役に立たない完璧なタイムマシン
滝コウイチ
ループ
「とうとうタイムリープマシンを完成させたぜ!」
子供の頃から数学・物理学の天才少年と言われ、テレビのバラエティ番組にも多数出演していた
タイムリープマシンとは、有名な猫型ロボットのタイムマシンとは違い、体ごとタイムスリップするのではなく、意識だけタイムスリップすることができる機械だ。
一哉は今までの人生全てをタイムリープマシンの開発に注ぎ込んでいた。
タイムリープマシンさえ完成させれば、人生の全てが逆転すると信じていたからだ。
お金が欲しければ、結果の出ている公営ギャンブルやナンバーズといった宝くじを数日前に戻って購入すればいい。
株やFXだってある。
彼女が欲しければ、例えば気になる女の子から好きな食べ物や色、趣味なんかを聞いて数分前に戻り、それを語ってあげれば驚いてくれるだろう。
名誉が欲しければ、iPhoneのプレゼンが行われる数年前に戻り、ライバル企業に企画を売り込んでみたらどうだろうか?
とにかくタイムリープマシンは人生の逆転を実現させる無限の可能性が存在している。
そう、内藤一哉は思っていた。
「早速、テストしてみよう」
一哉はとりあえず10分前に戻ってみることにした。
その前に、まだ何も書かれていない新品のノートに落書きをした。
10分前に戻れば、この落書きは消えているだろう。
中古のノートが新品になる。
些細な事だけど、それがタイムリープだ。
いよいよ初テストだ。
心臓が高鳴る。
血液が全身を駆け巡っているのを感じるほどだ。
時間を10分前にセットする。
そして実行ボタンを押した。
>>>>>
目の前に新品のノートが置いてあった。
中には何も書かれていなかった。
成功した!
タイムリープマシンは完璧に完成していた!
ただ、このタイムリープマシンは完璧すぎた。
10分前にタイムスリップする際に、一哉の記憶も10分前にタイムスリップしてしまった!
つまり、この10分間の出来事を一哉は覚えていなかった。
「早速、テストしてみよう」
一哉はとりあえず10分前に戻ってみることにした。
その前に、まだ何も書かれていない新品のノートに落書きをした。
残念ながら、内藤一哉の人生は10分間のループを永遠に繰り返す人生となってしまった。
役に立たない完璧なタイムマシン 滝コウイチ @takifield
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