最終話




「カナタ! 」


「うおっと! リーゼ……」


俺が氷像となったあとに砕け散ったダークエルフだったモノの前で立ちすくんでいると、後ろからリーゼが凄い勢いで抱きついてきた。

俺は前につんのめりそうになりながらもそれを受け止め、首だけ後ろに向けて背に顔を埋めるリーゼを見た。


「カナタ! カナタ! 良かった……生きてた……良かった……うっ……ううっ……」


「リーゼ……今まで黙っていてごめん。俺さ、音痴なのに歌魔法士で……恥ずかしくて言えなかったんだ。あと歌魔法士が歌っている時に俺だけ動けるのも……これってこの世界じゃかなりやばいだろ? 世界中から命を狙われると思って言えなかったんだ」


「魔法が発動したこともその威力も、そして攻撃できたこともびっくりしたけどそんなこといいの! 音痴でも動けてもいいの! カナタが死んじゃうんじゃないかって……私が歌えなかったから……いえ、歌っても多分負けてた……だからカナタを失うんじゃないかって怖かったの……ううっ……」


よかった……歌のことやチートのことよりも俺のことを心配してくれてたみたいだ。

何気に魔法が発動したことにびっくりしたって言葉には胸がチクリと痛んだけど……


「死なないよ。俺はリーゼのガーディアンだから……リーゼが大好きだから」


俺は腹部に回されるリーゼの手を緩め、振り向き涙で濡れるリーゼの目を見つめながらそう言った。


「カナタ……私もカナタが好き……きっと一目惚れだったのかもしれないわ。初めて会ってからずっと、毎日カナタと一緒にいて毎日ドキドキしてたの」


「俺も初めて会った時にリーゼに一目惚れしたんだ。リーゼの美しい姿と声、そして優しさにね。俺の恋人になってくれないか? 一生リーゼを守るし、リーゼのためならなんだってする」


「うん。両思いなんだもの、恋人になるのは当たり前よ。この泉でカナタが告白してくれなかったら、私がするつもりだったし。でも嬉しい……ずっと守ってね」


「ああ守るよ。恋人として、そしてガーディアンとしてずっと」


やった! 彼女ゲットだ!リーゼも告白しようとしてくれたなんて、この世界は物騒で嫌な思いをたくさんしたけどこれだけで楽園に思えてきた!


「ふふふ、そういえば今なんでもするって言ったわよね? いつかまたカナタの歌を聞かせて欲しいわ」


「うえっ!? そ、それはちょっと……聞いてただろ? 勘弁してくれよ〜」


「あははは! ちゃんと魔法が発動したんだからいいのよ! なんで27点で発動したのかはわからないけど、勝てたならいいじゃない」


「ほんとそれは俺も不思議だよ……歌わなくてもよくね? って思うよ」


「ふふふ、歌わないとダメよ。ここは歌が魔法になる世界なんだから」


俺から離れ、両手を後ろに組んで笑いながらそう言うリーゼはとても可愛くて。

俺は誘蛾灯に誘われるようにリーゼを抱き寄せそしてキスをした。


「あっ……んっ……カナタ……」


「……さっきは初めてのキスだったけどリーゼの唇を堪能できなかったからさ」


「もうっ! 堪能とか言わないでよ、恥ずかしいわ……私も初めてだったんだから……」


「あはは、それじゃあ帰ってから2度目のキスもしたいかな」


「そう言うことは口に出さないの! えっち! 」


「あははは、悪い悪い。じゃあ帰ろうか」


「もうっ! デリカシーがないわよカナタ。でも……今は凄く幸せな気分だから許してあげる。私たち公私ともに世界最強のペアになれるわね」


「ああ、俺とリーゼが組めば無敵だ」


リーゼが歌い俺が敵の邪魔をする。負ける道理がない。

ただ、今回みたいなことにならないようもっと警戒が必要だ。


それでも……それでも何があろうとも俺はリーゼを守る。

たとえまた歌うことになっても。


俺はリーゼと手を繋ぎながら森を出て、ホテルまで待ちきれず車の中で何度もキスをしながら帰るのだった。



そしてそれから1年後。


俺とリーゼのパーティは魔法士キラーと呼ばれ、世界中から恐れられる存在となった。


でもこれは別の話。


今は俺の脱童貞物語の完結が先だ。


みんなもそう思うだろ?





『 神奏歌魔法世界ミローディア』 完




************


作者より。


短いお話でしたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

最初の設定に無理があり、一旦終わらせることにしました。


非常に悔しい思いでいっぱいです。この物語はもっと力を付けた時に、いずれ書き直したいと思います。


お付き合いいただきありがとうございますした。






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神奏歌魔法世界ミローディア ~音痴の俺が音楽が魔法になる世界で無双する~ 黒江 ロフスキー @shiba-no-sakura

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