INTERACTIVE CHAIN WORLD〜インタラクティブ チェイン ワールド〜

レイフロ


『INTERACTIVE CHAIN WORLD~インタラクティブ チェイン ワールド~』


【ジャンル:和風バトルファンタジー】

【所要時間:40分程度】



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『作品タイトル・台本URL・作者名』の明記をお願い致します。


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【あらすじ】

平安時代。陰陽師の家系である大昶家おおあきらけが、悪鬼から人々を守っていた。

だが、新しく当主となったのは大昶家の次男、良充。

兄の良哉は恨みから闇に堕ち、力では敵わない良充に復讐するため、悪鬼に魂を売り渡し、

時空を超えて平和な現代に生きる大昶家の遠い子孫を殺そうとする。

それを阻止すべく、未来に送りこまれたのが、良充の弟子である和皐だった。



【人物紹介】

和皐(カズサ) ♀

陰陽師の家系である大昶家に代々使える者。

良充の弟子で、まだ若く修行の身。


大昶 良充(オオアキラ ヨシミツ)  ♂

陰陽師の家系・大昶家の次男でありながら現当主となった。

兄は良哉。穏やかでとても優しく、人望に厚い。


大昶 良哉(オオアキラ ヨシナリ)  ♂

良充の兄。大昶家の当主となれず、

恨みから悪鬼によって闇に堕ちてしまう。

※「男」も兼役でお願いします。


大地(ダイチ) ♂

大昶家の遠い末裔。陰陽師の家系だということもよく分かっておらず

平和な現代を生きている。真っ直ぐで負けん気が強い。


莉子(リコ) ♀ 

大地とは同級生で、隣の家に住む幼馴染。

活発でボーイッシュだが、顔は割と可愛い。

※「姐」も兼役でお願いします。



【演じる上での注意点】

・莉子役以外の上記主要キャラには、詠唱があります(良充は少しだけ)。

バトルシーンだけでも軽く目を通してから演じられることをお勧めします。


・場面が、現在と過去のシーンがだいぶ行き来しますので、

 『場転』のところは、きちんと間を取ってください。





↓生声劇等でご使用の際の張り付け用

――――――――

INTERACTIVE CHAIN WORLD

作:レイフロ

https://reifuro12daihon.amebaownd.com/posts/7982355

和皐:

良充:

良哉&男:

大地:

莉子&姐:

――――――――






以下、台本です。

―――――――――――――――――――



大地N:

あぁ、俺は死ぬんだ…。

蛇行しながら自分に突っ込んでくる車がスローモーションで見えた。


和皐:

こらぁ!ぼーっとしてないで早く避けてー!


大地:

はは、ついに幻覚まで見える!女の子が俺の目の前に浮いてる…あはは


和皐:

ほうけてる場合か!急げっ!


大地:

いだっ!…え?なんで女の子がっ!?

てゆーか車がスローモーションみたいに遅いっ!


和皐:

お主のために力を使って時間ときの流れを遅くしておるのじゃ!

はよう向こうに渡れーっ!


大地:

はっ、はいぃ!


大地N:

俺が急いで横断歩道を渡ると、時の流れが戻った車は甲高いブレーキ音を立てながら止まった。


和皐:

良充よしみつ様の言った通りじゃ。

我らの時代から数百年後は、技術が発達し便利にはなっているが、

それ故に悪鬼あっきとは異なる脅威もまた、増えている…。


大地:

君は、一体…


和皐:

あぁ、すまない!私は和皐かずさ

お主の名は?


大地:

俺は大地。

大昶おおあきら大地。


和皐:

大昶おおあきら、大地…。

そうか、やはりお主が良充よしみつ様の!


大地:

ヨシミツって誰?!


和皐:

とにかくお主の家に連れて行ってはくれないか?

来て早々、力を使ったせいで眠い…ふあぁ。


大地N:

こうして俺は、不思議な少女・和皐かずさと出会った。





《場転》





良充:

和皐かずさ。ほれ、和皐かずさ


和皐:

ふあっ!?寝てません!寝てませんよっ?!


