大丈夫

一樹の叫びにホッとしてしまう。

何もかもなくなった訳では無いのだと分かったからだ。


「それも含めてみんなで話そう。あの二人を解放できるか?」

「無理だ」


即答される。

無理なのか〜と、七機を見上げる。


「逃げろ!」

「うわっと!?」


木の枝が俺を狙ってきた。当たりはしないけれど、スレスレを通るのでビックリする。


一樹も驚いていることから、望んでやっていることではないのだろう。


「なあ、一樹。お前のコッペリアンはどうなってるんだ?」

「えっと、それを聞くかい?」

「さっきまで思いっきり暴れてたし、気になるのは当然だろ?」


唐突に変わった印象は強い。なら、どこに行ったのか。考えたくない回答としては、この動きだした木の塊だけど·····


一樹の指が、ゆっくりと下に向けられる。


まぁ、そういうことなのだろうと頭を抱えた。ということは、七機たちを縛っているのは一機で、それを解放する力は一樹にはないという計算式が成り立つ。


俺たち二人に力はなく。外で待機。あるいは押しとどめてくれている彩乃たちに頑張ってもらわないといけない。スマホを取り出すが圏外なので連絡も不能っと。


これ、詰んでないか?


状況がプラスに振れる状況が見えない。試しに右目で未来を確認する。

変化はない。気分の悪さもない。干渉されていないようだ。


「さっきまでは、一機だったんだな?」

「ああ。だけど、突然いなくなった。いや、居る感覚はあるんだが、表に出てこない。左目に片眼鏡を出せるから、力はあるようだけど」

「なるほど」


手札が貧弱だ。ここからの逆転手が思いつかない。前は運が良かったと言えるし、七機たちが頑張ったから何とかなった。


「七機。俺に、力を貸してくれないか?」


意識がないのは分かる。それでも、声をかけるしかなかった。今の状況で俺に出来ることは整理と手札の補充だけ。となると、俺の中にある最大戦力を呼び起こすのは必須になってくる。


「頼むよ。七機」

「にゃはは。しょうがないなぁ〜お兄ちゃんは、僕が居ないとダメダメだもんね」


薄く開かれた瞳。

力ない笑みを浮かべながら、拳を握る。蔦を振りちぎろうとしているようだが、それを可能にするだけの力がないように見える。

だから、俺はポケットを探った。何かないかと漁れば、何かが丸まったゴミがポケットから出てくる。

レシートか?

なんでもいい。一樹に声をかけ、力を合わせてそのゴミを七機に渡す。


「ありがとう。これで大丈夫だよ」


七機が、振るう刀が蔦を切り刻む。


大丈夫。俺たちはまだやれる。戦う力は、まだ残されているのだ。


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