20cm。

@kotomiuru

20cm。

やった!第1志望校に受かった!やっと僕も“華の高校生デビュー”だ!勉強も部活も頑張って彼女も作って……ウフフ

-----------なはずだった。





入学してから約1週間、やっと健康診断も終わり平常授業になったことで周りの人と話す機会が増えていった。特に前の席の眼鏡君とよく話すようになった。歴史好きの眼鏡君は現社の時間になるとおやつにケーキを出された時の子どものように目を輝かせる。よくよく話を聞いてみると眼鏡君はアニメヲタクみたいで僕とウマが合う。良い奴と知り合ったもんだな。


4月も半ば過ぎた頃、みんな学校に慣れ始め授業中赤べこが増え始める頃、何を思ったか突然眼鏡君の口から卑猥な言葉が蛇口をひねったようにつらつらと出てきた。まあ、僕も男だからとてもその話が楽しかったんだけどね!?試しに彼の電子辞書の検索履歴を見たら最後、そういう言葉しか無かった。とんでもない奴と知り合ったもんだな。僕は全開に開いた窓から空を見上げた。快晴だった。


授業が終わり、休み時間になる度、僕と眼鏡君は駄弁っていた。時には音楽ゲームのキャラクターの話、時にはアニメの話……まあ彼の口からは下の種の話しか出てこないけどな。



勉強は……ぼちぼち、部活も……まあ、ぼちぼち頑張っている。でも肝心の彼女が(以下略)。謎にバラされた元カノのことでいじられるばかり。もうおかしくなりそうだ。




そんなある日、次の授業の道具を取りにロッカーへ向かったら眼鏡君がこっちに向かってきた。彼も道具を取りに来たのだろう。みんなリュックを机の脇に掛けているせいか、眼鏡君が誰かのリュックに躓いた。その反動で眼鏡君が僕に向かって倒れてきた。そう、押し倒されたのだ。周りにクラスメイトがいたにも関わらず僕らは目が合い、固まってしまった。まるで僕と眼鏡君だけ時間が止まったかのように。






それから数日眼鏡君に押し倒された事実が、あの時感じた背徳感が頭から離れなくなり、彼の目を見れなくなった。僕を押し倒した時の彼はとても真っ直ぐな瞳をしていて慌てる様子もなく僕の目をじっと見ていた。その彼の目が脳裏にこびりついてしまい尚更彼のことを見れなくなってしまった。


授業の間の休み時間も絡まなくなった。絡めなくなった、とでも言った方がいいのかな。頭に過ぎる彼の真っ直ぐな瞳……授業すら頭に入ってこないくらいだ。

『・・・・・・君?』

考え事をしていたから半分くらい聞こえなかったが確かに誰かが僕を呼んだ。ふと顔を上げるとそこにはあの眼鏡君がいた。

『最近休み時間絡んでくれないじゃんどうしたの』

「あぁ……いろいろとあってさ。ま、まあ深い意味は無いんだ」

『深い意味は無い?じゃあ……』


ドンッ


「えっ……?」


いつの間にか眼鏡君の手が僕の頭の傍にあった。要するに壁ドンされたのだ。


『深い意味は無いなら俺と話してくれてもいいじゃん』


彼は僕を見つめる。彼はやっぱり真っ直ぐな瞳をしていた。


「お、おう……」


僕はこのくらいしか言えなかった。


家に帰る道中、空が赤く染って綺麗だった。




そんなこんなでまた休み時間に眼鏡君と僕は駄弁るようになった。まあ内容としてはこれまで通りだと思っていた。


『今期はあのアニメがいいよね、あのアニメ神だと思うんだ。あ、そういえば……』

「そういえばって?」

『お前最近何かあった?』

「いや、特に何も無いけど……どうしたん?」

『うん、まあ、最近お前可愛くなった気がして。クラスの誰かにでも恋したのかなーって思って。』

「……」


何も言えなかった。なんでだろう……ふと先日のあの出来事が頭に過った。

いやまさか、で、でも……


僕の頭の上でひよこがぴよぴよ飛んでいた。



**


不慮の事故(?)であのチビを押し倒してから数日、あいつから話しかけられることが無くなった。正直あの休み時間のあいつとの絡みが一日の楽しみだったからなぁ……1回俺があいつに話しかけてからしばらく一緒に駄弁ってくれたのに、最近やけにあいつの態度が冷たい。


「おはよう」

『……うん』


「テストどうだったよ」

『まあぼちぼちだよ、うん。』


……なんでこんなに素っ気ない態度であしらわれるんだよ!話しかけてくれないから俺が話しかけてるのに……俺の一日の楽しみが失われていく……


孤独が俺に唐突に襲いかかってきた。


俺は諦めない、むしろ燃えてきた。授業が終わる度俺はあいつに話しかける。

やっぱり素っ気ない態度であしらわれる。

その素っ気なさが可愛く感じてきてしまった。俺は末期なんだろう。


俺はこれでもかと言うくらい休み時間あのチビに話しかけた。相変わらずあしらわれる。ここまできたらいくら俺でも流石に我慢の限界ってものが来るぞ……?