良充:

ふふ、思いっきり寝ておったぞ。口元にヨダレの跡がある。


和皐:(慌てて拭う)

ちっ、違います!和皐かずさは…


良充:

寝ておったな?


和皐:

うっ…。はい…。


良充:

顔を洗って来い。お前に使命を与えよう。


和皐:

使命?そんな…和皐かずさはまだ力も制御できない未熟者。

ねえさん方とは似ても似つかん出来損ないじゃ。


良充:

出来損ない、と誰が決めた?


和皐:

皆がそう言って…

あっ!良充よしみつ様っ!歩いちゃダメーっっ!


良充:

おっと…!小さな花だ…

危なく踏むところであったな。


和皐:

はい、良かっ、た……あああああああ!!!


良充:

どうした?そんな頓狂とんきょうな声を上げて。


和皐:

この花を避けたせいで、良充よしみつ様のお召し物が…っ


姐:

…っ!なんということっ!


和皐:

ねえさん…。


姐:

お前には屋敷の裏の警備を任せたというのに、その任もまともにこなさないどころか

良充よしみつ様に水溜りを踏ませるなど!一体どういうつもりじゃ!


和皐:

ご、ごめんなさい…わざとでは…


姐:

良充よしみつ様!申し訳ございません!

この出来損ないにはあとでキツク言い含めますので!


良充:(囁くように)

―――喧々けんけんたる者、粛然しゅくぜんと控えよ…

セイっ!


姐:

ひっ…!動けな…っ


良充:

足元を見よ。

さっき私が踏まずに済んだ花を、お前が踏もうとしている。


姐:

あ…っ!


良充:

召し物など、着替えれば良い。


和皐:

良充よしみつ様っ!ねえさんの呪縛を解いてあげて下さいっ!


良充:

お前を“出来損ない”と呼んでいるのはこやつか?

頭には来ぬのか?


和皐:

そんな…!

ねえさんは和皐をなんとか立派に育てようとしているだけです!


良充:

ふ…。(優しげに笑う)

―――カイっ!


姐:

あ…はぁはぁ…動く…


良充:

皆に伝えよ。大広間に至急集まるようにと。


姐:(駆け出す)

は…はいっ…!


良充:

…さぁ、行くぞ。

お前は責任を持って私の着替えの手伝いをせよ。


和皐:

あわわ…は、はいぃ!!





《場転》





莉子:

ねぇ…ほんっとうにこの女の子が助けてくれたの?


大地:

そうだってば!ここに連れてきた途端にソファで寝ちゃったけど…。


莉子:

なんか服もコスプレみたいだね…丈の短い着物みたいな。


大地:

てゆーかそんなことより!

まじでこの子、ちゅうに浮いてたんだって!


莉子:

宙に浮いてたとか…まじで言ってる?


大地:

車がすごい勢いでガーッって来てたのに、いつの間にかのろのろーってなって

俺がフワ~ってなってたら、コラーって!!


莉子:

大地の鼻くそみたいな語彙力じゃわかんないから黙ってて!


大地:

鼻くそ…って、お前も一応女だろ?

なんとかした方がいいのはお前の言葉使い…


莉子:

何よ、人のこと呼びつけておいて!

隣の家だからって気軽に呼ばないでよねー?


大地:

それはどうもすみませんでしたぁ。

お忙しい中お越しくださり、ありがとうございますぅぅぅ


莉子:

ムッカツク…


和皐:

んん…。よ…みつ…さ…


大地:

ん?なんか言ってるぞ?《耳をそばだてる》


和皐:(泣きながら)

良充よしみつ様ぁぁぁ!!どうして和皐かずさなんでずがぁぁぁぁ


大地&和皐:(飛び起きた和皐と頭をぶつける)

いでっ!!


莉子:

ちょっと大丈夫?えっと…和皐かずさ、ちゃん?


和皐:

イタタ…ふぇ?!女子おなご!?

だ、誰だっ!


莉子:

あぁ、えっと、私は莉子りこって言って…


和皐:

莉子りことやら!お主は大地様とはどういう関係だっ!


莉子:

大地様?!いや、どういう関係って…

幼なじみっていうかただの腐れ縁っていうかただのお隣さんっていうか…!


大地:

どんどん格下げになってないか?


