不遇り

オオイヌノフグリなんてあんまりな名前だ。この名前を付けた人は、ひどい名前だとは思わなかったんだろうか。私は親から貰ったこのポケット植物図鑑を投げた。

両親が他界して学校も卒業することになって私はいつにも増して孤独感が増した。学校では友達がいなかったわけではないけれど、私はただの有象無象で楽しくも苦しくもなく、兄にも負けず、雨にも負けず、私はただ平穏に植物のように生きてきた。

毎日草木を踏み分けて山の麓の小学校までいっていたことは遠い昔のことで、親に生活費を貰って町の学校にいきながら一人暮らしをするようになってからは、私はただ友達と文句をいいながら生きる普通の女子中生だった。

なのになぜ私はこんなにも不幸なんだろうか。私は全てそれが「山本 福梨(ふぐり)」という名前のせいだと思った。だってそうだろう。こんな変な名前のやつは他にいない。私は目を閉じ思考を停止した。


「起きてー朝だよー!起きてー朝だよー!起きてー朝だよー!」


じりりりりりり

私が好きな朝アニメのキャラクターの目覚ましの声が私を目覚めさせる。目を瞑ったまま、手だけ音だけを頼りに、目覚まし音を止めるけど、スヌーズ機能でしばらくするとまた音が鳴る。いつも世界が全て嘘のようで、私は目が覚めるのがたまらなく嫌だった。うるさい音が眠りを浅くする。まだ寝ていたい。私は朝に起きるのが嫌だから毎晩のように本をいっぱいよんで夜更かしするのが日課になっていた。おかげで生活リズムはガタガタ、休み中とはいえこんな真昼間に起きるのは本当に良くない。はやく起きなきゃ…私は目を閉じたまま、体を起こした。

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けーき サンハテナ @steeldevar

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