課題10 「女性をかわいく描写してみる」

課題

  「女性をかわいく描写してみる」


 冒険者たちが立ち寄る小さな薬屋『丸々堂薬局』。今日も看板娘のリリーが、一人で客の応対をやっていた。

 十代後半。髪の毛が茶色、目も茶色、背は低く、胸も尻も出ていない。

 愛嬌があり、いつも笑顔。ハキハキと元気がある。しかし薬の知識がない。



作品


 「回復ポーション3つ下さい!」

 冒険者たちがダンジョンから帰る時間帯になると、『丸々堂薬局』にも多くの客が訪れる。

 「良かった、無事に戻って来れたようですね。はいどうぞ、3つで6ゴールドになります」

 この薬屋の看板娘リリーが、袋に詰めたポーションを両手で丁寧に手渡す。髪と同じ茶色をした大きな目で、覗き込むように微笑むリリーの姿に、男の冒険者は顔が赤くなった。

 リリーは客の対応をするに当たって、心がけていることがあった。それは、お客様の目を見ること、笑顔でいること、何か言葉をかけることの3つである。薬屋の娘であるにもかかわらず、薬の知識がほとんどないのを補うため、リリーが自分に課したルールである。

 しかし視力が悪いせいで、お客の顔を間近で見るクセがついてしまった。客の冒険者がドギマギしていることにリリーは気づいていないが、そのおかげもあり丸々堂薬局は小さな店の割には繁盛しているのだ。


 「毒消しポーション10本くれ」

 ぶっきらぼうに白髪の戦士がリリーに注文する。

 初めて見るお客さんだ。見た目はかなり年配だし、威厳がある。リリーは気合を入れ、頭を深く下げて応対する。

 「ご来店ありがとうございます。はい、毒消しポーション10本で80ゴールドです。こんな小さな店を選んで下さり、誠に感謝で畏れ多く……」

 普段使わない難しい言葉を使ったせいで、先が続かなくなってリリーは固まってしまった。表情は笑顔のままで引きつっている。

 「はっはっは! 面白いお嬢ちゃんじゃ。しかしまだ幼いのに立派じゃ、子供ひとりで客の対応をしておるとはのう」

 「ありがとうございます! でもこう見えてももう18歳なのですよ。年齢的には大人です」

 リリーの身長は同年代の女性よりかなり低く、つかめば持ち上げられるほどである。だからよく子供と間違えられるし、そのことは本人も実はイヤではなかった。

 「おお、それは失礼した」

 白髪の戦士が頭を下げる。

 「イエイエイエ、そんなことはないですよ。全然失礼じゃないです」

 慌ててリリーは両手を振る。こうやって、コミュニケーションのきっかけになるから、リリーとしては子供の外見もいいかなと思っているのだ。


 白髪の戦士は改めてリリーを観察する。尻は小さく女っぽさはまだないが、胸を見れば確かにツンとした膨らみがあるようだ。服装はといえば、清潔そうな白いシャツの上に淡い黄色のカーディガン。薬屋ということを意識してであろう、落ち着いた感じだ。ふむ。なかなかこの子は気が利きそうな子じゃ。何より自然な笑顔。この娘のほほ笑む目で見られるだけで、今日の疲れが吹き飛ぶようじゃ。

 なるほどな。この薬屋が繁盛しとるわけじゃ。

 「では80ゴールドじゃ。また来させてもらおうかの」

 「はい、お待ちしております。ありがとうございました」

 

 

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小説の練習(素人) 立木斤二 @nijunimaru

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