ストレス戦隊ストレンジャー

霜月秋旻

ストレス戦隊ストレンジャー

 町では近頃、犯罪が増加している。町を歩く人々は殆どが怪訝な表情をしている。みな、なにかしらのストレスを抱えているのだ。ストレスが人を犯罪行為へと導いたのだ。

 こうもストレスを抱える人間が増えた原因は、最近町に現れたあの五人組の仕業だろう。『ストレス戦隊ストレンジャー』と呼ばれる謎の集団である。


 まず一人目のストレスブルー。彼は青いスーツに身を包み、「重たい本より電子書籍」のキャッチフレーズで人々にタブレット端末を押し売りして歩いている。タブレットが発するブルーライトによって人々の睡眠時間を奪う。睡眠不足でストレスを抱える町民が彼の影響で激増した。


 次に二人目のストレスブラウン。彼は茶色いスーツに身を包み、幼児達に甘いチョコレートを配り歩いている。一見善良な人間に思えるが、歯磨きが未熟な幼児を虫歯に陥らせ、ストレスを生み出させるえげつない人間である。


 三人目のストレスレッド。赤いスーツに身を包む大柄な男。声もでかく、常に体を動かしていないと気がすまない。いろんな意味で暑苦しい男。真夏は彼に近づいてはいけない。


 四人目のストレスグリーンは緑色のスーツを着ている。緑色はストレスとは無縁な色にも思えるが、それは大間違いである。雑草に肥料を撒き、草刈に追われる農家達の苦しむ様を満面の笑みで眺めている。


 そして最後はストレスブラック。夜に街中で、コールタールのようにドロドロのブラックコーヒーを無料でふるまう。その影響で飲んだ人々はカフェインの過剰摂取による睡眠不足である。


 週刊誌『週刊モノガタリ』記者である私、未知野領行はその五人組を取材した。何故人々のストレスを増幅させるようなことをしているのかを五人に尋ねた。するとなんと五人とも、人々のストレスを増幅させようなどとは思ってもいないらしい。

『ストレス戦隊ストレンジャー』という呼び名も、人々が勝手につけた名前だ。彼らは、そう呼ばれているのをすごく不愉快に思っていた。彼らはただ、善意で人々の為に尽くしていただけだった。


 ストレスブルーは、単に電子書籍を人々に勧めていただけだ。ストレスブラウンもチョコレート好きな子供達にチョコレートを配っていただけ。ストレスレッドはただの運動好きで、ストレスブラックも濃厚なコーヒーを好む人々にコーヒーを無料で飲ませていただけだった。しかしその結果が人々のストレスを生み出す原因となってしまった。

 ただ、ストレスグリーンの行為だけはただの悪趣味な悪戯だった。雑草に肥料を撒くなどという行為は、熱射病覚悟で草刈をする農家達をさらに苦しめる、とてつもなくえげつない行為。それを満面の笑みで眺めるなど悪趣味極まりない。彼だけは極悪人である。


 結局のところ、ストレスを感じるも感じないも、その人の心の持ちようなのだろう。ストレスの感じ方も十人十色。ストレスを抱えず生きるためには、ストレスに打ち勝つ心を育てることが必要なのかもしれない。


 その後、『ストレス戦隊ストレンジャー』は解散した。町を離れ、五人はそれぞれどこかへと去ってしまった。町の人々は五人の解散のことを、『ストレスフリー』と呼んだ。

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ストレス戦隊ストレンジャー 霜月秋旻 @shimotsuki-shusuke

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