after6  恋人の日

 よしっ! 今日は仕事が早く終わったぁ!

 いつもより早い時間に家に帰ることができるから、普段構えない分子供達とたくさん遊べるなぁ。明日は休みだし!

 疲れて帰った時の子供達の「おかえりパパ」の声はホントに癒し……。

 特に娘な!

 世のお父様達の「嫁にだしたくないっ!」ってのがよくわかる。

 けど、そうもいかないんだろうなぁ。

 とりあえずは、俺みたいな奴はやめとけ。それだけは伝えないとだな。

 フフ……胸が痛い……。


 ってわけで我が家に帰ってきました。

 玄関を開けると飛び込んでくるチビッ子達のことを想像しながら鍵をあけて入ると……。


 あれ? 来ない? それになんか家の中がやけに静かなような?

 いつもなら子供同士のケンカの声とかが絶えないハズなんだけどな?


「ただいまー」


 とりあえず声を出しながらリビングに入ると、そこには俺の嫁達が勢揃いしていた。

 何事!?


「えっと……これは一体? なんかあったのか?」

「お帰りなさい、あなた。ちょっとそこに座ってもらえる?」


 と言うのは雪花。

 逆らっちゃいけないオーラがすごい。


「あ、あぁ。一体どうしたんだ? 子供達は?」

「子供達はみんな弥生さんと奈々ちゃん、ミユさんが見てくれてるよ。前の家でね」


 答えたのは紗雪。子供を産んでから大きくなったのが嬉しいのか、胸元が開いた服をよく着るようになった。外ではやめてね?


「みんなか? あの家じゃ狭くないか? あの人数だぞ?」

「大丈夫じゃない? リビングのテーブルとかソファーどかして好きにさせとくって言ってたし」

「ですね。怪我しないように耐衝撃マットも配送しておきましたし」


 次に口を開いたのは睦月とエレナ。

 睦月は前より大きくなって肩凝りが大変とか言ってたな。逆にエレナはほぼ成長せず、今でもマッサージを続けている。健気……。


「はぁ、なるほどね。で、子供達を預けてまでどうしたんだ?」


 そこで雪花が代表して口を開いた。


「最近あなたも仕事で忙しいし、私達も子育てやパートで中々夫婦の時間取れなかったでしょう? だからたまには……って弥生さんが言ってくれたの。ホントにありがたいわね。そうそう、決してカレンダーを何度も見ながらため息なんてついてないわよ? 今日が恋人の日だなんて全然知らなかったもの。弥生さんに「うちの嫁は中々の猛者ね」なんて言われたけど」


 お、お前はまたこざかしいことを……。

 そして母さんも順応しすぎだろ……。

 にしても今日は恋人の日だったのか。しまった。何も用意してないぞ!?

 ん? てか、夫婦の時間ってまさか……!?


「ふふん♪ ゆう君、今日はすごいの用意してあるから寝かさないよぉ♪」


 すごいのって……ごくっ!


「じゃーん! 今人気のナマモノの林〜! ゲーム機本体も人数分あるんだよ! エレナちゃんが用意してくれたんだっ! これでゆうちゃんも自分の分身つくってみんなで遊ぼー♪」

「取引先でしたから、ちょっと融通してもらっちゃいました♪ もうみんなキャラメイク終わってるので、後は悠聖さんだけです」


 あ、ゲームね。なるほどね。

 そりゃそうか、さすがに昔みたいなノリにはならんよな。ホッとしたような残念なような?

 まぁいいか。


 その後はみんなでゲームをして、合間に夕飯としてピザを頼んだり、お菓子をつまんだり、ジュースを飲んだりして日付が変わる頃まで楽しんだ。

 そしてその楽しさからか、俺は完全に気を抜いていたんだ。でなければこんな事を言うはずがない。


「いやぁ、たまにはこういうのも楽しいな! 恋人の日って言うから、てっきり昔みたいにみんなに迫られるかと思ったよ。ははは。にしてもなんか体が暑いな……」


 ピタッ………。

 俺のその言葉を聞くと四人の動きが止まる。


「ん? みんなどうした?」


 すると四人は顔を見合わせて同時に頷いた。


「そろそろかしらね?」

「そうだね〜」

「やっとかぁ〜。待ちくたびれちゃった」

「まぁまぁ。夜はこれからですからいいじゃないですか」


 な、なんだ? おい、なんだよ……。


「ねぇあなた。ビザはおいしかったかしら? あれ、スタミナスッポンにんにくピザっていうのよ?」

「スッポン!? そんなのあるんだなぁ……。まぁ、うまかったぞ?」

「ねぇゆう君。お菓子はどうだった? あれ、うなぎパイなんだよね♪」

「そうなのか? 袋から出てたからわかんなかったや。……ん?」

「ねぇゆうちゃん。ジュースは?」

「あの、炭酸か? 初めて飲んだけどうまかったなぁ!」

「そっかぁ。あれ、実はエナジードリンクなんだよね」

「エナドリって飲んだことなかったけどあんな味だったんだ……な?」

「ねぇ悠聖さん? 体……熱くないですか?」

「た、確かにだんだんと……。えっと……みなさん? 距離近くないですかね? なんで俺の服に手をかけてるんですかね? ちょ、ちょっと!?」


 四人の目が! 目が獲物を狙う目になってるんですけど! ちょっと待って! もうそんな体力もたない……っ! まさか……そのためのスタミナ飲食物か!

 ゲームですらその布石に過ぎないと!?

 なんてこった……。こいつらを侮りすぎていた……。



「「「「恋人の日は今からが本番よ。旦那様♪」」」」


 あ、はい。がんぱります……。


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【完結】クラスの双子と家族になりました。~俺のタメにハーレム作るとか言ってるんだがどうすればいい?~ 泉田 悠莉 @kujiayuu

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