莉子:

だいたいそんなものでしょ?


和皐:

大地様、尻に敷かれておるのだな…。


大地:

敷かれてない!

あと、「様」はやめてくれ。大地でいいよ。


和皐:

大、地…。はっっ!こんなのんびりしている場合ではなかった!

大地!お主には危険が迫っているのだ!


大地:

危険?それならさっき暴走した車から助けてくれたじゃないか。


和皐:

あれは偶然ではない!お前は狙われているんだっ!


莉子:

狙われてるって誰から?


和皐:

それは…





(場転)





良哉:

ははは、見つけた…見つけたぞ!

大昶家おおあきらけの末裔よ!!


大地:

は?!何だ?!黒い影が集まって…人、なのか?!


莉子:

ど…どうなってるの?!


和皐:

お止め下さいっ!良哉よしなり様っ!


良哉:

む…?貴様、良充よしみつが可愛がっていた弟子の和皐かずさではないか…。

我が現れる時代を予想して先回りしておったか…良充め!!


和皐:

良哉よしなり様!どうかお静まり下さいっ!


良哉:

五月蝿いッッ!!


(突風が吹き荒れて、和皐、壁に叩きつけられる)


和皐:

ぐはっ…!


莉子:

和皐かずさちゃんっ!大丈夫?!


和皐:

莉子りこ…逃げろ…!


莉子:

和皐かずさちゃんも一緒に!

…っ何?!なんか、部屋が黒い霧で…

ゲホゲホっ、喉が、痛い…


大地:

莉子りこっ!これを口に当てとけ!


莉子:

う、うん…、大地は何ともないの?


大地:

俺?別になんともないけど?


良哉:

この黒い霧にてられぬとは…

やはり貴様が大昶おおあきらの末裔だな。

それにしても、我が弟、良充よしみつの血筋がこんなに軟弱な男とは…

ふはは、笑わせてくれる!


大地:

俺のことを言ってるのか?


良哉:

悲しいかな。

良充よしみつなんぞに力を継承させるから末代はこのザマよ!はははは!


和皐:

良哉よしなり様、考えをお改め下さい!

良充よしみつ様の遠き子孫を手にかけたところで、どうして貴方様の気が晴れましょう?!


良哉:

そうかもしれぬ。


和皐:

でしたらっ!


良哉:

だがな、我を止めるために良充よしみつが送り込んできたのが

貴様のような出来損ないの弟子とはどういうことだ?!

どこまでも兄を愚弄ぐろうしおって!!


和皐:

ぐ…っあ゛…っ!


大地:

やめろっ!その子の首から手を離せっ!

死んじまうだろっ?!!


良哉:

せっかく強大な力を使って数百年後の未来に来たのだ。

軟弱な良充よしみつの子孫を殺すだけではつまらぬ。

和皐かずさもついでになぶり殺そう。


大地:

おいっ!離せって言ってんのが聞こえねーのかっ!


和皐:

だい、ち…いんを、結べ…


大地:

イン?インってなんだよ!


莉子:

ゲホゲホ…大地、印って、

昔あんたのおじいちゃんに教えてもらって、よくやってたやつじゃないの?!


大地:

は?あんなのただの手遊びだろ?!


莉子:

うっ…ゲホゲホっ


大地:

莉子!しっかりしろ!


良哉:

われはこの時代には異質な存在。

関わり無き者にはこの黒い霧は毒と同じよ。


大地:

なんだって?!


莉子:

く、るし…っ


良哉:

恨むなら良充よしみつじゃ!全てあやつが悪い!

兄を差し置いて全てを奪っていったあやつが!!はははは!


大地:

くそ…!じいちゃんに教わった手遊び…

確か、んーっと…!こうやって、こうやって…こうだッ!!


和皐:(↑「こうだッ!!」と同じくらいのタイミングで)

―――ばくッ!!



(SE:バァン←爆発っぽい音)



良哉:

ぐあッ!!なにぃ?!


和皐:

はぁ、はぁ…!よくやった!大地!


大地:

今の何だ?俺がやったのか?


良哉:

…気が変わった。

このままなぶり殺しにするのは簡単だが、力が使えると言うのなら楽しめそうだ。


莉子:

あ…っいや!なにするのよ!


