第26話 鏡花の心情

教室を出てからしばらく歩き、誰もいない校舎裏に着いた。

鏡花きょうかは辺りを一通り見回し

「…ここなら、誰にも見られないし聞かれないですよね。」

そう言うと鏡花きょうかは後ろにいる俺の方を向いた。

―――ゴクリ

俺は冷や汗を掻きながら唾を飲み込み、鏡花きょうかは俺の顔を見つめにこやかに言った。

中也ちゅうや君…何で昨日、私のLINEを見なかったんですか?」

しばらくの間、沈黙が訪れた。

さっきの恐怖がまだありその笑みを見た時、俺はまた固まってしまったのだ。

沈黙の時間が長ければ長い程、鏡花きょうかは徐々に俯いていく。

(な、なにか言わないと…このままだと変な誤解が生まれる!)

俺はそう思い何か話そうと口を開いた瞬間

「私…んですよ…。」

絶え入るような小さい声だったが俺にははっきりと聞こえた。

俯いた鏡花きょうかの表情は詳しくは分からなかったがその声は明らかに涙声だった。

「へ?」

俺はその声を聞いて情けない声が出た。

(…心配した?鏡花きょうかは俺がLINEを見なかったことに怒っている訳じゃないのか?)

俺は鏡花きょうかの意図が全く分からなかったので素直に聞いてみることにした。

「どういう事…ですか?」

俺がそう言うと鏡花きょうかは顔を上げた。

鏡花きょうかの顔は良く見ると目が少し赤みがかっていてだった。

「私…中也ちゅうや君に昨日の事をLINEでもいいから謝らないといけないと思っていつもと同じ時間にメッセージを送りました。しかし、いつまで経っても既読が付かなくて…

やっぱりあの時に嫌われたのかな?とか、中也ちゅうや君の身に何かあったのかな?とか、

どんどん悪い想像しか浮かばなくって、それで…」

「ちょっと待って!ストップ!ストーーーップッ!」

鏡花きょうかの話が長くなりそうなので俺は一度話を止めた。

「はい…なんでしょうか?」

鏡花きょうかは不思議そうに俺の顔を見つめた。

「えっと…つまり…鏡花きょうかさんは怒っている訳じゃなくて自分が嫌われてないかとか

俺の身に何かあったのか、っていう心配でこんな行動を起こしたってことですか?」

俺が今までの話の内容をまとめて聞いてみると鏡花きょうかは更に不思議そうな顔をして

驚きの内容を口にした。

「私が…怒っている?私が中也君に対して怒る?

そんなこと金輪際ある訳ないですよ⁉そもそもこれはですし。」

「え!そうなの⁉」

俺がその言葉を聞いて驚いていると鏡花きょうかも驚いた様で

「えっと…もしかして…今まで中也ちゅうや君は私が怒っていると思っていたんですか⁉」

「正直…思ってた…。」

そう言うと鏡花はみるみる顔を青ざめていく。

俺は鏡花の今までの行動を見て自分の中で勝手に鏡花きょうかが怒っていると思っていた。

(結果は鏡花は全く怒っていなくて…むしろ俺の事をずっと考えていていたのか⁉)

そう思い鏡花きょうかに謝ろうとしたが

「ごめ…」

「ごめんなさい!紛らわしい事して…。」

鏡花きょうかの方が先に謝ってきた。

その顔にはうっすらと浮かんでいた。

(なんか…罪悪感がこみ上げてきたぞ…彼女の気持ちを全く考えずに苦しめたのは

何よりも俺の方じゃないか!しかも、ヤンデレじゃないかとか疑っていたとかもう俺、最低だよな…)

俺は自分が情けないという思いが沸々と湧き上がってきた。

俺はこれまでの鏡花きょうかに対する非礼に対するお詫びとして

「こちらこそ!本ッ当に!すみませんでしたぁぁぁあぁあぁぁあぁ!」

と本気で謝った。

鏡花きょうかはその様子に驚いたようでえっと、えっと、と言って慌てている。

俺はそのまま続けた。

「こちらの勝手な理由で疑ったりして本当に申し訳ない!」

中也ちゅうや君!まず、頭を上げて下さい!」

鏡花きょうかは何とか我に帰ったのかそう言った。

俺は頭を上げて鏡花きょうかの顔を見た。

「まず、頭を上げてちゃんと話して下さい。」

「はい。」

そう言って俺がこれまでの鏡花きょうかに対する印象を説明した。

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俺の周りがヤンデレしかいなくて生きるのが辛い 白夜 ユイ @yuui-yui

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