お菓子をきっかけに広がる、甘い恋物語

 菜花青空は、突如、異世界に召喚された。
 いきなり呼び出されたものの、周りの風当たりは厳しく、心細い気持ちを抱く彼女は、ひょんなきっかけでお菓子を振舞うことに。
 材料も満足に手に入らない異世界で、試行錯誤しながら作るお菓子。
 それを通じて、異世界の人々と心を通じ合わせていく。
 孤高の影を感じさせる魔王、ハディルとも徐々に心を通わせていく中、彼を取り巻く状況が、徐々に明らかになって行く。

 異世界の描写が巧みであり、少女の視点で異世界の情景が鮮やかに表現されている。また視点を切り替えることで、さまざまな人物の内心を書き起こし、すれ違いや葛藤をよく表現している。
 青空という主人公は、非常に真っ直ぐな性根で、現状を悲観することもなく、目の前の困難に対し、今、自分に何ができるかをしっかり考えて向き合っていく。そんな彼女が一生懸命作るお菓子は、文章越しでも伝わってくる温かさを感じる。
 そんな彼女がどうして、魔王の妻になるのだろうか?
 今後の展開が楽しみである。

 砂糖のように甘く、カラメルのようにほろ苦い、異世界恋愛ファンタジー。