第11話 内緒の特性と焦り

「どう言う事なんですか師匠」

これは至極当然の疑問であろう。だって明らかにミナヅキの体調を聞いて場所を決めていた。どう言う事なのか聞きたくなるのは当たり前だ。

「どうもこうも獣人は何かを感じられるっぽいんだよね〜、S級モンスターが出現した所では必ず獣人が不調を訴えていた事がWMOの調査で分かっていたからね。あっこれ564部隊だけにしか言われてない事だから聞かなかった事にしてね」

そんな特性が獣人に合ったとは。

「恵ちゃん恵ちゃん。なんで公表しないの?そうすれば調査が楽になるんじゃ無いの?」

「公表したら獣人を酷使する輩が出てくるんじゃ無いか?」

「それもあるけど、これS級モンスターにしか効かないのよね。だから他の隊には要らない知識だって言っていたわ」

確かに前の群れとの戦いではミナヅキはいつも通りだったな。

「ってミナヅキ大丈夫か?」

しくった。確かに知らない事を知る事は大事だがミナヅキへの注意が薄れていた。見るとミナヅキは息を荒げかなり消耗しているように見えた。

「はぁ...はぁ...ちょっ...と休ませて...貰っても...良い...ですか?」

「いや引き返そう。大体分かったからもう大丈夫よ。翔夢偉!ミナヅキを背負いなさい。走るわよ!」

「「了解!」」


何事も無く車に着き帰路に着いた。ミナヅキは車の中で落ち着き今は眠りについてしまった。起きている3人の間にはなんとも言えない空気が流れていた。

「すまないな、大切な弟子に苦しい思いさせてちゃって」

師匠が柄でも無い真面目なトーンで謝ってきた。

「そして、ありがとうね。おかげでかなり事態が悪化してる事が分かったよ」

「それはどう言う...」

来た時はあんなに余裕そうにしていたのに今は表情がすごく硬い。あの表情は...焦り?

「今からウィング・リバー本社に行く」

「げっ!」

あずきが明らかに嫌な顔をする。

「ははっ、なんかあったのか?」

「ちょっと前に絡まれた事があってね」

あそことは元々考え方が真逆であっちはモンスターは皆殺しだ、という考え方だ。その上絡んできたのは言い方は悪いが粋がってる下っ端だった。

「だが、時間が惜しい。一刻も早く多くの傭兵に協力を頼まないといけないからね」

「さっきからなんだからしく無いですよ師匠。いつもなら冗談混じりに話をするのにミナヅキの事があってからなんだか焦ってるよです。どうしたんですか?」

正直認めたく無かったのかもしれない。師匠が焦っている事態なんて今までに無かったから。それほど最悪な事態になってしまっているのかもしれない。そんな思いを消し去りたかった。しかしその願いは師匠の言葉により打ち砕かれた。

「564部隊が間に合わないかもしれない」

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