**


僕が家でゴロゴロしていると、


ピンポ-ン


誰だ?と思いながらドアを開けるとそこには眼鏡君がいた。


「どうしたの?」


『お前に話があって来たんだ』


「そっか……ま、ここじゃなんだし家に入りなよ、今日親いないし。」


家の中に眼鏡君を入れ、部屋に通す。

そして僕はお菓子やジュースをを眼鏡君に出す。眼鏡君は目を輝かせる。現社の時みたいだな。



「あ、そうだ話ってなんなの、」

『……』

「わざわざ僕の家まで来て話があるってなんなんだよ。」

『俺な、・・・・・・なんだ。』


よく聞こえなかったが眼鏡君の顔が赤い。


「ごめん、聞こえなかったもう1回言ってくれ。」

『俺な……、』


僕は息を飲んだ。


『『お前のことが好きなんだ。』』


「えっ……?」

『3度も言わせるなもう言わないぞ。』

「確認だけどそれ、友達としてとかそんな感じだよな……?僕男だよ?」

『そ、そうだよ。でもお前が素っ気ない態度をしてきた時本当に悲しかったし、寂しかった。』

「あ……そうだよなホントごめん。」


眼鏡君の表情があまりにも悲しそうだったから思わず謝ってしまった。しかしこれは本心だ。


『なんで謝るんだよ、そういう態度で接してきたのはお前の方だろう?』

「いや、お前がそんな悲しそうな顔するからだよ……。」

『俺はな、入学した時からお前と話すようになって本当に楽しかったんだ。こいつとは長いなと思ったんだよ。』


僕は黙って聞く。


『本当に俺はお前のことが好きなんだよ。』


3回目言ったじゃんとは思ったけどツッこまずに聞き続ける。でも、こいつは本気なんだなぁって思う。


『だから……本当に、本当に辛かったんだこの数日……。』


眼鏡君の声が詰まる。


「そんな思いしてたんだな……ほんとごめん。」


僕はひたすら謝り続ける。


眼鏡君は僕に真剣な眼差しで話す。


『こんな寂しい思いさせたんだ、お前には責任取ってもらう……ぞっ。』


僕の肩を掴んで言おうとしたのだろう、彼はガタイがよく、肩を掴もうとした彼の手に力が入りすぎて僕は彼を支え切れず後ろに倒れる。僕は既視感を覚えた。


『あ……この前みたいだな、また俺が上かよww』

「懐かしいなww」


『……それにしてもホントお前可愛いな』


眼鏡君がじっと僕を見つめる。相変わらずの真っ直ぐな瞳に気圧されてしまう。


『そんな可愛い顔して俺の事見てると襲っちゃうぞ?』


にやにやしながら僕を見ながら言う。なんでだろう、嫌な気がしない。だから僕は眼鏡君を見つめ続ける。あいつの真っ直ぐな瞳は綺麗で見ていて飽きないからな。


『……嫌なら嫌って言わないと本当に襲っちゃうぞ?』


「……嫌じゃない」


『こうやって押し倒してると本当に襲いたくなるな』


「……嫌じゃない」


『じゃあ……』


**


正直、家に突撃するのも気が引けて、でもあの現状から脱却したくて。俺の中ですごく葛藤していたのだ。


でも、今俺が起こした行動は、こうやってあいつに直接会いに行ったことは後悔していない。むしろ良かったと思っている。



本当に可愛い顔してるなあいつ……押し倒しちゃったしずっとあいつの顔見てるとなんか発情してくる……男なのに……なんでだ……



「……嫌って言わないと本当に襲っちゃうぞ?」


『……嫌じゃない。』


「こうやって押し倒してると本当に襲いたくなるな。」


『……嫌じゃない。』



2回言われたこの言葉に俺は救われた。もう、天邪鬼な奴め、本当に可愛いんだから、、、



……



俺は思わずキスをしてしまった。



『っん……』


「あ……ごめん、思わず……い、嫌だった?」


『……嫌じゃない。』


「おまえ、ほんとそれしか言わないな。」


『だって嫌じゃないんだもん。』


「ほんと可愛いなぁ。」


『可愛くはないもん。』


「お前がそんな可愛い顔してなかったらキスなんてしてない。」


『む……』



心なしかあいつの顔が赤くなってるように見えた。


俺はもう一度唇を重ねた。そして彼の少しばかりきつくなったボトムスに触れる。



**


僕はあいつにキスをされた。しかも2回も。おまけに不意打ちで下半身を触られた。もうおかしくなりそうだ。


「んっ……」


『あれれ?感じてるのかなぁ?』


僕は彼の煽りに反応することが出来なかった。思わず目を逸らした。


不意を打たれたことで漏れてしまった声が恥ずかしく、顔を赤らめ、眼鏡君から目を逸らした。


『その声もっと聞かせて』


耳元で囁かれ、なんと耳に息を吹きかけられた。


