第7話

 超大型オンラインTPSRPG『エルダー・グラウンド・オンライン』

 通称、EGO。プレイヤーは皆、エゴと呼ぶ。

 そのゲームは、世界中で人気を集め、総プレイヤー数は一億を超えている。

 その中の、一人が、居なくなった。


 海山カイトは帰宅していた。

 この時期になると、日が沈むのが遅く感じる。

 夕焼けが、駐車禁止の標識で隠れた。

 だがすぐに顔を出し、目を焼いた。

 瞬きをして、空を眺める。

 上を向くと涙がこぼれないと言うが、最近は涙を流さなくなったので、そんな言葉に意味などなくなっていた。


 今日はいいことがあった。

 大通りを歩いていたら、子供を連れた女性とすれ違ったんだ。

 その女性は、子供と手を繋いでいた。

 女性のカバンには、白くてまあるい、あの敵キャラのキーホルダーを付けていたんだ。


 最近の毎日は、今までよりも楽しく、人生が明るく見えた。綺麗に見えた。

 呼吸は相変わらず浅く、気づいたら呼吸をしていない時がある。そんな気がする。

 吸ってない息を吐きだした。

 今度は息を吸ってから、吐き出す。

 ため息をつくと幸せが逃げると言うが、ため息をついたのではなく、幸せを肺で味わっていたのだ。


 スラックスのポケットに突っ込んだ手に当たるのは、家の鍵。

 家にはパソコンと、EGOがある。

 そして、最近ようやくテイムした、あの敵キャラが家で待っている。

 それだけで、たったそれだけのことで、毎日が幸せに感じる。

 さあ、早く家へ帰ろう。

 歩く速度を上げた。

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コネクト 桜咲つな @ssktuna

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