天国と地獄

十六夜 狐音

逢いにゆく。

人間には感情がある。それは様々なものがあり、怒り、悲しみ、楽しみ、愛情。


簡単に例を挙げるとこんなところだろう。


これはそんな感情が混沌こんとんとする物語りである。



とある男女が交通事故で亡くなった。これはどこにでもある話だ。毎日何気なく見ているニュースで、毎日誰かが死んでいる。

原因はさまざまだ、殺人・老衰・事故・自決。


亡くなった男女はとてもお互いを愛し合っていたカップルだ。クリスマスシーズンだから街には人が多く交通量も多い。したがって事故も増える。そこで暴走するドライバーに轢かれた。とても慈悲深いことだ。何も悪くない人がなぜ命を落とさなければならないのか、理解に苦しむ。


死後の世界というものをあなたは信じているかい?


実は死後には天国と地獄がありそのどちらかに人はわけられる。この世界ではそれがアトランダムにきめられる。それが生前でどんなに悪を重ねようとも。どんなに徳を積もうともそんなことは関係ない。


男は地獄におちた。女は天国に行った。これは神が決めたことで誰も文句の言いようがない。


そしてこの世界では天国では悪を重ねれば、地獄では徳を積めば居場所が逆転するといわれている。


男も女も互いに逢いたい。もう一度姿を見たい。その思いから行動は始まった。


男は女に逢いたいと願い必死に地獄という社会で働きまわる。それは労働というだけではなく困っている地獄の人間をたすけたりと積極的に己の正義を全うする。女が天国にいるとも知らないはずなのに男は女を信じてひたすらに働いた。


女は男に逢いたいばかりに悪を重ねる。天国という社会で窃盗、強盗、誘拐。人の感情は恐ろしい。自分の利益のためなら他人ひとのことなど考えない生き物なのだ。女もまた天国に男がいる可能性を捨てひたすらに悪に走る。




それから5000年の時が経つ。


本来生きているのなら姿も変わり果てているだろうがここは死後の世界、老化も死も無い。生体経過時間が無いということだ。


やがて男の前には天国の門。女の前には地獄の門が現れる。


そこに互いは向かってゆく......


どちらの門にも看板がある。


『一度死後の世界で住む場所を変えれば二度と戻ることはないだろう。』と。


そんな警告はお互いに無視をして「やっと逢えるんだ」という気持ちに押しつぶされて周りが見えなくなった。もう楽しみで仕方ない。


5000年前に死んでから一度も会えなかった恋人にもう一度この門を通り抜ければ再び逢えると信じて二人は扉を開けて向こうの世界へ行く。


世界を入れ替える時にお互いは誰かとすれ違った。そしてそのすれ違った相手はやけに懐かしくて振り向くと相手も自分の方を見ていてやけに切なかった。





そんな感情に浸る間もなく、扉は閉じてしまった。


The End

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天国と地獄 十六夜 狐音 @Kaikus30

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