大地:

莉子りこっ!!


良哉:

ここは狭い。我の空間で存分に楽しもうぞ。

追ってくるが良い。

…それまで、この女子おなごは預っておくぞ?


莉子:

大地っ!…ゲホゲホ、助け…!


大地:

莉子りこ―っ!!

…ちくしょう!消えちまった!

和皐かずさ、どうなってんだよ!莉子りこが連れてかれちまった!


和皐:

落ち着け!莉子りこを助けるためには、お主の力が必要なのだ。


大地:

俺の?さっき印を結んだみたいにか?


和皐:

お主の祖先・大昶家おおあきらけは代々、

悪鬼あっき調伏ちょうぶくすることの出来る特別な力があった。

さっき感じたんだ、お主にも内に秘められた力があることを!


大地:

じいちゃんから教わったのはさっきやったあれ一つだぞ?!

そんなんでアイツに勝てるのか?!


和皐:

私にだって大きな力はない…

でも、お主と力を合わせればきっと良哉よしなり様を止められる!

お主は莉子りこを助けたくはないのか!


大地:

助けるに決まってる!お前が行かなきゃ俺だけでも行く!

…って、行き方わかんねーけどッ!


和皐:

ふふ、その意気だ!

良充よしみつ様、待っていてください。必ずや良哉よしなり様を…。





《場転》





姐:

良充よしみつ様…今、なんと…?!


良充:

闇へと堕ちた我が兄、良哉よしなりの討伐に、和皐かずさつかわす。


男:

なぜ和皐かずさなのですか!まだ半人前もいいところです!

それに良哉よしなり様はどこへ消えてしまわれたのですか!


良充:

兄…いや、きゃつは、自らの魂と引き換えに数百年後の未来へ干渉する力を得た。

私にはどうあっても勝てないと知り、復讐するつもりなのだ…私の遠い子孫に。


姐:

でも、良充よしみつ様の子孫であれば大事だいじないのではありませんか?!


良充:

いいや。

大昶家おおあきらけのこの力は、あやかし蔓延はびこるこの時代にこそ必要なもの。

時代の移り変わりと共にだんだんと消えていくのが正しきことなのだ。


男:

そんなっ!大昶おおあきらの血は未来永劫続くのではないのですか!


良充:

私の「うらない」によれば、

きゃつが向かったとされる数百年後も、大昶おおあきらの血は受け継がれている。


姐:(安堵のため息)

ほう


良充:

だが、『ことわりの力』はもう必要とされていないようだ。


男:

では、世界は平和になったということですか?


良充:

その時代にはその時代の脅威が何かしら存在するものよ。

だが少なくとも、妖の脅威はほとんど存在せぬようだ。


姐:

であれば、大昶おおあきら家の力が、無事役目を終えた後の時代なのですね。


良充:

そうだ。

…だがそのせいで、平和な時代を生きる我が末裔が殺されてしまうやもしれん。


姐:

だから助っ人をお送りするのであれば、もっと力の強い者を送るべきです!


男:

良充よしみつ様が行くことは出来ないのですか?


良充:

私を未来へ送り出せる者がいるとしたら、

それは大昶おおあきら家最大の力を持つとされた曽祖父そうそふの力が必要だろうな。


姐:

そ、そんな…。


良充:

現実的な話として私が行くとなれば、きゃつと同じ方法を取らねばなるまい。

悪鬼あっきに魂を売り、向こうには行ったきりとなるだろう。


和皐:

そんなこと絶対にダメです!!


姐:

和皐かずさ…。でもあんたに何が出来るって言うんだい。

まだ自分の力をろくに発揮出来ないだろう?


良充:

だから丁度良いのだ。力の強い者ほど未来へ送ることは難しく、

そこで私が力を使い過ぎれば今度は魂を引き戻せなくなる。


男:

だからと言って力のない者を送っても無意味!

良充よしみつ様は、それ程までに和皐かずさを見込まれているのですか?


和皐:

え…っ?!


良充:

私には、和皐かずさ以外の者を送り込む選択肢はないと断言できる。

…異論のある者は?


