クリスマスの焼き芋

増田朋美

クリスマスの焼き芋

クリスマスの焼き芋

どこの世界でもクリスマスというものは、ケーキをやいたり、ごちそうを作ったりして、みんなでお祝いするのが通例である。日本だけではなく、ヨーロッパでも、アメリカでも。

今年のクリスマスは、モーム家には、異例なお客さんがやって来ていて、今までのクリスマスとはちょっと違っていた。今日は、そういえば明日はクリスマスだぞ、と伝えにやってきたチボーは、玄関前でちょっと止まる。というのは中からこういう言葉が聞こえてきたからである。

「おい、食べろ。」

杉ちゃんこと、影山杉三が、客用寝室でねている磯野水穂にご飯を食べさせようとしていた。それを、モーム家の1人であるトラーがため息をついて見ているのだった。

「おい、食べろと言ったら食べろ。」

杉三は、水穂の口許に匙を差し出した。水穂は匙の中身を飲み込んでくれるのだが、どうしても体が受け付けないのか、数分で咳き込んで吐いてしまうのだった。

「あーあ、まただめか。こりゃ、お粥に何を入れた?」

「何もいれていないわよ。ただ、チキンブイヨンで味付けしたわ。」

杉三がきくと、トラーはそう答える。

「だからチキンはまずいよ。そうじゃなくて、味噌とかそういうものはないかと思うんだけど、そうか、ここは、日本じゃないから、味噌らしいものはないのか。」

「杉ちゃんごめんなさい。そば粉もクリスマス前で売り切れなのよ。ほら、いつもと違ったケーキ作りたくなる人が多いから。」

まあ、確かに日本では、まだケーキは特別な日に作ることが多いのだが、こちらパリではそうではなかった。ケーキは、おやつとして当たり前のように食べられている。だからこういう日になると、変わったケーキを作りたくなる人が多くなる。

「粉屋さんにいってみたけど、売り切れでなかったわ。ほんとに、ごめんなさい。」

トラーがそういうと同時に、ベッドに寝ていた水穂が、激しく咳き込んだ。また、枕に敷いたタオルが赤く染まった。

「バカだなあお前さんは。しかし、たまげたよ。チキンブイヨンでそんなに当たるとはな。他の食品、どうするんだよ。」

杉三は、そう言いながら、水穂さんの背中をさすった。

「杉ちゃんこれ、鎮血の薬。」

トラーが杉三にティーポットを渡した。モーム家には、吸い飲みがなかったから、代わりによくにた形の、ティーポットで薬を飲ませていた。杉三が、ほらよ、といって、水穂の口許に吸い飲みを近づけると、彼は吸い付くように中身を飲んだ。しばらく肩で息をしていたが、薬の効き目は早く、数分後、そのまま静かに眠ってしまうのだった。

「うまく行ってよかったわ。タオルは取り替えればそれでいいわ。」

トラーはこういうとき、文句を言わないのがよいところだった。

「しかしなあ。」

杉三は、枕に敷いたタオルをはずしながらいう。

「これで何日、ご飯を食べなかったら気がすむんだろうか。もう、勘弁してくれよ。」

「そうね。3日以上まともに食べてないわ。水穂、体が段々細くなってきてる。私、わかるわよ。こう見えても細かいところが気になるから。」

西洋人は小さいことは気にしないことが多いと言われるなか、珍しい性格だった。

「たべるまえに、当たらない食品を探すのが大変だよ。こっちでは。沢庵もないし、漬け物はつくれないし、そば粉は、売り切れだし、、、。」

杉三は、あーあ、とため息を付いた。

「まあいい。そんなことをいっても始まらない。頑張ってこっちのお米になれてもらおう。」

こちらでも、米というものはあるが、日本の米のような、粘っこい米ではなかった。それに、こちらでは米は主食ではないから、あまり大量に販売されていない。

「そうね。毎日毎日、食べ物で具合が悪くなって、なんだか申し訳ない位だわね。」

トラーは、なんだかごめんなさいというようにいった。

「まあ、慣れてもらうしかないよ。そば粉が手に入ったら、一杯買い込んでさ、それでしのいでもらおうぜ。よし、眠っている間に着物を変えちゃおう。さっきので、襟元、汚しちゃったからさ。」

