エルムVS緑の魔道具士ハンス3

 隊列の二列目には火が効かなかった。

 それならば、火以外を放てばいいだけだ。


「詠唱破棄――極大氷魔法〝氷獄コキュートス〟!」


 放たれた氷の柱は一直線に突き進み、触れたゴーレムを粉砕しながら二列目、三列目まで到達した。

 四列目で弾かれる。


『そのくらいじゃハンスのゴーレム軍団は――』

「詠唱破棄――極大土魔法〝辺獄リンボ〟!」

『倒せな――』

「詠唱破棄――極大水魔法〝流獄アケロン〟!」


 エルムは次々と極大魔法を放っていく。

 一瞬の間もなく、それは一繋ぎの奔流のようにも見える。


『ま、まさか三連続で違う属性の極大魔法を使うなんて!?』

「詠唱破棄――極大雷魔法〝至獄エンピレオ〟!」

『続けて四連続!?』

「詠唱破棄――極大光魔法〝天獄パラディーゾ〟!」

『あ、ありえない……』

「詠唱破棄――極大闇魔法〝魔獄ルチフェロ〟!」


 聞こえてくるブレイスの声は震えていた。

 多種多様、極彩色の魔法に蹂躙されていく千を超えるゴーレム軍団を見れば当然だろう。


『六属性の極大魔法を連続で!?』

「どうってことはない。舌を噛みそうで焦ったくらいだ」


 後に残ったのは土に戻ったゴーレム軍団と、両手を上げて降参のポーズをしているハンスの幻影だけだ。


「ふぅ、六百年前だったら絶対に勝てなかったよ」


 それを聞いたハンスの幻影は笑った気がした。

 たぶん――六百年分の経験があれば、僕だって良い勝負をしたはずだぞ――とでも言いたげだ。

 ハンスの幻影はゆっくりと歩いてきて、右手を高く上げてきた。

 エルムも同じようにする。


「ありがとう、ハンス」


 ハイタッチをすると、ハンスの幻影は静かに消えた。




――――――

あとがき


新連載を始めました!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~ タック @tak

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