男&姐:

…っ…。


和皐:

え?え?どういうことですか?


良充:

お主には秘めたる力がある。私の遠い遠い子孫の助けとなってくれ。

そして我が兄、良哉よしなりにどうか私の想いを伝えて欲しい…。





(場転)





良哉:

…ふ、来たか。貴様も可哀相なことだ。

先祖が不甲斐ないばかりに、とばっちりを受けて死ぬのだからな。


大地:

俺には先祖のことなんてわからない。

でも関係のない莉子りこまで巻き込むことは許せない!返してくれ!


良哉:

こんなもの。ほれ。


莉子:

う…っ


大地:

莉子りこ!しっかりしろ!


莉子:

はぁ、はぁ…


和皐:

ここは良哉よしなり様が作り出した異空間…。

あの方を倒してこの空間を消さない限り、莉子りこは弱る一方だ!

大地、急ぐぞっ!


大地:

わかった…!莉子りこ、少し待っててくれ、すぐに助けるからな!


莉子:

大、地…気をつけ、て…


和皐:

良哉よしなり様!良充よしみつ様に代わり、必ずや貴方様の魂をお助けしますっ!


良哉:

助けるだと?

我が今までどれだけ惨めな思いをしてきたかも知らぬガキが…!

笑止しょうしッ!


和皐:

良充よしみつ様は和皐かずさに大切な想いを託されました!

兄上に伝えてくれと!


良哉:

父や皆の信頼や、ことわりの力さえも奪っていった愚弟ぐていが、

今さら何を伝えようというのか!

我は悪鬼あっきの力を利用し、自分の力として取り込んだ!

良充よしみつよりもすごいことをしてのけた我が、なぜことわりの力を継承出来ぬのかっ!


和皐:

良哉よしなり様は悪鬼あっきを取り込んだのではありません!

取り込まれてしまっているのです!


良哉:

何を言うか!我が大昶家おおあきらけ長兄ちょうけいぞ!

われこそ力を引き継ぐに相応しかったのだっ!


大地:

その力で人々を守るのが使命だったんだろ?

なのにあんたは、弟には敵わないと悟って、

わざわざこの時代に来て、力のない俺を殺して小さな自尊心を充たそうとしてる…


良哉:

黙れ黙れッ!

われを否定する者は全員殺すッ!


大地:

和皐かずさ、アイツから悪鬼あっきを引き剥がすことは出来ないのか?


和皐:

悪鬼あっきの恐ろしいところは形がないことなのだ。

良哉よしなりの心と同化してしまっている…。もう、元には戻らない…。


大地:

そっか…アイツごと倒すしかないんだな…。


和皐:

なんとか動きを止めることが出来れば…!

良充よしみつ様からお預かりした想いを、良哉よしなり様にお伝えすることが出来るのだが…。


大地:

俺がなんとかしてやる…!指示をくれ!


和皐:

大地、ありがとう!


良哉:

何をブツブツ相談しておる!

死ぬ準備は出来たのだろうなぁ?!


和皐:

大地、ここは異空間。お主の集中次第で、きっと力を使うことが出来る。


大地:

あぁ。どうすればいい?


和皐:

お主にも大昶家おおあきらけの血が流れている。

私の声に耳を澄ませ。口から自然と出る言葉を受け入れるのじゃ。


大地:

わかった。和皐かずさのこと、信じるよ。


良哉:

滅びよ!忌々しい血族けつぞくめっ!

悪鬼あっき

我が毒念どくねん毒心どくしんに応じ

偽善の者をぎ払えッ!

オンッ!』


和皐:

良哉よしなり様!悪鬼あっきに負けず、どうか!この声を聞いて下さいっ!

天壌無窮てんじょうむきゅうたる清き風よ

邪悪なる力を防遏ぼうあつせよっ!』



良哉:

負けてなどおらぬ!我は大昶おおあきら良哉よしなり大昶おおあきら家の当主ぞ!!


和皐:

ぐっ!!

…大地っ!頼む、良哉よしなり様の動きを止めてくれ!

