第2話
月曜日、私は風邪をひいて学校を休んだ。
火曜日、3日間寝込んだ風邪がようやく治って、登校中。
突き刺すように風が冷たい。
マフラーで寒さをしのいで校門を通り抜けると、車がいちいち避ける邪魔な胸像の前に先輩が参考書を手に立っていた。
「タイチセンパイ……おはようございます」
「お前、昨日、休んでたのか?」
本当なら飛びつくところだけど、正門で先輩に会うって、ほとんどない。病み上がりでいつものテンションが出ない。不意打ちするのは慣れてるけど、されるのは苦手。
先輩が口をへの字にして歩み寄ってくるから、私は怯んで足が止まる。
……しまった。
強引にマフラー押し付けて、彼女でもない私がお揃いしてたら、流石に気持ち悪い!?
呪いのマフラーって、感じ?受験生のナイーブを無視し過ぎた?
やっと熱風邪が治ったところ、汗をかきたいのか、鳥肌を立たせたいのか、私の身体が混乱する。
先輩が、自分の首に掛けてる私が渡したマフラーを外して、私の首のマフラーもクルクルと外す。
ぴゅうと、首が寒くなると、私の心までが一気に凍りそうになる……
「お前ね……」
参考書を小脇に挟んで、両手それぞれにマフラーを持った先輩に、私、……泣いちゃうかも。
マフラーを突き返されるのを覚悟して、ギュッと視線を地面に落とす。
「……こっちがお守り」
「えっ?」
と、先輩が、私の首から取り上げたマフラーを自分の首に巻いて、もう1つを私に巻き直す。ほんの少しだけ温もりが残ってる。
「……なんか、いい匂いな」
「えっ!ちょっと、嗅がないでください!」
超恥ずかしい!やめてやめて、臭いかもしれないから! そういうの、本当、やめて!!やられるのは苦手なの!!!
「ん?ちょっと臭い?」
「わー、タイチセンパイ、やめて下さい!捨てていいですから!ごめんなさい!」
って、自分の首に巻かれたマフラーは、先輩のいい匂いがするから返したくない〜〜!
周りが超見てる!先輩、カッコいいから、超目立つし!
って、先輩、なんで昨日私が休んだの知ってるの?もしかして、昨日の朝もここで待ってたの?
「エマ、俺に散々恥ずかしいを強いてきて、それ?」
「うわぁ、ごめんなさい。謝りますから……えっと、あ……の、匂いの本体の方もお守りにどうですか……」
「……お前の、そういうところ苦手」
先輩がにっと笑う。
先輩が私の頭をポンポンして背を向けると、私はいつものように先輩の背中に激突した。
今朝はちょっとそのまま抱きついても……いいかな?
先輩、クリスマスはお好きですか? 炭 酸 水 @tansansui2019
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます