ルームシェア シンクロハート
香枝ゆき
全ては÷2になるはずだから
私たちはよく似ていた。
外見もそうだし、性格も似ていた。
であるなら、私がメンタルを病んで仕事を休むなら、同じような思考の彼女だって遅かれ早かれそうなるだろう。職場が違っても。
「休職しても休めないんだよね」
そんなメッセージがとどいたのはある冬の日のことだった。
太陽が昇らないうちから出勤して、寒さが厳しくなってから帰る。
着信はずいぶん前だった。
「家のこと?」
美憂の家は、複雑だった。
私のように、仕事を数か月休んでも、家でただ寝るだけということはできなかった。
「逆に、いろいろと考えてしまう」
不安定さは、文字だけでも伝わってきた。
だから私は、すぐに提案したのだ。
シェアハウスはどうか、と。
結論からいう。
美憂の精神は落ち着いた。
私の負担も、通勤距離が短くなった分楽になった。
楽しいことは分け合った。
美味しいものも、もちろん半分ずつ。
そして、辛いことは、二乗になった。
私たちは、共感しすぎてしまう。
入り込みすぎてしまうのだ、相手の苦しみに。
だから、美憂の苦しみは同じように私にも。
私のつらさも美憂にも伝播してしまう。
そうして私たちは死ぬことにした。
目張りをして、練炭を買ってきた。
「一緒だよ」
そして私たちは手を握る。
ため込んでいた睡眠薬の、空になったシートが大量に床に散らばっている。
「おやすみなさい」
私たちは、よく似ていた。
どちらかがどちらかを止めることはできなかった。
最初から、同じ方向に進む同志だった。
ルームシェア シンクロハート 香枝ゆき @yukan-yuki
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