切り替えが速いのも杉ちゃんならではだ。そういうところ、絶対に真似のできないことである。

「ちょっと、おとらちゃんよ、手伝ってくれるか?幸い、長襦袢は汚してないようだから。」

いくら暖房しても、ヨーロッパの冬は寒かった。だから、長襦袢と着物を重ねて寝かせていた。

「わかったわ。私、着物を出してあげる。」

トラーは、そばにあった水穂のスーツケースをあけた。開けるのに、鍵が必要で、パスワードを思いだそうとしていると、玄関のインターフォンがなる。


「おーい、大丈夫かーい。」

チボーはもう我慢できなくなって、玄関のドアを開けて、中に入ってしまった。

「あいよ、せんぽくん。いま着物を取り替えようと思っていたところで。」

杉三だけが誰に対しても明るい顔でいうのだった。

「またやっちゃったか。」

「おう、もう大変。大嵐。全くよ、結果としてご飯を食べなくなるから困ったものだよな。この鎮血の薬が、かえって一日中眠らせちゃうので。」

杉三は、そういいながら、水穂の着物を脱がせた。白い着物の上前のともえりが、真っ赤に染まってしまっていた。

「とりあえずそれ、洗ってきてくださいな。着替えは僕がやりますよ。ガウンと同じようにすれば、いいんですよね?」

と、チボーは言った。確かに男物のきものは、おは処理が要らないので、着るのはさほど難しくない。

「おう、あとへこ帯を蝶結びに結んでやってくれ。」

「わかりました。汚れが取れなくなってしまうと困りますから、すぐに洗ってきてあげてください。」

「ありがとなあ。じゃあ、洗濯室、借りるよ。」

杉三は、着物を持って、部屋を出ていった。チボーはトラーに、早く着せてやろうといったが、トラーはスーツケースに入っている着物を見て、なんだか頭をひねって考えている。

「どうしたんだよ。寒いから早く着せてやろう。」

「おかしいと思わない?」

トラーは着物をスーツケースから出して比べながら言った。

「なんでこんな変ながらの着物ばかり持っているのかな?こんな大きな柄の着物、自分で似合うと思って着ているのかしら。」

確かにきものは、紺色に、十文字を大きく入れたり、井桁を大きく入れたりしたものばかりだった。

「日本人だもん。きものは着るさ。中東の人が、あたまにショールを被って、公務に出るのと同じような感覚なんじゃないのか?」

まあ確かに、中東の人は、みんな民族衣装を着て、あたまにスカーフを巻いたり、ターバンを巻いたりしていつでもどこでも過ごしている。

「そうだけど、こんな変な柄の着物、水穂が喜んで着ると思う?あたしはそうはおもわないわ。日本はそれとも、中東みたいに、規制がきびしい国なのかしら。」

トラーは、変だなと言うかおをしていった。

「何回かバイオリンの演奏にいったことがあって、その時に、着物で来ていた人もいたけど、確かにそういえばこんながらの着物で来た人はいなかったよ。」

チボーは、自分の記憶を思い出しながらいった。

「でしょ。だから、あたしは特別な着物にしか見えないのよ。なんか直感的に、アメリカのパウハタン族みたいな人が着ている色みたいにみえた。」

トラーは、時時そういう直感が働くときがある。理由は知らないけれど、なぜかそう思ってしまうような時があるのだ。

これと同時に、水穂が、二三回、咳をしたので、

「まずい、すぐに着せてやろう。」

と、チボーは急いで彼に着物を着せてやり、杉ちゃんに言われた通り、へこ帯を蝶結びに結んで、すぐかけ布団をかけてやった。

「こんな着物で生活しているんだから、絶対何か訳があるのよ。だから、こっちへ来たんだわ。」

「うん、確かに僕もそう思うんだ。」

チボーも、腕組みをしてそう呟いた。

「初めて会ったときからおかしいと思ったよ。戦時中ならここまで重症になっても仕方ないが、いまはどこの病院でも、結核は治せるはずだし、日本でもそうだと思うんだよね。日本は遅れている訳じゃないから。それなのに、なんでここまで悪くなっているんだろうか。」

