第2話恐怖
女性版の方が背が高いとか、男らしいとか……軽く心が折れかける言葉をもろにくらってしまった訳だが……帰ろうかな。
「ん?どうした?」
「すみません。もう良いですか?」
「あ、あぁ」
許可を取り、男との話を終わらせてから武具店に移動し、適当に軽めの防具一式と大鎌を買ってから適当に時間を潰し……時間的に問題なくなったタイミングで施設に帰ってふて寝した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「幸久〜!学校行こうぜ!」
日付は変わって月曜日。
土曜日は男のままギルド登録に行った為阻止され、昨日女体化して初めて念願かなった訳だが……16歳になったのだし、ギルド登録ぐらいは認めて欲しい物である。
まあ、出来たのだから良いとして……実は、施設にいる子供はそこまで多くない。
俺が孤児になる4年前に、この都市ではある大きな政策が発表された。それは、ギルドで一定異常の資格を持たない者が都市の外に出る事を禁止するというもの。
それまでは、ギルドに登録さえしていれば自由に外に出る事を認められていたのだが、下級探索者達の死亡率の高さ、その後先の考えなさなど様々な要因で禁止されたのだ。
俺が孤児になった理由は年に一回行われるお祭りに起きた不慮の事故が原因だが……それもその事故が原因で廃止された。
だから、同年代で孤児の人は一人もおらず、それが俺が可愛がられるのを加速させたのだろう。
「幸久〜!?」
先程から聞こえてくるこの声だって……ん?
「開けるぞ」
「え、お……」
「なんだ起きてるじゃん返事ぐらいしろよ」
部屋の主である俺に許可を取ることすら無く開けられた扉。後少しでギルド証を眺めながらニヤニヤしていた事がバレる所だった。
「お前、許可取ってから開けろよ」
「お姉さん達からは許可を取ったぞ?」
「嘘だな。晴姉達が許すわけがないし、もうこの時間はいない筈だ」
茶色い短髪を掻きながら入ってきた男。笑っているし、姉達から許可を取ったなどどうせホラだろう。
「まあ、良いから学校行こうぜ」
「……答えろよ」
「あははは。よし、準備は……」
「【空間庫】内だから大丈夫」
「良いよな〜……」
「はっ」
「鼻で笑ってんじゃねえよ」
【空間庫】。金額にすると億へ届く価値を持つスキル。何故俺がそんなスキルを持っているかと言うと……貢がれた。その下位スキルである【収納庫】であれば、スキルスクロールもある程度は落ちるので結構の人数が持っているが、【空間庫】は格が違う。
仕舞える量の違いは当たり前。最大の違いは、
時間が止まるかどうか。
何のスキルスクロールか知らずに使わされ、俺が【空間庫】を取得した後に価値を教えられた時は、ただ単純に怖かった。
それからだ。明確に姫プレイに対して恐怖を覚え始めたのは。多分、俺に害が有るものは渡されないだろうけれども、そんな物を俺が受け取る事への恐怖、遺憾では有るが、彼女達の理想である俺から外れてしまった時に受けるであろう反応に対する恐怖。
様々な理由から、俺は存在が黒歴史になろうとも独り立ちがしたかった。
「ん、どうした幸久」
「いや、何でも無いよ
「そうか?んじゃ、行こーぜ」
「ああ」
俺が持っているスキル郡を見ると、色々と背景が見えてくるだろう。自前で取ったスキルの中には【演技】やら【感情制御】やら色々と有るし、渡されたスクロールで取得したスキルは基本的に【逃走】【敵意感知】など、俺が危害が加えられることが無い様に考えられている。
……ただ、怖い。
「どうしたよ幸久?あれか?ギルド登録を止められたのをまだ気にしてんのか?」
「いや、それはもう良いよ……。いや、良くないけれども、まあ何となくは察してたから」
「……あれだ、俺、幸久と一緒に潜ったりしたかったんだけどなー」
「それは、どっちにしろ無理だったと思うよ」
「まあなー……まあ、朝っぱらからそんな暗くなるなって!もしかしたら頼み込めば登録させて貰えるかもしれないだろ!?」
「そうだね!そうするよ」
……魔力登録をもうしてしまっているから無理だろうけれども。まあ、後はレベルを上げて基礎値を上げ、最悪の場合に備えるだけだ。土日を上手く使ってレベルを上げられるだけ上げておこう。
お姫様の逃避行 遊び人 @asobibito
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