後日談

さゑな

後日談

 今思えば、彼女を殺したのはわたしなのかもしれない。


 わたしが彼女に会ったのは5年ほど前だ。その時は、わたしは何か小説のネタがないかと旅をしていた。一人旅だった。電車に乗って外の風景を眺めながら、わたしは癒されていた。

 実のところ、わたしは生まれつき神経が弱い。普段の生活でも人間関係に疲れてしまったため、この旅はわたしにとって癒しにもなった。外の風景は一面たんぼであった。

 しばらくすると、わたしは電車を降りた。わたしは直感的にここで降りなければと、思ったのだ。途端にわたしは荷物をまとめ上げて電車を降りた。駄賃なんて気にしない。気にする余裕もないからだ。ところが駅に降りてわたしは思った。何にもないじゃないか。


素直じゃないな

この気持ち

伝えられない、伝えられない

隠してしまう

顔にも出ない

こんなわたしだ

嫌われるだろう


時を止めたみたいに

きみの顔がすぐ浮かぶ

時を止めたみたいに

きみの姿が目に止まる

悲しくて悲しくて

愛おしくて

止まった分だけ悲しくなるのさ


告白なんて性に合わない

なんて言おうか

そんな関係でもないさ

明日はどうだろ

きょうは無理だよ

時間だけが過ぎてゆく

わたしは告白をしてしまいたい。


言ってしまった

それは罪深い行為

彼女はわたしのものとなり

わたしは彼女のものとなった

これからどう生きようか

そう考えて2人だけで布にくるまれ

もう明け方だ。


許しは乞いたい

だが、後悔はない

彼女は一段と元気いっぱいで

わたしはきょうも想いを馳せる。

あぁ、これが現実か。

そんなこと言って彼女と過ごした。


彼女に好きなものを聞いた

彼女はわたしだと答えた

恥ずかしいじゃないか

わたしも言った。

おまえはわたしの一番なのだと。

彼女は笑いわたしの胸の中

いつしか眠った。

愛おしいのだ。


彼女はわたしに告白した。

子どもがいると。

わたしは唖然とした。

わたしと彼女の子どもだ。

2人ともそれは、嬉しかったが

焦りと罪悪感に苛まれる。

わかっている。

罪深い、禁忌であると。


きょうは話さなかった。

話す内容がなかった。

わたしはイラついてたし

彼女もイラついていた。

年下の彼女の立場もあるさ。

年上のわたしの立場もあるさ。

お互い、喧嘩だけは避けたかった。


晩飯の時間。

冷たい料理に口をつけた。

彼女は下を向いたまま。

わたしは言った。

何が悪いと。

彼女は言った。

あなたが悪いと。

わたしが悪いのだ。

そうだ、それはそうだ。

しかし、同時に、認めたくなかった。

わたしは彼女に強く聞いた。

なぜわたしが悪い?

彼女は料理に一口もつけず、

たって黙って部屋へ行った。


わたしは彼女を傷つけた。

彼女はわたしに行ってきますをいい

そのまま出て行ってしまった。

彼女に振られたのかもな。

わたしは焦りと安心に駆られた。

今日の晩飯はサラダだけだった。


連絡がない。つかない。

これは完全に振られたな。

彼女が心配だ。

わたしは、わたしは、後悔した。


次の日のニュースだった。

目を疑った。

彼女の顔だ。

わたしは、コップを落とした。

彼女は死んだ。

事故に巻き込まれた。

いや、自殺かもしれない。

わたしは


数日たった。

彼女はもういない。

あの顔を見ることない。

あの感触もない。

あの声も。

涙も。

温もりも。

わたしは失った。

わたしはただ、


わたしは唯一の家族を失ったのだ。

わたしの最愛のひとであり、妹を。

わたしは、自分の妹に恋をして

孕ませ、そして殺してしまった。

わたしは最低な人間だ。

殺人鬼だ。

わたしは次に誰を殺すか決めていた。

怖かった。


わたしはわたしを殺すのだ。


待っててくれ、

そこへ行ったら謝ろう。

ごめんなさいと。

そして次こそは

一緒に過ごそう。

幸せに。

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後日談 さゑな @SayenaC

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