第47話 打合せは牢獄で

 エルフの里、セオドアのいるろうの中に着いた。


「リュウ君か。一応、ここは牢屋ろうやなんだけどね」

「どうせ、あんたとも話すことになるんだったら、このほうがいいだろう」


 セオドアは突然現れた俺に驚くことなく迎えてくれた。

 フィンから話が伝わっているのかもしれない。


「中に入ってくれと頼んだ覚えはないが」


 フィンが姿を見せた。


「事情を知らない者に見られたらマズいかもな。では、例の者を呼び出す」


 コムスを呼び出した。

 問題が起きないように、気絶させてある。

 闇の中で制止している彼の後頭部に対して、物理的に打撃を打ち込んでおいたのだ。


「ちゃんと気絶させてあるあたり、そなた、気が利くな」

「安全策だ。もし、一向に目が覚めなければ、治療してやってくれ。こういった加減は苦手なんだ」


「私の魔法も安く見られたものだな」

「そんなことはない」


「リュウ君、この者について知っていることを教えてくれるかい」


 相変わらずろうに入れられている罪人とは思えない立ち位置である。


「例のゾンビの件で、引き渡しに向かった屋敷の執事だ。名はコムスだ」

「長老が助けてやったのも、運命だったのかもしれないね」


「そうだな。こいつは、おそらく闇魔法と思われる魔法で俺を攻撃してきたんだ」

「どうしてそんなことしたんだろうか?」


「まさか聖魔法を知っていて食いつく者がいるとは思わず、あの復活の魔法の光ごと空間に格納し、その状態のまま放出して見せたから……かな」


 この里やエルフの秘密につながることを少しばかり漏らしてしまっていたかもしれない。


「まさかそのようなことになっているとは」

「こいつが『光が闇を滅ぼそうとしているように、その逆もまた然り』みたいなこと話してたが、エサをまいておびき出すほうが手っ取り早いんじゃないか?」


「長老、私もリュウ君の言う通りだと思いますよ。多少のリスクは覚悟しなければ」

「それはわかっている。だが、私には責任があるのだ」


「わるかった。ここの秘密は守る約束だったからな。じゃあ、後の尋問は二人ふたりに任せるよ」

「いやいや、そなたには感謝している。こちらから共有したいことがあればまた知らせることにしよう」


「わかった。それじゃあ、またそのうち」


 エルフの里を後にした。




 レインハウスに戻った。


「待たせた」

「いや、そうでもない」


「そういえば、五万ドルの報酬のうち、いくら渡せば喜んでくれるんだ?」

「覚えていたのか。あれは冗談だ」


「金のことで冗談を言うのは禁止な」

「それそれ。お前なら好き勝手やっていてもいずれ金持ちにはなるだろうから、そのお金キャラは控え目にしておいたほうがいいぞ」


「報酬を分けてもいいと言ったが、それでもダメか?」

「いや、なんて言うか……。この話はまた今度だ。これからもう一仕事あるんだからな」


「大した仕事じゃないだろ」

「たしかに引き渡すだけだが、相手は国だからな」


「俺も楽しみではある」

「それじゃ行こうか」


 レインハウス、ギルド本部を後にして、レインと王宮を目指した。

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ブラックホール男の絶対無双 聖光統亭 @seikoutoutei

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