第3話


 知らない天井…そうか…死んだのか…。

 転生…したりとか?


 そんな巫山戯たことを頭の中に浮かべて、周りを探ろうと目を動かす。

 そこには…君がいた。


 そうか…助かったのか。


「起きた!?」


 君が俺の目を見て、驚いたように叫ぶ。耳にキンキン響くその声に首をすくめた。

 君はそれを肯定と取ったのか、ナースコールを押した。


 また…意識が途絶えた。



「…お…おはよ…」


 大丈夫。夢は病院のシーンを見せていない。きっと…君が死ぬことはない。


「…助けてくれって誰も言ってないのにっ」

「…うるさい…静か…に…しろ…」


 酸素マスクの所為で話しにくい。こんな物付けなくても僕はもう長くないのに。


「治療したらよくなるって。大丈夫、病は気からって…」

「バーカ…。嘘言うんじゃねぇよ…助からねぇんだろ?」

「…っ。た、助かるからっ!本人が…」

「ドラマじゃねぇんだよ…こんなもん助かって溜まるか。俺はもう数日で死ぬ」


 君の顔が悔しそうに歪んだ。ほら、やっぱりそうだ。


「どうせ義務教育も受けてないガキだ。漢字だって禄に読めない」

「…」

「…夢、教えてやるよ。俺な…ずっと結婚したいと思ってた。幸せな家庭築いて、ごく平凡な物でいいから…」

「…」


 きっと君は分かってる。そう…相手は君なんだよ。


「でもさ…思ったんだよ。学歴のないガキと結婚して幸せになれるのはドラマだけだ。

 幸せは愛情*金だって言われてるだろ?金がゼロだから幸せにならねぇんだよ」


 君の目が潤む。でも、これが現実だ。


「ごめんな…今まで…」

「…っ。酷いっ、酷すぎる。あんな風に無視して…」


 君は逃げている。俺が死ぬ、と言うことから。

 そして過去の俺を断罪し、幸せなハッピーエンドドラマを作ろうとしている。


 別にそれを否定する必要もない。俺はただ…俺の首に手を回してきた君の背中に…手を回すだけでよかった。









ーー後書きーー



 …夢ってなんだろうか。


 空想、絵空事…確かにそうだ。

 方向は負かも知れない、正かもしれない、でも…必ず心に作用する。心は自身に作用する。


 『夢は叶う』なんて言葉があってはいけない。

 それは『夢』じゃなくて『目標』だ。



 きっと…夢は叶わない、儚い、そして叶って欲しくない、そんな欲の結晶なんじゃないかと思う。

 でも、その結晶は人を動かす。


 そして自分の結晶を人に見せるのが言語であり、動きであるのだと僕は思う。

 沢山の人にその結晶を広める最初の道具が『本』なんだと思う。

 そして画像や動画などが生まれた。


 沢山の結晶が集まればそれは新たな結晶が生まれる。それが価値観に変わる。




 壮大な話だし長くなってしまったけれど…、転じて。


 この作品を読んで下さった皆さんには、沢山の結晶を取り入れて、沢山の結晶を理解せずとも『存在』を理解して…。

 新しい結晶、そしてその原石の夢を作って欲しいと思います。










2019/12/22 14:57 雪兎

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君を守りたかった夢。君と幸せになりたかった夢。 小笠原 雪兎(ゆきと) @ogarin0914

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