「悪いねえせんぽくん。」

二人が考えこんでいると、杉三が戻ってきた。いまのはなし、杉三に聞いてみてもいいかなあ、とチボーは思ったが、

「あんまり気にしないでやってくれよ。本人、特別扱いはあんまり好きじゃないと思うから。どうせ、日本では、バカにされるしか、できない身分なんだから、療養に専念するには、こっちへ来なきゃだめなのよ。」

と、杉ちゃんはいった。

「じゃあ、日本にもパウハタンのような、原住民がいるということかしら!」

トラーは強くいったが、チボーが、静かにしなよ、と注意した。その時はトラーも、あ、ああごめんといったが、まだ納得していない様子だった。

「僕も学生のころ、日本の文化について、習ったことがあったが、まだ若造なので忘れてしまった。ごめん。」

チボーは申し訳なさそうにいった。

「まあそういう事よ。日本では四民平等何て言う言葉があるけどさ、そんなものは大間違いだ。もうな、そんなこと言ってるせいで、本当に苦しんでいる人がいるのに気が付かない、政治家何てバカなもんだよ。誰のおかげで日本は幸せで平和なのか、もうちょっとしっかり、考え直したほうがいいのかもね。」

杉ちゃんは、えへんと日本の事情を説明した。トラーもチボーも水穂さんを見て、そういう事なのか、と考え直した。

「じゃあ、つまり水穂さんは、日本にいる限り、幸せにはなれないという事なんですね、杉ちゃん。」

と、チボーが、そう考えこむように言う。

「そりゃそうよ。日本ってのは階級社会が厳しいところだからね。個人的のどうの、よりも、日本は、順位がどうのとか、身分がどうのとか、そっちの方が優先。そういうこっちゃ。」

「そうかあ、日本はテロがないから平和で安全なところだと思っていたけどそうでもないのね。」

トラーはがっかりとした顔をする。

そういうことを話していると、水穂さんが苦しそうに唸りだした。消防自動車のサイレンみたいに立て続けに唸った。

「よくある話したが、鎮血の薬の副作用でな、眠るとこういう風になるのよ。どんなにか、恐ろしい夢を見てるんだろうか。」

杉三が、あーあとため息をつく。

「単に、それだけじゃ無さそうな気もするんだけどなあ。きっと、こっちへきて、食べられそうな物もないし、辛いのよ。何とかあたしたちで慰めてやりたいような気もするけど。」

トラーが、いきなりそんなことを言うので、チボーはぎょっとする。本当にトラーのやつ、水穂さんに惚れてしまっているんだろうと。

「ねえ杉ちゃん、こっちでてにはいるかはわからないけどさ、水穂が好きなお菓子ってないかしら。」

トラーがそうきくと、杉三は、

「焼き芋。」

と、即答した。

「焼き芋と言いますと、ポテトチップスみたいなものですか?」

チボーが、そう聞くと、

「いや、たんにさつまいもをアルミホイルで包んで、火で炙って焼いただけのものさ。他のものは、材料費がかかるが、焼き芋は、炎さえあれば作れるから、お代がただだから。」

と、杉ちゃんはそういった。

「ガスコンロで焼けばいいのかしら?」

トラーが、聞くと

「いや、焚き火をくべて、そのなかに芋を突っ込むのさ。」

と、答える杉ちゃん。ずいぶん原始的な食べ方をするものだ。そういう食べ方をする以上、やっぱり水穂さんは、貧しい環境で育ってきたんだなと、チボーは思った。そういう人に彼女をとられてしまっては、悲しいというものである。

