手につかない

白銀 蓮(しろがね れん)

手につかない

あの夕日に囚われたままだ。


「最近、なんかあったのか?」

「……いや、別に。」

ならいいけど、と友達のゆうとは笑った。

心配されるほど、俺はいつもと違うってことかな。

夕暮れの道をゆうとと2人歩く。

あの日と同じ夕日のはずなのに、全然違う気がしてしまうのは何故だろう。

「お前、やっぱ変だよ。」

ゆうとがこっちを見ずにつぶやいた。

思い返せばあの日以来、宿題はてきとう、そもそも学校でのことすらあんまり覚えてない。

頭を占めているのはあの日のこと。

「ゆうと?」

俺より少し先を歩き始めた彼が、どんな顔をしているか不安になって声をかける。

「……なんだよ。」

夕日のオレンジを浴びて、にやっと笑っているゆうとの顔が、あの日の笑顔と重なる。

「別に。」

彼の横に追い付いて手を伸ばすが、彼の手には届かなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手につかない 白銀 蓮(しろがね れん) @SiRoGaNeReN_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