われ先立さきだちて発顕はつげん

この者の才幹さいかんを呼び覚まし

深奥しんおうに眠る無垢むくなる力を開放せよ!』


大地:

(俺が知ってる印はひとつしかないはずなのに…なんだ?手が勝手に動く…)


良哉:

貴様、和皐かずさの後ろに隠れて何をしているッ!首から下は要らん!

―――滅びよッ!!


大地:

大岩おおいわごと

大樹たいじゅの根の如く

強固な壁と成りて

如何いかなるものも打ち砕けッ!』


良哉:

なにッ?!

われの術が…相殺そうさいした、だと?!


莉子:

なに、今の…!大地がやったの…?


和皐:

その調子だ大地!ここはヤツだけに都合のいい空間ではない!

眠った力を引き出せる特別な空間なんだ!


大地:

ってことは!…莉子、じっとしてろよ?


莉子:

ゲホゲホ、…え、何っ?

私にひざまづいて、どうしたの?!


大地:(小声で)

『護り給たまえ

悪しき霧を弾き

黎明れいめい此処ここに 

ソウッ!』


莉子:

あっ…嘘みたい、呼吸が楽になった!


大地:

これはお前が今居るところだけだから、そこから動くなよ!


莉子:

うん!

あっ!和皐かずさちゃんが!!


和皐:

『我が声よ風になれ

疾風しっぷうごとき速さにて

闇をも通り抜けよ!

ハヤテッ!』


良哉:

何だその術は?弱々しい風がただ通り抜けていっただけとは!

どこまで出来損ないなのだ!

良充よしみつはこやつに一体何を期待したというのか!あははは!!





(場転)





和皐:

良充よしみつ様待って下さい!

なぜ和皐かずさを選ばれたのです!もう一度お考え直し下さい!


良充:

そう声を荒げるな。かの者の声が掻き消えてしまう…。


和皐:

かの者?


姐:

なんと!精霊ではありませぬか!

聖なる泉はここからはずっと遠いのに何故!


良充:

この精霊は跳ねっ返りでな。

冒険に出るといって泉を離れすぎたために休んでいたのだ。

…小さな花に姿を変えてな。

あの時私が踏みそうになった花は精霊だったのだ。

和皐かずさが注意してくれなくては踏んでしまっていた。


姐:

なんてこと…私も危うく…


良充:

不思議なことだ、私が気付かぬ程精霊の力は弱っていたのに、

かの者の声が主には聞こえていたのか?


和皐:

なんとなく、ですけど。


姐:

和皐かずさ、お前にはまさか「聴く力」があるのか…?


良充:

それに気付き、物怖じせず言葉に出せる力もだ。


姐:

確かに。良充よしみつ様に向かって、「歩いちゃダメ!」などと

普通は言えるものではありません!


和皐:

ひゃああごめんなさい!あの時は咄嗟とっさだったのでっ!


良充:

ははは、それで良いのだ。

誰かを助けようとするのに、相手が偉いかどうかは関係ない。

なぜ自分を選んだのかと問うたな?私も正直に言おう。

皆の前では、「良哉よしなりを討伐する」と言ったが、

私は兄を打ち倒したいわけではないのだ。


姐:

ですが、あそこまで悪鬼に蝕まれていたら、もう元には戻らないのでは…?


良充:

あぁ。どう足掻いても私の兄はもう戻ってこない。

だが、最期に人の心を取り戻すことは不可能ではないと思っている。

幼き日の兄が本当の良哉よしなりなのだ。

私に術を教えてくれた、厳しくて、強くて、優しい兄が…。


和皐:

良充よしみつ様…。


良充:

どうか最期に。私の気持ちを兄に届けてやってはくれないだろうか…。

闇に染まった兄の微かに残る善心ぜんしんを見極められるのはお前しかいない。

この通りだ…。


姐:

良充よしみつ様が、頭をお下げに…!


和皐:

や、やめて下さい良充よしみつ様!

わかりました、上手くいくかはわかりませんが、和皐かずさは頑張ります!

自分に出来ることを、精一杯!


良充:

ありがとう。

…ありがとう、和皐かずさ





(場転)





和皐:

私に全てを託した良充よしみつ様は、

地面に血がしたたるほど強く拳を握り締めていました!

自分がここに来られるものなら来たかったに違いありません!