そうしているうちに、唸りはとまって、またすやすやと静かな寝息に戻った。とりあえずそれだけでよかったなと、チボーはため息をつく。トラーは、杉ちゃんと一緒に、水穂さんの体に触って、熱があるかを確かめたりしていた。

なんとも切なかった。お兄さんのマークさんはとりあえず、二人が来てくれたことで、うちのトラーも、長らく続いた引きこもりにピリオドを打ってくれるか、と、喜んでいる。それは嬉しいことなのだが、それは同時に、チボーには、自分から離れてしまうということを意味する。つまり、トラーは水穂さんの方へいってしまう。もし、こっちを離れて、日本に行ってみたいと言い出したら、もうどうしたらよいのだろうと、チボーは考えてしまうほどであった。

でも、水穂さんに嫌がらせをしてしまおうとか、そういうことはチボーにはできなかった。水穂さんは元々体も悪いんだし、僕とトラーの関係なんて、全く知らないだろうから。チボーはそういうことはできない男であった。いわゆる悪男というのには、なれなかったのである。だから、ただ、切ない顔して、トラーが水穂さんの世話をしているのを眺めていた。

「まあ、もうすぐクリスマスだよなあ。」

本来、クリスマスは、トラーと二人っきりで過ごすつもりでいた。クリスマスは誰かと二人きりで一緒に居たい、というのは、どこの国でも同じ事だ。欧米であればより顕著である。

でも、そんなこと、今のトラーに言ったら、何をバカな事を言っているの!今は水穂の事で、そういう事にかまってられないわよ!何て、怒って言い返すに違いない。あーあ、僕のささやかな楽しみは、こうして盗られてしまうのか。

「ねえ杉ちゃん。もうすぐクリスマスなのは知ってる?」

不意にトラーはそういうことを言い出した。

「まあ、僕には何も縁のない行事だけどな。」

杉三は、何食わぬ顔でそういうことを言った。

「そうね。だけど、こっちでは、盛大にいわう行事なのよ。だから、誰か、主役を決めたいの。クリスマスにはね、主役を決めるのよ。それがルールなの。」

と、トラーはまた変なことを言い始めた。

「そうか。でも僕たちは、そういう事には全然縁もゆかりもありませんからね、主役にはなれないな。」

という杉ちゃん。

「決まってるじゃないの、今年のクリスマスの主役は、水穂よ。水穂のすきな、焼き芋だったっけ、一杯食べさせてあげましょうよ。」

トラーがそんなことを言いだすので、チボーは、ああ、もうだめだ!と思われるほどの衝撃を受けた。

「主役ねえ。そんなものいらないと思うんだけどなあ、、、。」

「ダメよ、杉ちゃん。あたし、明日、芋買ってくるから。作り方、教えて頂戴ね。焼き芋の。今年のクリスマスは、水穂のためを思って、ケーキは焼かない。代わりに、焼き芋を焼くのよ。まあ、お兄ちゃんは、多少がっかりするかもしれないけど、水穂のためだってちゃんと言えば、わかってくれると思うから。お兄ちゃんは、頭ごなしにだめだという人じゃないわ。」

トラーは、そういうことを言うが、マークさんがクリスマスに焼き芋一つで納得してくれるかどうか、果たして疑問だとチボーは思った。其れよりも、ケーキを焼かないなんてあんまりだよ!ケーキは特別注文で買ってきてあげようと楽しみにしていたのに!僕の楽しみはとられてしまった、、、。チボーはまた、がっかりする。

「ねえ杉ちゃん、ほかに水穂が食べられそうなものは、ないの?クリスマスですもの、主役の一番すきなものをあげるのが一番でしょ。」

「そうだなあ、納豆と豆腐かなあ、あと、稲荷寿司にかっぱ巻きかなあ。でも、どれもこっちでは手に入らないものばっかりだよ。僕がマークさんと百貨店に行っても、どこにもなかったもの。」

「そうね。」

と、トラーは、大きなため息をついた。

「悲しいわねえ。折角、こっちへ来てくれたのに、食べられるものが何もないなんて。まあ、こっちでは、スイートポテトは作ることがあるから、それならあるかもしれないわよ。それで良ければ、、、。何処に売っているかな。」

