after5 秘書エレナ
いろいろあった高校を卒業して、俺は今大学2年生。成人を迎えたばかりだ。
そして今の時間なら講義をうけてなきゃいけない時間のはずなんだが、何故か高層ビルの最上階にてひたすら判子をついている。
「……なぁ、これなんて仕事なの?」
「はい? 何がですか?」
「何がって……。言われた通りに判子ついてるだけで、なんの書類なのかわかんないだけど!?」
「それでいいんですよ。中身はワタシが確認してますし、関係各所にはすでに連絡してあるので、後は承認の判子だけあればいいんですよ。わかりました? 橋本社長」
「全然わかりません。一番わからないのはなんで俺が社長なのかがわかりません! ほとんどの業務こなしてるのは秘書のお前じゃんか! エレナ!」
そう、俺の向かいのデスクにスーツ姿で座っているエレナこそ社長にふさわしいじゃん!
俺なんて今の格好ジャージだぜ!?
開発も販売も全部、なぜか秘書のポジションに就いてるエレナの手腕だ。
俺はひたすら判子押すだけ。
名前だけの社長なのだ。
「ワタシじゃダメなんですよ。だって……」
コンコン
その時、隣の部屋からノックの音が聞こえると同時に声が聞こえた。
「ふぇっふえっ……ふえぇーん」
「エレナ様、お子様がお腹すいたみたいです」
そう言って出てきたのは泣いた赤ん坊を抱いたミユさんだった。
「はいはい、ママが今ご飯あげますからね〜。と、いうわけですよ?」
「ぐ……なら仕方ないか……」
うん、仕方がない。
なんてたってミユさんが連れてきたのは俺とエレナの子供なんだもの。子供から母親を離すわけにはいかんしな。
もう、可愛くてしかたがないっ!
「ほらおいで、パパだよ〜!」
「はい、パパはその書類に全部判子ついてからにしましょうねぇ〜♪」
「え……ちょっと待って……これ後何枚あるの? 軽くみても束の厚さが20センチくらいあるんですけど?」
「パパ社長、頑張ってくださいね?」
「そう言われたら頑張るよ。頑張るけどさぁ!
そう言っていつもミルク飲みながら寝ちゃうじゃんかぁ……。普段は大学行ってるし……」
「夜は一緒じゃないですか。まぁ……人数が人気ですけども。我が旦那様ながらホントに頑張りましたねぇ……」
「それは言うな……」
現在、雪花が一人、紗雪が一人、睦月が二人にエレナが一人産んでいる。
まだ二十歳なのに……。これからどうなるんだ?
そんな事を思いながらひたすらに判子を押していると、エレナが寝てしまった子供を抱っこしながら俺の隣にやってきた。
「進捗はどうですか?」
「ん? あと少しだな」
「頑張ってくださいね。 後……」
「なんだ?」
「そろそろミユのことも貰ってくれません?」
ブフッ
は?
今なんて言った?
「え? はい?」
「ですから、ミユのことですよ。ミユも旦那様の事を好ましく思っているのは気付いてますよね?」
「あー、うん。最近アピールが露骨だからなぁ……」
そうなのだ。露骨なのだ。
書類の変わりに結婚情報誌をデスクに「あ、間違えました」っていいながら置いたり、側で読みながら何度もチラ見しながらため息ついたり……。
「旦那様はミユの事お嫌いですか?」
「いや、嫌いじゃないさ。けど、いいのかなぁ? って」
「今更一人や二人増えた所で変わらないのでは?」
「……言うようになったなぁ」
「母は強しですから♪ 」
「なるほどね。ってそれ関係ある?」
「ふふっ、どうでしょうね? あ、そうそう! ワタシ、もう一人出来ましたよ♪」
………はい?
いやね、すげぇ嬉しいんだけどそんなさらっと言うこと? もっとこう……ねぇ?
「だから頑張ってくださいね?」
あ……はい。
──あとがきみたいなもの
番外編なので、時系列はバラバラになっています。
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後、私の他作品のほうも良ければ読んでみてくださいませ。
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