断つ者

「お兄ちゃん。選択は決まった?」

「当たり前だろ。俺は強欲なんだ。全部選ぶに決まってるだろ?」

「にゃはは。それって、一番を含むのかな?」

「当然。まぁ一樹次第だけどな」


一樹を振り返れば、七機によって救出された二葉姉を抱きしめながらこくりと力強く頷いた。


「いいのか?」

「寂しい気持ちは、ボクにも分かる。だから、いいさ。友人になれるかはあっち次第だよ」


優しい笑みを浮かべる一樹。

二葉姉を取り戻して、昔に戻ったようである。


「というわけだ。いけるな?」

「もっちろん。大丈夫だよ。だって、お兄ちゃんの願いを叶えるための剣なんだからね」

「なら、これを渡すぞ」

「ゴミじゃないんだね」

「持ってないんだよ」


服を脱ぐ訳にもいかないので、ベルトを外して七機に渡した。少し緩いだけなので、ずり落ちないので渡せる。これで緩いズボン履いてたら渡せなかったので助かった。


「お兄ちゃんの想いで頑張るね」


ベルトを振ると巨大な刀が生まれる。

小学生みたいな外見の七機が振るうには巨大すぎるその刀を体を回転させながら縦に木の塊を両断した。

ぐらりと揺れる地面。転びそうになるのを耐えながら上を見上げれば、五機の土人形が顔を覗かせた。腕が伸ばされて乗れと言わんばかりに広げられるが、俺と七機は乗ることはなく。一樹に二葉姉と一緒に乗るように指示した。


土人形はそのまま二人を安全圏へと連れていく。


それを見送ると、七機が寝転がるように指示してくるので急いで倒れ込む。仰向けになるのは怖かったのでうつ伏せになって下を向いた。振り回すのが容易に想像できてしまうのだ。


「よし。これでOKっと」

「ボロッボロだな」


一機のダメージはどう計算されるんだ?

不穏すぎるんだけど。


「さあ、必要な所は全て断ったよ。これでも、まだ向かってくるの?」

『我を消滅させるに至らぬ。この程度。児戯と変わらぬよ』

「一機か。この頭に直接響く声は」

『さよう。我が想い。我が苦しみ。そなたたちに断ち切れると思っているのか?』

「断ち切れるわけないだろ。俺たちにその役目はない。それをするのはお前であり、一樹だ。縛られて苦しいんなら自分で破壊しろよ!」

『出来ぬ相談だ。それが出来るなら、このようなことはしていない』


薄らと、木の塊が消えていく。

七機が切ったからなのか、別の要因なのか、俺には判断できない。

だけど、このまま消す訳にはいかない。


「逃げるつもりか!!」

『七機。断て。我が全てを斬り伏せろ。その先の未来まで。消し飛ばせ』

「にゃはは。ざ〜んねんながら、お断りだよ。お兄ちゃんがそれを望まないからね。一番の全てをここで断ち、後は二人に任せるんだ!」


切られていく。斬られていく。

細かくなり、散っていく 木の塊だったものは、七機が断っていく。


何が見えているのか、俺には分からない。一つ分かることは、核となる部分を避けているということだろう。

コッペリアンは、核が残っていれば生き残れる。そのため、それ以外を消し飛ばしているのだ。


「これで、おしまい!」


バットのように構えた瞬間。巨大であった刀が小さくなっていく。形を変え、両刃の剣に変化したそれの腹で、何かを打ち上げた。


勢いからして砕けるのでは? と思うほどではあったけど、それは形を保ったまま太陽が昇った空へと打ち上げられ、土人形の手へと渡る。


木の塊は、完全にその姿を消した。


宙へと投げ出されるけれど、俺に一抹の不安もない。

七機がいる。それだけで、身の安全が保証されているのだから。

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