第12話 協力と決意

「ようこそ、我がウィング・リバーへ」

やたら物理的にも値段的にも高そうなビルの会議室にて、口を開いたのはウィング・リバー社長の羽川義輝だ。

「さてさて、世界に羽ばたく名傭兵様の立花さんが何の御用でございましょうか?」

「なんだか歓迎されてないな〜」

言うまでもなくウィング・リバーと立花自衛業は仲が悪い。というのは、考え方の違いないである。俺達の獣人含めモンスターでさえ共存出来るという考えに対し、ウィング・リバーは獣人でさえ排除すべきだという考え方を示している。力のあるウィング・リバーは1日でも早く全獣人を排除しようと思ってはいるが、そこでキーなのは立花恵本人だ。方針を示し、勝手に獣人を排除してしまえば当然立花恵は反対してくる。そこで強硬手段に出てしまえば、WMO所属の兵の言う事を無視するということは、WMO、ひいては世界の意見を無視する事になる為、ウィング・リバーは容易に動けないのだ。その張本人が作った組織との仲などたかが知れてると言うものだ。

「まぁいいや、本題に入る。」

余裕とも見れる笑顔から一転。真剣な表情で話を始める恵さん。犬猿の仲とはいえ、仕事の話になれば流石の義輝も聞く姿勢を持つ。

「この地域を調査したところ、かなりの確率、それも早くにS級モンスターが出現することがわかった。これにより、WMOからの派遣が間に合わないと判断し、貴社に協力を仰ぎたく思うのですが、如何でしょう?」

「協力の申請、是非ともやらせていただきますが、報酬は、高くつきますぞ?」

内心ちょっとイラッときたが、まぁ至極当然のことだろう。それで食ってるのが傭兵なんだから。

「それでは、交渉及び作戦会議と行きましょう?」

そこには初めと同じ笑顔をした恵さんがいた。


 車に帰って来ると後ろに座っていたあずきと起きたミナヅキがいた。

「具合はどうだミナヅキ?」

「何も問題ありません。元気です」

そう言って笑顔を見せてくれる。無理をしているようでも無いこの笑顔なら本当に大丈夫そうだ。

「だけど、何かあったらちゃんと言えよ?」

「はい」

「次はどこ行くの?恵ちゃん!」

「次は、研究所だな。ある分だけでも持っとかないと行けないからね。それじゃあ出発するぞ」


 移動中、会話は無かった。大きな、経験のない戦いが起ころうとしてるのだ。緊張や不安、それらの感情がこの小さな車内を埋め尽くしていた。

 何があっても皆は俺が絶対に守る

その言葉を何度言っただろう。いや、言ってはいない。頭の中で何度も自分に言い聞かせていた。

「翔夢偉様?」

ミナヅキの声が聞こえスッと我にかえる。

「どうした?ミナヅキ。具合でも悪くなったか?」

「いえ、私は大丈夫ですけど、翔夢偉様の顔色があまり良くないように見えましたので」

顔に出てたのか?情けない。これでは逆に良くない空気にしてしまう。

「大丈夫だよ。ちょっと考え事をしていただけ」

ここで皆を絶対守ってやる。なんか言ったら帰って来る答えは分かってるし、言ったから頑張るって言って無理して欲しくない。だからここはこの答えが適切であろう。

「無理はしないでくださいね」

ミナヅキはそう言った。読まれたかとドキッとしたが話の流れで言っただけだろう。今は戦いに集中しよう。

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傭兵と獣人 橘 黒無幻 @kokumugen

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