赤いりぼんの女の子

雨世界

1 君のことが大好き。

 赤いりぼんの女の子


 田中穂花 小学五年生 


 小町達也 小学五年生


 山中玲 小学五年生


 本編


 君のことが大好き。


 赤いりぼんの女の子


 穂花がいつものように頭の上にお気に入りの赤いりぼんをつけていると、「そのりぼん。可愛いね。いつもつけてるけど、気に入ってるの?」と今年の教室の移動で初めて一緒の教室になった小町達也が、田中穂花に言った。


「うん。気に入ってるの。でも、もう私も五年生だし、ちょっと子供っぽいかな?」穂花は言う。

「そんなことないよ。すごくよく似合っている」

 頬づえをしながら、にっこりと笑って、達也が言った。


 その達也の笑顔を見て、穂花は自分の心の中に一つのとても綺麗な花が咲くのを確かに感じた。

 田中穂花は、小町達也に恋をしたのだ。


「それで、好きになっちゃったの?」

「うん。大好きになった」

 小学校の帰り道。


 親友の、黄色い花の髪留めをつけている山中玲ちゃんに言った。

「……はあー。穂花は単純だね」と玲は言った。

 その玲の言葉を聞いて、穂花はちょっとだけ頬の膨らませる。「別に単純じゃないもん」と穂花は言う。

「はいはい」玲は言う。(親友の玲は穂花の扱いがとてもうまかった)


「それで、どうするの?」玲が言う。

「どうするって、なにが?」穂花は言う。穂花は夕焼けの色に染まり始めた街の景色を見つめていた。(興味がすぐに違うものに移ってしまうのだ)


「達也くんに好きだっていうの?」

「……え? どうして?」穂花は言う。


「だって、穂花は達也くんのことが好きなんでしょ?」玲の言葉に「うん」と言って穂花は頷く。

「なら、その気持ちをちゃんと伝えないと。じゃないと『ほかの誰か』に達也くんのこと、取られちゃうよ?」

 玲は言う。


「それはいやだ」穂花は言う。

「じゃあ、告白だね。愛の告白」玲は言う。

「……愛の告白」頬を赤くしながら、穂花は言う。


「穂花。一人で達也くんに自分の気持ちを伝えられる?」玲は言う。

「……頑張ってみる」真剣な顔をして穂花は言う。

 そんな穂花のことを見て、「そっか。わかった」と玲は言った。そのとき、玲はなんだか少しさみしそうな顔をしていた。(それはあんまり感情を顔に出さない玲ちゃんにしては、とても珍しいことだった)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤いりぼんの女の子 雨世界 @amesekai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