トラーはそういうことを考え始めた。今の彼女が生き生きとしているのは、水穂さんのおかげで、自分の事ではない、というのが悲しいところであるが、でも、チボーは、それで我慢しようと思った。そうしなければ、彼女は笑顔になれない。彼女が喜んだ顔をしているのが、僕にとって、一番嬉しいことだし。そのために、水穂さんという男性が必要なのなら、、、もう、我慢するしかない。じれったいけど、悲しい想いだった。

「わかったよ。じゃあ、僕が、サツマイモを買ってくるよ。サツマイモなら、近所の万事屋さんにうっつていると、聞いたことがあった。」

と、チボーは悲しい気持ちを、押し殺して言った。それが顔に出ているか出ていないか、自分で確かめることができないのが、人間らしいと言えば人間らしいのかも知れないのだが、、、。

「若しかしたら、日本のサツマイモと違うかも知れないけど、それでもいいですか?」

と、杉三に聞くと、

「かまわんよ。それは、お前さんに任せるから。そっちの事情は、あるだろうからな。」

と、杉三は、にこやかに言った。

「わかりました。買ってきますから、もうちょっと待っててください。」

そとへ出たい!という気持ちと、心の中で涙を振り乱して、急いで部屋の外に出た。部屋の外に出て、チボーは、直立したまま号泣した。なんてこんなに悲しいだろうか!

でも、悲しくても、トラーを笑顔にさせるためには、そうしなければならない。チボーは、急いで涙を拭いて、電光石火の勢いで、万事屋に突進していく。

万事屋さん行くと、サツマイモが大量に売られていた。と言っても、たぶん日本のサツマイモとは違うんだろうなと思われる。ここのサツマイモは商品説明を読むと、紫色と書いてあるからだった。紫色は、高尚な色だ。普通の人がなかなか着用できない色であるという事は、チボーも知っている。そんな高尚な色の食べ物を、水穂さんに食べさせたら、水穂さんは何て言うんだろうか。本当は、自分の想い人を取ってしまった人物に、高尚な色のサツマイモ何て食べさせる気がしないでもなかった。でも、僕はやっぱり、悪男にはなれなかった。それだけは何をしたってできないもの。だから、良いんだ。食べさせてあげよう。そう思って、しずかにお金を出して、万事屋さんから、サツマイモを買って行く。

本当は、切なくてしょうがない気持ちだけど、それを一生懸命押さえて、サツマイモをモーム家に持って帰るチボーだった。


そしてその翌日。

「おい、起きろ。トラーさんたちが、面白いことをしてくれるんだってよ。」

と、杉三が水穂をヨイショと抱え起こした。

「今日は、お前さんのすきなものが食えるぞ。早く着替えろ。」

杉ちゃんは、そう言って水穂に着物を渡した。やっぱり、黒に白で十文字を入れ込んだ銘仙の着物である。

「急いで、着替えてくれ。」

杉ちゃんに急かされて、水穂は何とかベッドから起き上がり、寝間着を脱ぎ、長襦袢の上に重ねて、着物を着た。男物の着物は、着用が楽だから、すぐに着替えられた。杉ちゃんに渡された、黒色の羽織を着て、ヨイショともたつく足を動かしながら、杉ちゃんと一緒に、客用寝室の外へ出た。

「こっちだ。」

杉ちゃんに言われて、水穂は中庭に出た。すると、中庭では、ぱちぱちという音がして、焚火をしているのがみえる。トラーとチボーが、落ち葉を集めて、なにかをしているのだ。

「一体何を?」

水穂が思わず聞くと、トラーが、火箸をもって、焚火の中から何か出した。それを満面の笑みを浮かべて、水穂に見せた。

「クリスマスおめでとう!」

そういう彼女に、チボーは、頭の中で、悲しみを一生懸命感じながら、でも、にこやかな顔をして、そういう彼女を見つめていたのだった。



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クリスマスの焼き芋 増田朋美 @masubuchi4996

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