桃太郎伝説-鬼編
むかーし、むかーし、川から大きな桃がどんぶりこどんぶりこと流れてきました。で、有名な桃太郎。
大きくなった桃太郎は
村人に悪さをした鬼たちをキジ、サル、イヌの3匹の家来とやっつけた。
「もう、人間には悪さをしません。どうか、許してください。」
あれから20鬼を率いた鬼のリーダー、りんは戦いのときに桃太郎に腕を切られ群れから追い出された。
ライバルのナンバー2のむさしに、リーダーの座は奪われた。
りんは腕がないせいで、バランスのとれない身体。
衣服はボロボロ。かつての英雄の面影は微塵にもない。
よろめきながら歩いていく姿。結果がすべてだ。
しかしあの桃太郎というやつ。人間にはもったいないくらい強いやつだったな。キジ、サル、イヌもそれぞれの特性をいかして桃太郎を加勢してたし。敵としてもあっぱれだ。
しかし、これからどうしようか。ずっとリーダーと皆から頼られて、威張っていたが情けない。
とにかく、住むところを探して傷をいやさねば。
すると、後ろから声が響いてくる。
「待ってー。待ってー。」振り向くと鬼の群れの中で一番若い女鬼ミシと、俺の片腕として戦っていた4鬼集が追いついてきた。
やっと、近くまでくると荒い息をはきながらミシは、「りん、私達はあなたについていくわ」と言う。
「バカいうんじゃない。みてみろよ。この腕」みると、左の腕が肘先から切り取られている。その切り口は肉がそがれて砕けた骨が、でこぼこになり無残な戦いを意味していた。
「この戦で桃太郎に負けてから、今までの強い俺じゃない。これから先はあしでまといだ。また、別の党に狙われることになる」
「そんなことは、ありません。私は、あなた様がいたから強くなれました。他のものも私と同じ意見です。あなたと一緒だから戦ってこれたのです。むさしは、冷血なところがありあなたとは考え方もちがいます。あいつは、私利私欲のためにしか生きていない。一緒にいる価値はありません」
他の鬼たちも、それぞれに訴える。
「ど、どうなってもしらんぞ。勝手にしろ。」引きずった足でうれしさを隠しながら歩きだす。(皆に見捨てられたわけではないのか‥)
キジ「やや、や、どうする。向こうからくるのは、確か、桃太郎と退治した鬼たちではないか?」空宙を飛び回り、皆より早く鬼たちを視界におさめたキジが、報告する。
サル「桃太郎がいなければ、俺たちでは何もできない」
イヌ「逃げるか?それとも、桃太郎とは、キビ団子との交換条件の1日の家来。今度は、鬼どもの家来になるか?」
4鬼集 離れて歩いているキジ達にきがつく。肝心の桃太郎はいない。だが今更あいつらを、とっちめても弱いものいじめになるだけだろう。とにかく、大将の傷を治す安全なところを早く探さないと。
すると、いつの間にか違う鬼のグループがキジ達に目を付けたようだ。
鬼達は、3匹はいるだろうか。
4鬼集は、お互いに目配せをして、スルーを決め込む。今は、手負いのリーダーが休める場所を探すのが先決だ。
一方の鬼達は、キジ達を囲み間合いをつめる。
必死に抗うが、3匹の鬼達はキジ達に比べ体格も立派で、とてもかなう相手ではない。
キジは羽をちぎられ、サルは腕や足をへし折られ、イヌは顔を足で踏んずけられる。見るに無残な戦だ。
ようやく、騒ぎに気がついたりんが顔を上げた。
すると視界に自分が敗北した、キジどもが別の鬼にコテンパンに負けているさまを捉えた。しかも桃太郎はいなさそうだ。
「おい、おまえらキジどもを助けてやれ」4鬼集に向かってりんは、声をかける
「大将、本気ですか?やつらのおかげで腕もなくし群れにいられなくなったんですぜ」4鬼集は、口々に批判する。
「かまわん。おれも調子に乗って人間を苦しめた。今回のことで自分にいい戒めになった。早く、行け」
「は、はい」けしかけられて、キジ達の所へかけていく。
鬼達は、キジ達に気をとられて至近距離にくるまで気がつかなかった。
「な、なんだ。おまえらは」鬼達は身構える。
「こいつらを、助けて来いと、大将の命令だ。」ごっつい鬼が、4鬼。
見た目で、完全に負けていた。
体格、風格、幾十もの戦いをしてきた自信がみなぎっていた。
すごすごと、3匹の鬼はキジ達を残して退散していった。
キジ達は傷だらけの身体で、やっと奴らから解放されたとおもったら、さらに身体がごつい鬼に囲まれている。(だから、やつらは逃げたのか。もう、だめかもしれない。)
すると、「安心しろ。大将の命令でお前らを助けに来た。おれ達の顔わすれたんじゃないだろうな。」その威圧的な態度と、鬼達の顔で体中に緊張がはしった。
「あ、あなた達は鬼ヶ島で戦った鬼達。」
「そうだ、おまえらは気にいらねえが、大将の命令だからな」
大将リンとキジ、サル、イヌの負傷したものと4鬼集で、なんとか寝床になりそうな岩穴をみつけ、身体を休ませる。
イヌ「私たちはあなたを傷つけたのに、助けてくれました。なんと、お礼をいったらいいものか、一生あなたについていく覚悟です。」
キジ「私たちは、敵ではないのですか」
サル「負傷した私たちを救い、一緒に匿ってくれた。お礼のいいようがありません」
やっと横になった大将は、切れた腕が痛むのか顔がゆがんでいる。が、「お互いに知らぬものでもなし、傷が癒えるまでささえあえばよい。」なんて、優しい言葉。
その赤黒い肌は後世に語り継がれる。(優しい赤鬼)
信じるか信じないかは…
桃太郎伝説-鬼編 クースケ @kusuk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます