ハルト:色即是空

 仲良きことは、美しき哉。


「マイルズちゃんも、大変よねぇ」


 そうだねぇ。


「何を他人事のように言っている。お前の優柔不断がマイルズに伝染しているのではないか?」


 いやいやいや、それはない。ってか、なんだよ、俺が優柔不断って。


「そうかもねぇ。ハルトは優柔不断なとこ、あるし。結局、成仏もできたかったしねぇ」

「うるせ」


 そうなのだ。あの時、成仏しかかったのは確かだ。これでやっと安らぎを得られると思ったあの時、不意に地上へ引っ張られるような感覚があったのだ。そして、カゾススの野郎が、トンと俺の胸を軽く押すと、俺はゆっくりと落ちたのだ。遠ざかる奴の顔は、安らいだ笑顔だった。“私は大丈夫、ありがとう”……そんな声が聞こえた気がした。


 そして、エルの言うように、結局、マイルズの背後霊としてここにいる。


「まだ、何か使命があるってことだよ」

「何だそれは。また、マーカスのような事件はごめんだぞ」

「あぁ、俺もごめんだ。できれば、マイルズの成長を見守るという使命であって欲しいな」

「うむ。そうだな」


 俺の言葉に、ルーが頷く。


「そういえば、マイルズはアルベルト(アリシア)が女の子だって、まだ気が付いていないけど、そっちからカミングアウトしないのか?」

「かみんぐ、なに? ……あぁ、告白のことか。そえはあの娘に任せようと思う。ちゃんとマイルズに正体を明かせば、マイルズの心はアリシアに傾くだろうな」

「んなわけ、ないでしょーがっ! もう、マイルズちゃんの心はルシアちゃんにメロメロよっ!」

「っな、なにを根拠にっ!」


 まーた、始まった。


「二人とも、喧嘩はやめなさいって」

「「喧嘩じゃないっ!」」

「はいはい、仲のよろしいこって」

「「ハルトォ!」」


 俺が何した?


 大きなため息をついて、空を見上げる。

 そこにはただ青い空が、どこまでも広がっていた。




-----------------

これにて完結です。

お読みいただきありがとうございました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

背後霊は忙しい 水乃流 @song_of_earth

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