エンディング
全てが終わった。
回収された一機は無事に一樹の中に入ったそうだ。
これからは一樹と共に生きていくそうだ。
「事件だったはずなのにもうどこのテレビでも放送してないな」
チャンネルを回してニュース番組をいくつか見てみるけど、木の塊や土人形についてのニュースはやっていない。どこかで事故があったり火事が起こったニュースで溢れている。毎日のように事件が起こる現実に辟易してしまう。
「長い一日でしたね」
「だな〜めちゃくちゃ長かった」
お茶を飲みながらゆっくりできる時間も、もうすぐで終わりだ。明後日からはまた仕事に追われる毎日に戻る。
長いようで短い夏休み。二葉姉を取り戻した実績は輝かしいものではあるけど、俺の人生に関して言えば全く関係はない。
やりたいからやったけど、それによって引き起こされるであろう現実からは目を背けたい。
「悪かったな」
「何がです?」
首を傾げる彩乃に、ふぅと息を吐いた。
「俺の事情に巻き込んだみたいな感じだからな。なんとなく」
「別に巻き込まれたつもりないですよ。私が自分で選んだことです」
お茶を飲んでから外に視線を送っている。それを追いかけると、外ではコッペリアンの四人が空を見上げていた。四人中二人はどっちなのか判断しずらいんだけど、一緒に見ているのであればコッペリアンのほうなのだろう。
十人いる中の半分近くが集まっていることに驚きを隠せない。もしかしたら、二人しか残らなかったかもしれないし、誰かが欠けていたかもしれない。全員いない可能性だってあった。
それを思えば、こうして集まっているのは奇跡と言える。
「先輩が諦めなかった結果が、あそこにあるのですね」
「相手があの二人でなかったら諦めてたよ」
笑いながら今後を考える。
きっと、もっと大変なことになるだろう。今回だって、俺の与えられた力は役に立たなかった。足でまといにならないようにするのが精一杯だった。彩乃のほうが役割多かった気もする。
「やれることを増やすしかないのか」
「今後も戦うんです?」
「しーらね」
寝転がり、天井を見上げた。
未来のことなんてこの瞳で見ても確実ではないのだ。ただ、目の前に与えられた選択に対して正しいと思う道を選ぶしかない。
俺が選びさえすればーー七機が、その道を切り開いてくれる。
確かな信頼は、俺たちをより強くする。
「にゃはは。お兄ちゃん。こっち来てよ〜」
「はいよ。彩乃。最後の夏休みだし、楽しもうぜ」
「はい」
手を挙げてから、彩乃と共に外へと出る。
未来がどうであろうと、今はこんなにも輝いているのだ。俺は、この時間を大切に過ごす。
壊れやすい。この、奇跡の時間をーー
人形たちは愛を求める 風瑠璃 @kazaruri
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