「ひゃああっ……!」


ゾクゾクとした快感が背筋を駆け抜ける。あいつはさらに愛撫を続け、僕を悦楽の海に溺れさせた。


『お前、もう我慢できないだろ。』


「んっ……そんなこと……ないもん。」


『嘘つけ、こんなんなってるのに我慢出来るわけないだろう?』


眼鏡君はもう一度僕のスラックスに触れる。


「ひゃあ……っ!」


『ほらあ、ココがこんなに反応しちゃってるんだもん……な?』


「む……。」


『でもな、我慢が出来ないのはお前だけじゃないんだよ。』


僕は眼鏡君をじっと見つめる。


『またそうやって可愛い顔して俺を見つめよって……ずるい奴め。もう我慢の限界だ。』


『ほら、お前もスラックスがきつくなってるだろ?楽にしてあげる』


眼鏡君は僕のスラックスのファスナーを開け始める。前に押し倒された時とは比べ物にならないくらいの背徳感を感じた。


その後あいつはまたさらに愛撫を続け、僕は絶頂に達した。


「ん……」


僕は呟いてやつを視界から外した。


『何恥ずかしがってんだよ、お前の親今いないんだろ?』


「あっ……んむぅ……」

そう言えばそうだった。そう言ってしまったのだ。


『お前だけイってずるいぞ、俺も満足させろ』


そういうとやつは徐に自分のスラックスのファスナーを外しあられもない姿となる。



「い、痛くしないでね……?」


**


俺はチビの前で脱いだ。こんなことを俺がこいつにするなんて思っていなかった。


『い、痛くしないでね……?』


ましてやこんなことをこいつの口から出てくると思っていなかった。いっそ拒否されて家を追い出されると思っていた。


「そんなこと言われちゃぁ、おれ……」


『……ん?』


チビは目だけで俺を見上げる。どうやら心の声が出てしまったようだ。

なんでこいつは俺の気をそそるようなことしか言ってこないんだ……




いつの間にか俺とチビはひとつになっていた。




『あっ……んっ……』


チビの声とくちゅくちゅとした音だけが部屋に響く。

ほんと可愛く鳴くな、こいつ。

そんな可愛く鳴かれたらどんどん激しくしちゃうよ……


『あっあっっんっっっ……あぁっ……』


俺の腰の動きと共にチビの声も激しくなって言った。


『んっ……あっ……そんなことされちゃ僕変になっちゃうよぉ……』


「いいんだよ、変になって。」


『ふぁぁっ……んぁっ……また……また出ちゃうよ……』


幸せそうな顔で俺を見つめてくる。今までのあの冷たい態度なんて嘘だったかのような暖かい可愛い顔だ。


あまりにも幸せそうな顔をしているから俺はさらにいじめたくなる。




**



僕はあいつと今ひとつになっている。


全てはあいつが僕を押し倒したのが始まりだったのだ。それがあいつに心を寄せるきっかけとなり、話しかけることが出来なくなり、挙句の果てに僕の家にまで来てこんな状態になっている。


別に嫌という訳では無いし、今となっては全てにおいて後悔はしていない。



あいつの腰の動きは僕の声とともにどんどん激しくなる、僕が変になりそうなのも気にせずに。



「んっ……ふぁぁっ……あっっ……!」


『ほんと可愛いな、お前、、、んっ……!』






僕と眼鏡君は一緒にクライマックスを迎えた。






「今日ずっと親いないし、いっそ泊まってく?お風呂とか入りたいでしょ?」



『えっいいの?あ、第2ラウンド期待してる???』



「ちーがーうー!!!」



『そうやって言ってまんざらでもないんだろ〜?』


「むぅ……」


『ま、とりあえずお風呂入らせてもらうね』



僕はあいつを風呂場まで案内したあと部屋に戻った。

さっきまで起きていた夢みたいな出来事を思い出す。そして、今までのことも思い出す。

正直今まであいつに話しかけにいけなかった時期が1番もどかしかった。家まで押しかけてくれたあいつの勇気と根性を称えたいよ。



風呂場の方向を見てぼそっと言う。


「ありがとうな、あと……」








「僕も好きだよ」






『なんか俺が風呂入ってる時俺に向かってなんか言ってたよな?好きだかなんだか』


「そそそそそそそ、そんなこと言うわけないじゃん??!!」


『そう言ってぇ〜やっぱり第2ラウンドいっちゃう???』


「むぅ……」


『嫌なら嫌って言えよ?』


「……嫌じゃない。」




また僕らは夢のような時間を過ごすのだった。


〜fin〜

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