第60回Twitter300字ss「祝う」

草群 鶏

サプライズ

「誕生日、なにか欲しい物ある?」

「えー、この歳で?」

「この歳だからこそ、だろ。めでたいめでたい」

「それもそうね」

こういうところであっさり受け入れる潔さがいい。思えば長い付き合いで、このやりとりも少しずつ内容を変えながら、毎年繰り返している。

「ものっていうか、夢はある」

「ほう」

「私をめぐって争う男の修羅場が見てみたい」

なんだそりゃ、とのけぞる俺に、彼女は真面目な顔で熱弁する。

「だって考えてもみてよ、複数人から熱烈に求められるんだよ。一度でいいからそんな目にあってみたいじゃない」

心臓が跳ねた。これはいい機会かもしれない。

「その夢、叶えてやろうか」

「まじ?」

「まじ」

心当たりならここにある。まあ、誰と争おうと負ける気はないけどな。

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第60回Twitter300字ss「祝う」 草群 鶏 @emily0420

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