after4 体育祭

 ウチの学校では六月に体育祭が行われる。

 俺は運動も得意ではないため、実に憂鬱だ。

 去年はオタ友と一緒に卓球を選んでは、ピンポンピンポン適当にやって負けて、残りの時間はアニメ談義で時間を潰していたのだが今年は……。


「がんばって」

「ゆうく〜〜ん! がんばってぇ〜!」

「がんばってくださいね」

「おにぃ!!」


 これだ。綺麗所が四人も集まって俺に声援を送るもんだから、嫌でも注目が集まる集まる。

 ちなみに睦月だからそこには混ざれず、端の方からジッと見つめてくる。お前のどこの姉さんだよ……。

 それに今年は、じゃんけんで負けた為に卓球に参加できずにバスケになった。解せぬ……。

 更には、観客席から声援を飛ばす四人と俺を交互に見ては首をかしげる人が後を立たない。そんなに見ないで。穴あいちゃうから。

 なのでなるべく目立たないようにコートの中をウロウロしているつもりだったのだが……


「橋本! ほらパスだ! そしてミスれ! 幻滅されろこのやろう!」

「お前なんだその言い方!」

「うるせぇ! 負けたくないけどお前は負けろ!」

「チームプレイどこいったぁ!!」


 と、仲間からはなぜかやたらとボールが回ってくる。


「打って!」

「ゆうくんシュートシュート!」

「悠聖さん! 今ですっ!」

「おにぃぃぃぃぃぃ!」


 無茶をいうな! まだセンターラインだぞ! 後、奈々の語彙力どこいったぁ!?

 ほら、もう目の前に相手チームのやたらデカイ奴がきたし。たしか隣のクラスのやつか。面識ないから名前は知らんが。


「なぁ橋本よ、あの四人はなんだ?」

「彼女と家族と同級生だ」


 うん、嘘は言っていない。


「どの子が彼女だ?」

「……」


 ノーコメントで


「よし、お前は潰すっ!」

「いきなりか! お前の名前も知らんのに!」

「お前は知らなくてもこっちは知っているんだ! このハーレム野郎が!」

「それは誤……」


 誤解だぁ! と続けようとしたけどそれはやめた。裏切ることになるからな。変わりに真剣に相手を見る。


「否定しろやゴラァァァァ!」


 あぁっ! 突っ込んできやがった! やっぱりマンガみたいに目ではわかりあえないっ!

 しかもちょっと涙目!? 嘘だろ?

 パス出さないと……って誰もこっちを見てないし! 四面楚歌ってこういう時に使うんだろうなぁ……。とか思いながらドリブルで抜こうとするけど、それも叶わず真正面からぶつかってしまい俺は後ろに吹っ飛んでしまった。ついでに後頭部も軽くコツンと。いでぇ!

 相手のファールだったけど、たいしたことは無いからそのまま起き上がって再開しようとしたところで聞き覚えのある声が体育館に響いた。


「待ってください。彼は今後頭部をぶつけましたよね。少し休みましょう。選手交代です! わたしは担任ですから監督です!」


 なんか睦月が変な事を言い始めた。


「いや、睦……先生、俺は大丈夫ですよ?」

「だめです。少し横になってやすみましょう。替わりの選手はすぐに入って試合を再開してください。ほらゆ……橋本君はこっちに」


 そのまま強引に隅に連れてかれた俺は横に寝かされた。

 睦月の膝枕で。起きようとしても頭を押さえつけられて起きれない。

 ……なんで?


「むふっ……ゆうちゃんを膝枕♪ 職業柄表だって応援できないから役得役得♪」

「おい、心の声漏れてんぞ」

「大丈夫。ちゃんと小声だよん」


 大丈夫じゃないんだよ。周りに見ろよ。声は聞こえてなくてもそんなニコニコしてたらさぁ!

 あぁぁぁ、視線が痛い……。睦月のファンは男女共に多いからなおさら痛いぃぃ!


 来年の体育祭は休もうかなぁ……。

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