良哉:

あははは!皆死ねば良いのだッ!!われと共に地獄へ堕ちようぞ!!

『我が怨嗟えんさ

天地万有てんちばんゆう全てを

淪落りんらくふちへ堕としたまえッ!

オンッ!!』


大地:

和皐かずさ!俺が動きを止める!頼んだぞッ!

『不動なるおん、地にて

重き力をその身に受け

矢庭やにわ凝然ぎょうぜんせッ!』


良哉:

ぐぎぎ…ッ!

こんなモのでッ、われガ、止められルかぁぁぁぁぁ!!


大地:

ぐっ…!!押し、戻される…っ!!


莉子:

大地っ!!


大地:

バカっ!防護壁から出るなって言ったのに!!


莉子:

ゲホゲホ、大丈夫!私も支えるから…!

もっと力出せーっ!!


大地:

はは、了解っ!

『渦巻く濁流よ

あらゆる者を飲み込み

彼方かなたまで押し流せッ!』


良哉:

バカなっ!虫けらの分際でぇぇ!

我が動けぬ筈がない!止まる筈がない!動けぇぇぇ゛ぇ゛ッッ!!


莉子:

ひっ…腕が、千切れた…っ!


大地:

動きを止めているのに無理やり動かしたからだ…

ぐっ、また力が強く…!これが怨みの力…っ!


莉子:

もう、ダメ…っ暗闇が、迫ってくる…っ!


和皐:

ふぅ―…(深呼吸)

『遙か悠久ゆうきゅうの時へ

揺らがぬ鮮麗せんれい守壁しゅへきにて

悪しき魂 乖離かいりせし 

深奥しんおうめいへと送りけり

って清浄せいじょうなる心魂こころだま

今よりこれ

舞戻まいもど

オン 輪廻転生サンサーラ 蘇婆詞ソワカッ!』


良哉:

あ゛…ア゛ぁあああああああああ゛!!!





(過去/回想)





良充(少年):(たどたどしく)

『この者の執着しゅうじゃくを取り払い 罪過ざいか改め 清浄な…?』

えっと……


良哉(青年):

良充よしみつ!もっと力を込めんか!

大昶おおあきら家の者として、そんなことでどうする!


良充(少年):

ですが兄上…あやかしとはいえ、私は誰にも死んで欲しくないのです…。


良哉(青年):

いいか、良充よしみつ。妖は本来ここにいてはならん存在。

我々のように力を持つ者は、力を持たぬ者たちをその脅威から守らねばならん。

…心優しいお前には酷なことかもしれぬが、私にはお前の力が必要なのだ。


良充(少年):

兄上は、一人でも十分お強いではありませんか。


良哉(青年):

いいや、人は一人では弱い。

だからこそ皆で助け合わねば。お前は私の助けとなってくれ。

良いな?


良充(少年):

はい…!

もっともっと力を付けて、必ずや、私が兄上をお助けします!





(過去回想終了)





良哉:(弱々しく)

…こんな、古い記憶を見せおって…

あやかし一匹倒すだけで、ぴーぴー泣いていた良充よしみつが…

今や大昶家おおあきらけの当主、か…


和皐:(涙ぐみながら)

良充よしみつ様はいつも自慢しておられました…!

私の術は全て兄上に教えてもらったものだと。

兄上が私を強くしてくれたのだと…!


良哉:

ふ…教えた本人より上達しよって…ゲホゲホっ…


大地:

身体が…崩れてきている…


和皐:

ごめんなさい…っ!

良哉よしなり様のお心を取り戻すには、これしか方法が…っ


良哉:

なぜお前が泣くのだ…


和皐:

これは、違います…っ、

この涙は、良充よしみつ様の涙です…っうぅ…


良哉:

良充よしみつに伝えるのだ……

涙は捨てよ。弱き者を守るため、さらに強くなれ、と…。


和皐:

うぅ…っぐす…はい、必ず…


良哉:

不甲斐ない兄、を…ゆ、る…し…


莉子:

消え、た…


和皐:

ふ、…あああ!良哉よしなり様ぁぁぁ!





《間》





大地:

これで、良かったのか?


