100年後のマック 改訂版

やまもン

「いらっしゃっせー」

ここはファストフード店だ。モットーはどこよりも早く客に料理を届けること。


「いらっしゃっせー」

「バーガー一個」

「らっしゃぁー」


ハンバーガー系の軽食はレジ横に常備しているので一瞬だ。

ふむ、入店からお帰りいただくまで1分もかかってしまった。


*****


「いらっしゃせー」

「バーガー一個」

「らっしゃー」


店の入り口からレジ前まで高速の動く歩道を設置した。

客は店に足を踏み入れた一秒後には注文出来て、料理を受け取った一秒後には外にいるって寸法だ。

くく、これで入店からお帰りいただくまでの時間を30秒に減らせたぜ。



*****


「いらっしゃせー」

「バーガー一個ってあれ?」

「らっしゃー」


全自動財布すりマシンを採用した。これで頼んだ料理の代金が自動で財布から抜き取られるって訳だ。

おかげで会計の時間が丸々省けたぜ。

客が財布を取り出して中身を確認する、この動作を無くしたことの時短は大きいな。

ハハッ、これで入店からお帰りいただくまでの時間を15秒に減らせたぜ。


*****


「いらっせー」

「らっしゃー」


最新式のAIを採用した。入店した瞬間に客の頭の中を調べて購入するだろう料理、もしくは客の求めているものに最適な料理を教えてくれるのだ。

客は注文する必要すらない、店に入って料理を受け取り代金をスられて出ていく、ちょーシンプルだ。

へへっ、これで入店からお帰りいただくまでの時間を10秒まで減らせたぜ。


*****


「いらっせーしゃー」


大学のお偉いさんからテレポートマシンを譲り受けた。

客は店に足を踏み入れた瞬間レジ前にテレポートされ、代金をテレポートで抜かれ代わりに手元にテレポートしてきた料理と共に店の外にテレポートされるのだ。

くはっ、これで入店からお帰りいただくまでの時間を5秒まで減らせたぜ。


*****


「いらしゃー」


店の入口にテレポートスポットを置いた。

今まではどうしても店に入るという手順にかかる時間を省けなかった。だから店に入らなくても良くしたのだ。

ウチの料理を食べたい客は店の前を通る、それだけで次の瞬間には料理を持っているって寸法よ。

ヒヒヒ、これで入店からお帰りいただくまでの時間を1秒以下に減らせたぜ。


*****


HAHAHAHAHA☆ウチの店は最高だァっ!

入店からお帰りいただくまでの時間を1秒以下に減らせた俺だが、さらなる時短を目指して客がいつでもどこでもウチの料理を買えるようにした。

そう、ウチの店の前を通るという手間を省くため、テレポートを譲ってくれた偉い教授が量子化光線で店ごと量子化してくれたのだ。

これでうちの店は空間に遍在する最強の店になったぜ!

なんたって腹が減ったと意識した瞬間には手元に食べたい料理がテレポートしてるんだからな。

これで業界シェア率100ぱーよ100ぱー。

やっぱ時短サイコウ!


*****


「……こうして現在の我々人類は、ハンバーガー以外の食べ物をほぼ忘れかけているのです。」


僕は先生の話を聞きながら、感想シートの空欄を埋めた。


「僕はこの講義を聞いてとてもビックリしました。なぜなら、僕は今まで人間が食べ物を買ったり食べたりする建物、例えばスパマーカットやカフェル、レステラウタントなどを見たことがなかったからです。来週の遠足で食べ物の購入と料理を経験するのが今から楽しみです!」

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100年後のマック 改訂版 やまもン @niayamamonn

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