10

 こみ上げていた嗚咽を解放する。涙が止まらない。


 悲しいのか、嬉しいのか。何で泣いているのか、全くわからない。


 だけど、ただ一つ、はっきりしたことがある。


 俺の心の赤信号は、消えてしまった。俺はこの、松島ひかるという七歳年下の女に、完膚なきまでにやられてしまったのだ。


 心の中で暴れまわる、何とも言い難い感情に翻弄されてひとしきり泣いたあと、俺はようやく立ち上がる。


 個室を出て、手洗い場へ。鏡を見る。ひどい顔だ。だけど、なぜかすっきりした気分だった。


 乱暴に顔を洗って、俺はテーブルに向かう。松島さんは心配そうな顔でうつむいていたが、俺に気づくとすぐにいつもの笑顔に変わる。俺は自分の席に戻る。


「松島さん……」


「はい?」


「……ありがとう」


 そう。


 この言葉から、始めよう。


 赤信号が消えても、急ぐ必要はない。


 右見て、左見て。


 注意しながら、慎重に進んでいけばいいんだ。

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赤信号が、消える時。 Phantom Cat @pxl12160

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