私が一喝すると、ようやく静かになった。


「順番に説明してやるから、よく聞け」

 と言いつつ、ぐるりと見渡す。皆、腑に落ちないまでも、取り敢えずは

聞く態勢に入ったようだ。


「まず、ホンモノはそっちのレッドだ」

 と、私が言うと、

「えーっ、いきなりバラすんかい?」「ちょっとは悪あがきしろよ⁉」「本物しか知らない事聞くってお約束はよ?」「レッド2倍でお得かも」「なら、お前だれやねん⁉」またけたたましい。


「だから、いっぺんに喋んなっつーの! つか、一人喜んでたの誰だ⁉」

 このままでは埒が明かないので、私は正体をバラす事にした。

 ブレスレットに仕込んだ装置を作動する。途端に光の粒子が私の体を包み込み、レッドの外見から元のボンデージ姿へと戻った。


「お、お前は! 敵の女幹部ツンデレーネ⁉」

 一同、驚きの声がハモった。


「馬鹿な⁉ 鉄壁のセキュリティをどうやって?」

 と、指令が叫ぶ。


「まさか、内通者スパイが?」と呟くブルーに、


「アンタだよ? まだわからない?」と言ってやる。


「は?」困惑するブルー。


私はコンパクトを取り出し、

「あ、ゴメン。ちょっとコレ持ってて?」と、グリーンに渡す。


「え、はい」素直に持つグリーン。

 私はその鏡を見ながらカラコンを外し、金髪のウィッグも外した。

 そして、黒髪ショートの地味目の女の子になり、ブルーに向き直る。


「か、カスミちゃん⁉」目を剥くブルー。


「お、お前、最初から騙すつもりで俺に近づいたんだな⁉ 何が目的だ? レッドの暗殺か?」


「はあ? アンタがアタシを強引に連れてきたんでしょーが⁉ コッチはね、久しぶりのオフで、楽しく買い物してたんだよ。それをアンタがしつこくナンパしてきて。オフの時くらい、仕事の事なんか忘れてたいのに」


「うっ、まさかナンパの相手が敵幹部だったとは…」嘆くブルーに

「お前かーっ⁉」「うわっサイテー」「引くわーっ」「クズ」

 と、容赦ない言葉が突き刺さる。


「で、連れて来られたらすぐ、『今から忘年会だからちょっと待ってて』とか言って部屋に閉じ込められたし」


「あっ、ブルーが料理持って時々消えてたのって、部屋に料理運んでたんだ⁉」とグリーンが言う。


「そういう事。で、忘年会が終わって酔っ払たコイツが部屋に戻ってきて。そのままイカれた格好で私を押し倒そうとしてきたから、催眠スプレーで寝てもらった。後は部屋を抜け出して、せっかくだからと基地の探査してた時にレッドと出くわして……」


「それで咄嗟に近くにあったノートパソコンで俺の頭を殴ったって事か」

とレッドが呟く。


「突然でびっくりしちゃったから。申し訳無い」謝る私。


「いや、何で謝るの? お前、敵だろ? つか、そのまま暗殺しとけば楽なのに?」イエローが驚いた様に聞いてくる。


「はあ? 子供番組なのに、暗殺とかあり得ないっしょ? それに、可愛い系の女幹部は、最終的に寝返って味方になるってお約束知らないの?」


「あ……確かに」と納得された。


「で、のびてるレッドを見た時、他もどんな奴らか調べとこうかと思って、

レッドに化けて話を聞いて回った、という訳」と、私が言う。


「あ、もう1つの事件だけど。ピンクのパンツはレッドが持ってるよ」

 ついでに教えてやった。


「な、なんで俺がピンクのパンツなんか……って、ポケットに入ってたーっ⁉」と驚くレッド。


「あーっ!ソレ、あたしのパンツ‼ 犯人アンタだったの⁉」


「レッド、そんな趣味が⁉」「サイテー‼」「ドン引きだわー‼」「欲しいなら僕のパンツを‼」「いや、私のパンツを‼」


 と、またけたたましいが、真相はたぶんこうだ。


 まず、ピンクは酔うと体を締め付ける物を嫌がる。よって、自分でパンツを脱いだ。脱いだパンツの置場に困ったのか、酔った意識で取り敢えずグリーンのズボンのポケットに入れた。やがてグリーンもパンツの存在に気づき、

どうしたものかと考えている時に、他のレンジャーに見つかりそうになり、慌てて座布団の下に隠した。で、それを見てたのがイエロー。彼は座布団の下からこっそりパンツを回収し、てっきりグリーンのパンツだと勘違いして匂いを嗅ぐ。が、その姿を見られそうになり、思わずハンガーに掛けてた上着のポケットに隠す。が、焦って自分の上着のポケットに入れたつもりが、ブルーの上着のポケットに入れてしまった。


 で、ブルーはとうぜん、忘年会が終わると、自分のジャケット持って部屋に帰る。その、途中でポケットの中のパンツに気づく。で、何をどう考えたのかは知らないが、何故かそのパンツは私の、カスミのパンツだと思ったらしい。ヤツはそれを頭に被った。変態仮面のパンツのかぶり方ってわかるかな?帽子みたいに被るんじゃなくて、マスクみたいに被る方法。そのイカれた格好で私におそい掛かってきたから、催眠ガスが効くように私がパンツを剥ぎ取った。で、私はそのパンツを持ったまま部屋を出、レッドに遭遇して思わず殴り倒す。そこで初めて私はパンツを持ったままだった事に気付き、思わずレッドのジャケットの中に入れちゃった……という訳。


 あ、後1つ付け加えるなら、レッドが二次会に行かなかったのは、

トレーニングの為って事もあるけど、ホントはしつこい指令から逃げようとした、ってのがたぶん、正しい理由だろう。


 まあ、ともかく……



「いや、俺はパンツ泥棒じゃなーいっ‼」

「女ナンパして悪いかーっ」

「グリーン、すきだーっ」

「全く、どいつもこいつもバカばっか‼」

「レッド、僕と初詣を‼」

「いいや、 私と初詣を‼」





 調査の結果は明白だ。




 コイツらはスーパー戦隊というより

 スーパー変態である、と。







 ……こりゃ、最後に勝つのは私だね、うん。










   








「戦隊ヒーロー達の憂鬱」


  完





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