第25話 恐怖

本をしまった俺は1時限目の準備を終えて、頬杖を突きながら

ただぼうっと窓の外を見ていた。

(今日の昼休みかな…鏡花きょうかに会うとしたら…。)

なんて考えながら先生が入って来るのを待った。

―――ガラッ

その時、扉が勢い良く開いた。

(先生が入ってきたみたいだな…でももっと静かに開けてくれないかな…)

俺はそう思いながら扉の方へと視線を向けた。

「…‼」

俺は入ってきた人物を見て絶句した。

「…赤月あかつき 中也ちゅうや君は…いますか?」

その人物は扉の近くに座っている女子生徒に満面の笑みで俺の所在を聞いた。

その人物は満面の笑みだがその笑みはとても

まるで自分の宿敵を追い詰めた時のような、だった。

「…は…はいぃ…います…。」

女子生徒はその恐ろしさに圧倒されたのか力なく答えた。

その人物は辺りを見回した。

俺が頬杖を突くのを止めたその瞬間、

その人物は俺の事を見つけたらしく俺とばっちり目が合った。

俺は慌てて目を逸らそうとしたが余りの恐怖で目が逸らせない。

その人物は一切表情を崩さず1歩1歩静かに確実に俺の所に向かって来る。

その人物が教室に入った瞬間、教室内の物凄く空気が重く暗くなった。

俺は視線を逸らせない。

目を背けたいのに恐怖がそれを邪魔する。

そんな中でもその人物はこちらにまた1歩また1歩と向かって来る。

1歩1歩がとても長く感じた。

そして、とうとう俺の目の前にその人物が来た。

「…少しお時間いいですか?…中也ちゅうや君♡」

とその人物は俺に満面の笑みで言った。

俺はこう答えるしかなかった。

「はい…わかりました。…」

俺はそう言って立ち上がり彼女の後をついていった。

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