餓鬼共の黎明

藍田 ひまり

プロローグ ー黎明ー

 夜が明けた。

 線を越えて、黒い山々を越えて、日が今日もこの地に眩いほどの光を運びにやって来たのだ。

 普段この移り変わりの景色を見る事はない。かといって、特別なモノかと言われればそんなことは無い。多少美麗だとは思うが。しかし、それでもこれは何時も通りの事なのだ。


 でも、俺は餓鬼ではない筈なのに、此の目を焼く程の眩い光に殺される事はない筈なのに、お前の炎を見てしまってからは、此の誰しもに平等に訪れる夜明けが怖くて、怖くて。

 この温かな光が降り注ぐこの時を、お前が好きだと言ったこの刻を、俺は、嫌いになってしまいそうだった。


 そうして、破れそうな程に握られていた掛け布団に、二滴の汗がポロッと落ちてじわりと染み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

餓鬼共の黎明 藍田 ひまり @aida_himari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