odd essay

作者 和泉眞弓

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★★★ Excellent!!!

引きこもりの少年が義姉(兄嫁)とふたり、月でサバイバル体験的なことをするお話。
面白かったです。よかったところ、好きなところがいっぱいあるのですが、どうしてかうまく言葉にできそうにありません。
タグに「ジュヴナイル」とありますが、まさにジュヴナイルそのものでした。お話の内容というか、題材的な面そのものはジュヴナイルという語からすぐに連想されるようなものとは異なるのに(個人的な印象かも)、でもジュヴナイルという語に求めているものをそのまま叩きつけられたかのような感覚。
単純に、もう見たまんま感じたまんま好きなところとして、文章がよかったです。ぐいぐい読まされてしまうこの感覚。語り口の巧妙さというか、文章の流れ自体が主人公の人格を形作っているような、そういう心地よさがありました。
詳しい内容についてはもう、うまく言えないので諦めます。諦めておいてなんですが最高でした。とても面白かったです。

★★★ Excellent!!!

『2001年宇宙の旅』っていうクッソ有名な映画があるんですけど、これの原題を『2001:A Space Odyssey(直訳:宇宙のオデュッセイア)』といいます。
 スタンリー・キューブリックとアーサー・C・クラークは、宇宙の彼方まで〝行って、帰ってくる〟物語のタイトルを、ホメロスの『オデュッセイア』に倣って名づけたんですね。
 ちょっと前にSFファンにめちゃくちゃ怒られた、マット・デイモンの『オデッセイ(原題:The Martian)』もそうです。〝行って、帰ってくる〟。

 それで本作『odd essey(直訳:奇妙なエッセイ)』なんですけど、僕は『odd essey』を、人生のわりと早い段階で躓いてしまった主人公(カケルくん)が、人生に帰還してくる話の前半部分だと思っています。
 人間、月に三日居たくらいでガラッと変わるような軟弱な生き物ではないので、たぶんカケルくんは地球に戻ってもやっぱりそれなりに苦しむんでしょうが、カケルくんは月の三日間で、(どういう形であれ)「義姉」という存在を、自分しか存在しなかった心のうちに招き入れています。
 カケルくんはこの後、確かに変化した心を持ち帰って地球で生きていくことになりますが、その結末に関してぼくはあんまり悲観していません。だって『オデュッセイア』って〝行きて帰りし物語〟だし。
 そういう意味で、本作は結末を描かないことで結末を約束しているんですね。作者さん、とてもやさしい人なんじゃないかなと思います。
 がんばれカケル、人生に帰れ。

★★★ Excellent!!!

予備知識なし、先入観なしでページを開いたら、問答無用で私もロケットに乗せられ、はいすぐ発射!説明はあとで! という勢い。

よけいな重力が取り払われた、ある種胎内のような空間で物語は展開する。
価値観のギャップ、世代観のギャップがそこかしこにユーモアをもってちりばめられ、どちら側に立っても説教臭くならない。それでいてストーリーの軸は強く、深く、一本「筋が通って」いるという巧みさ。

うーん、実におもしろい!

★★★ Excellent!!!

 月に打ち上げられた主人公と義姉が、生き残るために必要なものは何なのかを月で考える物語。答えは人によって様々かもしれませんが、最終的に主人公がたどり着いた答えに思わず「なるほどなぁ」と。思うに、現状を認めることも強さの一つで、だからこそ人は一人では生きていけないと、芯から理解できるのかもしれない。そんなことを考えさせられました。