ボーデンは動かず、剣を構えたまま、自分の最大限の考えを頭の中て回転させ、アリスが何を企んでいるのか、考え続ける。


(俺から仕掛けてもいいのか? いや、どうする。それはカウンターに自信があるからじゃ無いのか? 魔法の使い方だったら互角、反射神経だったら俺の方が上だが、それだと力で押し切られる。それに炎を纏った剣となると、俺の方がちょっと不利になるな。どうする……どうすればいい)


 ボーデンの頭の中は自分がどう攻めたらいいのか。考えがまとまっていない。


「ちっ……」


 ボーデンは舌打ちをし、アリスに向かって一直線に突っ込んでいく。


 鉄で作られた剣は黒く色が変わり、周りから稲妻が走っている。


「––––⁉︎」


 アリスはそれを見て、少し驚く。


「へぇー、その剣は元々砂鉄。それに電磁波を加えた攻撃。おもしろい!」


 アリスは、ボーデンの攻撃をしっかりと受け止め、それを受け流す。


 炎剣は、稲妻を吸収し、エネルギーとして転換する。


「ほら、どうした! 全く傷の一つもついていないぞ!」


 アリスは涼しい顔でボーデンに語りかける。


(くそ、全く応えてねぇ!)


 ボーデンは再び、アリスから距離を取り、剣を蹉跌に戻し、地面へ返す。


「なんだ、もう終わりか? 素っ気無いねぇ」


「いや、まだ、終わってねーぞ!」


 ボーデンは、次の攻撃のモーションに入る。右手を前へ出す。


「ふん!」


 詠唱なしで魔法陣を展開し、魔法を発動させる。


 魔法陣から水の鋭利が無数にアリスに向かって飛んで行く。


「近距離戦の後は、遠距離戦か?」


 アリスはそう言いつつ、飛んでくる水の鋭利を払い除ける。


「!」


 だが、アリスが払った水は、服や皮膚に飛び散り、服が破れ、火傷を負う。


「これはただの水じゃ無いっすよ! 魔法というのはいくつも合成し、作られている。俺はただの魔法師じゃない!」


 ボーデンは遠距離射撃をやめる事をしない。


「……」


 一方で、アリスは剣を振り払うのをやめ、避けるたびに後ろへと後退してい。


 ボーデンも連射撃を繰り返し、両手を合わせ、魔法陣を二つ展開させる。


 今度は水に氷を合わせた遠距離魔法がアリスを追撃する。


「ほう、次は同時に魔法を……。これは私も少し本気を出さねばならないようだな」


 アリスは炎剣を解除し、無の状態になる。


 それにしても彼女は、余裕の笑みをいつまで保てるのだろうか。服も皮膚もボロボロの状態である。それでも彼女は国家魔法師であり、国際魔法師にならなかった魔法師である。ボーデンと戦うのは、本気でしなければならない。


「さて、まず、レッスン1だ」


「はぁ?」


 ボーデンは首を傾げる。


「魔法というのはその昔、いくつだった?」


 アリスはボーデンに質問をする。


「火、水、土、風の四大元素だ……です……」


 言い直して、敬語で返事をする。


「そうだな。今は便利になった魔法もその昔は四つから始まった。いや、その前にもその元となる元素がある。魔法というのは基礎の基礎。浅く深く潜り込めるかどうかで、自分の魔法の知識が増えていく」


「何が言いたいんですか……?」


 緊張感が走る中、アリスは話を続けながら、手元で何かを始める。


「四大元素から複数の属性が生まれ、陰陽系、五行系、自然系へと様々な変化へと進んでいき、今に至り、そして、未来へと更なる進化を進めていく」


 手から再び炎を出す。


「私の魔法は四大元素の一つ、火属性。火は炎と熱を操る。一見、誰もが扱いやすい魔法に見えるが、一つ間違えれば脅威になる。戦う相手を見て、火だと油断した奴は足元を取られる」


 炎は赤から青へと色を変化する。


「炎はいろんな形へと変化していく。例えば……」


 青い炎を両手でしっかりと握り、弓を引くように構え、右手を離し、炎を放つ。


 ピュン、ピュン、ピュン。


 尋常じゃない速さでボーデンの顔の左をギリギリで通り抜き去って行った。


「……」


 ボーデンは目を丸くして、ゆっくりと後ろの方を振り向く。


 青い炎は、メラメラと燃え上がり、地面に突き刺さったまま、ボーデンの方へと反射して跳ね返ってきた。


「くっ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

吸血鬼と異世界人 ユグラシド @yugurasido

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