いつか、もう一度
空月 若葉
第1話
いつか、もう一度。そう思えることって、滅多にない。例えばそれが人なら、ずっと一緒にいたいって思ったり、早く会いたいなって思ってしまう。例えばそれが物なら、手に入れたいって思ってしまう。
けれど、その中にはもちろん例外もある。
これは、とある男の子の冬のお話。
僕は、一人ぼっちが嫌いだ。だって、勇気のない僕は一人じゃ何にも立ち向かえないから。でも、やっぱり一人ぼっちになってしまう事はある。
大きなビルの窓ガラスに、僕が写っていた。その顔は、今にも泣き出しそうだ。
「ははは、12歳にもなって、情けないや。」
来年から中学生だというのに、情けない。
ガラスに写った自分を見ながら、はあ、とため息をついた。
別に、何かトラウマがあるわけでもない。ただ、苦手なだけだ。
しばらく、ただただ自分を見つめていた。自分を見定めるように。寂しさを紛らわすように。
そうして一般だったからだろうか。ぽんっと、後ろから肩を誰かに叩かれた。驚いて振り返る。誰だろうと顔を覗き込むと、知らない女の人だった。化粧をしているから、高校生だろうか?髪の毛から足の爪までじろじろと見ていると、服もにあっているし、まあまあ可愛いほうだ。
「どうしたの?そんなにじろじろ見つめて。」
「あ、す、すみません。あの、どちら様で……。」
誰だろうと思って尋ねると、その人は少しキョトンとしてから、
「ああ、忘れてた。」
と言った。
「私、そこの中学2年のあやか。よろしくね。君は?」
笑顔で答えてくれたあやかに、僕もにっこり笑顔で答えた。
「えと……小学6年、あやとです。」
少し恥ずかしいな、と思いながら答えると、あやかはまた僕の肩をぽんっと叩いて、
「お、名前似てるじゃん。」
と笑った。
「それで、あの、どうして僕に声をかけたんですか?」
僕が尋ねると、あやかは
「あ、それね。なんかずーっと窓見てるから、なんか悩み事でもあるのかなーって。」
悩み事があるかなと思ったら声をかけるの?
少し驚きながら、先ほどの自分を振り返る。
そっか、僕、悩んでたんだ。
「それで?何か悩んでるの?」
というあやかの問いに
「え、あーはい。」
と僕が慌てて答えると、あやかは優しい顔をして
「悩み、聞くよ?」
と言ってくれた。
どこで話したい、というあやかの問いに、僕は公園、と答えた。だから、今は公園に向かっている途中だ。しばらく歩いていると、雪が降ってきた。
「わあ、綺麗ですね……。」
「そうね。」
雪は、水の小さな粒がたくさん集まってできているのだと聞いたことがある。雪は、一人ぼっちじゃないんだ。一人ぼっちになる事はないんだ。
「どうしたの?ついたよ?」
「ああ、はい。」
公園のパンチに座って話し始める。 なんだか少し恥ずかしく感じる。
「そこまでのことじゃないんですけど、実は……。」
「そっか。そうなんだね。」
あやかはあやとの目をしっかり見てそう言った。
何を言われるのかと思って身構えていると、返ってきたのは衝撃の一言だった。
「別にいいんじゃない?そのままで。」
「えっ。」
そんなことを言われるとは思っていなかった。だって、ずっと変わらなきゃ、変わらなきゃと思っていたのに。
「いいんだよ。そのままで。それが君なんだから。それを、どうポジティブにもっていくかが問題なんだよ。」
嬉しかった。そのままでいいと言ってくれて。
「ど、どうやってポジティブになればいいんですか!?この考え方を!」
あやかは少しうーん、と悩んだ後、ぱっと思いついたように僕の方を見た。そして、僕を見つめながら言ったんだ。
「私にはわかったよ。でも、それは君が考えることじゃないかな?」
口を開けてニコッと笑うあやかは、輝いてみえた。彼女も、何かを乗り越えたのかもしれない。
その後、僕が周りにふっと気を取られた瞬間に、彼女は消えてしまった。今では夢だったのかとさえも思っている。
あれから僕は考えた。どうポジティブになるかを。そして思いついたんだ。
仲間の暖かさをされている、と考えれば、問題ないのではないだろうか。
僕の場合はこうだった。君ならどうだろう?
多くの人が抱えている悩み。でもそれって、ちょっと考え方を変えればいいだけなのかもしれない。もちろん、考え方を変えるのは難しい。それでも、ちょっとずつ変わっていくしかないんだ。最終的に、その悩みに終止符を打つのは、ほかでもない君自身なんだから。考え方を変えるとかね、行動をするのは君自身なんだ。たとえ、どれだけの人から手を差し伸べられていたとしてもね。
あの日から、僕は変わった。一人になるのは寂しい。でも、その寂しさのおかげで誰かといるときは最高の気分になれるんだ。
けど、時々会いたいなって思う人がいる。あやか先輩に。でも、いつかでいい。成長した僕を、見せたいから…。
いつか、もう一度 空月 若葉 @haruka0401
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