私はキバコ

第20話 私はキバコ

　そういうわけでさ、私は木場冴子のまんまで生きていられたわけ。ある意味わがままかもしれないけどさ。

　え？杉下先生とはどうなったかって？まだ聞く？

　マスターとどういう関係なのかって？

　どうする？マスター？

「秘密」

　って、返事が来たわ。だから私からは話さない。まぁ、今までの話の中で出てきた登場人物の一人、ってヒントを教えておく、私からはね。

　杉下先生？　今も交際しているのかって？うーん、元気にしてるんじゃないかな？今はあの人、アメリカにいるの。向こうの大学で教えてるのよ。いずれ戻ってくるんじゃないのかな？　こっちにも教授の籍があるわけだし。

　え？どんな男かって？そりゃ困ったな。じゃぁ、ほら、後ろ見て。テレビに注目して。今夜の経済ニュース。

『今夜はニューヨークの今後の株式経済とアメリカの経済の展望について伺いたいと思います。現在、ペンシルバニア大学ウォートンスクールで国際経済学を教えていらっしゃる杉下博士と回線がつながっています』

　良い男でしょ？　しぶい男になっちゃって格好良いでしょ？さすが私が惚れた男ってな感じよ。あ、マスター、笑わないのってば。笑うの？　やぁねぇ。相変わらずだって？当たり前でしょ？私が惚れた男なんだから格好良いに決まってるって。もう、失礼すぎ。

　私？　弁当屋のおばちゃんだよ。弁当屋のアイドルだの、看板娘とかいろいと言われたんだけど、結局のところ弁当屋のおばちゃんだよ。そしてキバコだよ。木場冴子。

　今後もキバコ。そういうことよ。

　杉下先生も杉下先生。

　カエルの子はカエルって言わない。

　ちなみに、和之も静香も弁当屋じゃないからね。ちゃんと就職して幸せに暮らしてるけどね。

　それで良いの。みんな幸せ。

　ねぇねぇ、それよりも今度新しいお惣菜出すの。改良版ポテトサラダ。一度食べてみてよね。

　販売は来週の木曜日から。え？大安吉日だからに決まってるじゃない。ゲンを担ぐのよ。うふふ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　了