最終話

「...久しぶりだね、絵梨花」

「そうだね、久しぶり...」

「...元気にしてた?」

「うん、まぁね...」

会話が続かない。すぐ沈黙が流れる。

「ねぇ、夢は叶った...?」

「見ての通り、全然だよ、ミュージシャンになろ

 うとしてたのに今では得意なギターも宴会芸に

 成り下がった...絵梨花は?」

「私は...舞台のオーディションを受けてるけど。

 結果は全然かな...」

「そっか...」

「結局別れたのに変わらなかったね、お互い」

「...そうだな」

言えなかった。お前のことを忘れられなかったなんて

「ねぇ、付き合っている人とかいるの?」

「えっ...?いない!いないよ!」

「そっか、そうだよね!君がモテるわけないもんね

 笑」

「いやそれは失礼だろ!笑」

「君の事好きになる人なんて私くらいしかいない

 よ」

急に絵梨花が抱きついてきた。

「え、絵梨花?」

「ごめん...寂しかったんだ、君と別れてから1人の

 時間が増えてたしかに楽しい時間が増えた。夢を

 叶えるために使う時間も増えた。でもずっと何か

 が足りなかった...」

「絵梨花...俺もだよ、忘れようとしても忘れられな

 かった。それほど俺の中で大切な存在だった」

彼が私を抱きしめる。嬉しかった。温かった。彼の温もりを今までよりも強く感じた。

今までよりも長く感じていたかった。

「ねぇ...また一緒にいよう?」

「うん、そうしよう。」

2人で手を繋いでイチョウで黄色く染まった道を歩き出した。夕日が私たちを照らしながら沈んでいく。

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楽曲妄想小説3 風のレッサー風太 @Futa1201

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