和皐:

わからない…ぐす…

でも、良充よしみつ様に伝えなければ…良哉よしなり様の最期のお言葉を…。


莉子:

…っ!和皐かずさちゃん!なんか、身体が透けてないっ?!


和皐:

良充よしみつ様の力を感じる…

そろそろ時間切れだ。元の時代に戻らねばならんようじゃ。


大地:

嵐みたいに現れて、嵐みたく消えてくんだな…。


和皐:

ありがとう二人とも。

時代と共に大昶家おおあきらけの力が失われること、寂しくも思っていたが…

そんなものなくても、心の強さはしっかりと後世へ継承されている!

大地、これからもしっかりな!莉子りこも、大地を頼む。


大地:

こんなハチャメチャなご先祖様を持ってるんだから、

この先何があったって大丈夫だよ!


莉子:

和皐かずさちゃん、大地のことなら私に任せてっ!

何にも心配いらないからね!


大地:

…元気でな!過去の人に言うのも、なんか変な感じだけどさ。


和皐:

ふふ。

ありがとう。お主らも元気でな!




莉子:

行っちゃったね…。

それにしても大地すごかったね!何あのかっこいい呪文?みたいなやつ!


大地:

だろ~?えーっと…

ん?あれ?どうやってたっけか?一個を思い出せねぇ。


莉子:

この時代には必要ないってことなのかな?


大地:

ん、そうなのかもな。

…で、それはそうと…ここ、どこだ?


莉子:

異空間が消えて戻ってこれたのはいいけど…

見事になんっにもないね。


大地:

まじかよ…。

ここは一体どこのクソ田舎なんだよぉぉぉぉぉ!!!





(場転)





良充:

…かずさ、…和皐かずさっ…!!


和皐:

…ん…良充よしみつさま…ただいま戻りました。

良哉よしなり様は、最期にお心を取り戻してくださいました…っ

でも、でも…っ!


良充:

あぁ…解っている。

ご苦労であった。これで、良かったのだ…


和皐:

ふっ…うぇぇぇん…


良充:

辛いことを任せてしまってすまなかったな…

お前には心から感謝しよう。兄上もきっと、感謝しているはずだ。


和皐:

和皐かずさだけの力ではありません…。

良充よしみつ様の子孫は…大地は、とても芯の強いお人でした。

彼の力を引き出すつもりが、和皐かずさの方が力を貰ってしまいました。へへ。


良充:

そうか…。

我が遠き子孫は「大地」というのか。良き名だ…。


和皐:

良充よしみつ様!…和皐かずさはもっともっと修行を頑張ります!

良哉よしなり様の代わりにはなれませんが、

それでも、良充よしみつ様が寂しくないように…!

あたっ!(扇子で軽く叩かれる)


良充:

誰が寂しそうだと?

でも、そうだな…お主にはすべからく期待しよう。

良いのか?

私が兄上に術を教わった時のようにお前にも厳しく修行を付けるぞ!


和皐:

はいっ!望むところですっ!

ですが良充よしみつ様、今だけはお涙を流されてもいいのですよ…?



良哉:

(…涙は捨てよ。弱き者を守るため、さらに強くなれ…!)



良充:

……兄上、分かっております。

陰陽師・大昶家おおあきらけの当主として、

和皐かずさや皆を導き、我が子孫・大地が生きる平和な時代に必ずや繋げてみせましょうぞ。


和皐:

では和皐かずさは絶対に良充よしみつ様よりも長生きしますっ!


良充:

どうした?藪から棒に。


和皐:

だーかーらー!

良充よしみつ様にもう二度と悲しいお顔をさせないために…

あだっ!(扇子で叩かれる)


良充:

何が「だーかーらー!」だ!

どうやらお前には礼儀作法から叩き直さねばならんようだな?


和皐:

ひえ!お、お許しを~っ!


良充:

ははは!




(間)




良充:

『未来へと吹く風の精霊よ

の者の浄化されし魂を

……どうか……

安寧あんねいの地へと運びたまえ。』








end.

――――――――――――――――――

作者レイフロ

Twitter:@nana75927107








end.

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レイフロの台本は、下記HPに纏めてありますので、ぜひご覧ください!

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