大地を歩く夢を見ていた
冬眠鼠 瓠瓜
風雨に晒された日記帳
古びた日記帳が雪の残る地面に落ちている。
誰に書かれることも、読まれることもなくなったそれは、風でパラパラとめくれた。
日記帳
大桃 樹(オオモモ イツキ)
20XX年 3月XX日(金)
検査結果が出た。端的に言ってしまえば、自閉症スペクトラムだった。伊藤学部長からの指摘と診断の勧めを受けた大学2年になるまでわからなかったから、本当に最重度の人よりははるかに軽いものであるとは思っているし、感じてもいるが。
さて、こうなると特に困るのは就職だ。検査を受けることになった際に障害者雇用については軽く調べてみたが、そもそも障害者であることを公表するか否か、そこから考えてなければならないじゃないか。面倒なことは出来るだけ避けておきたいと思っていた僕としては相当辛い。さっさと遠いところで就職をして、常にギスギスしたあの両親から、家庭内暴力を振り撒く父からできるだけ離れたかったのに。今だって一人でアパート暮らししているのは離れる為だというのに。
あと、問診や検査中の言動から判断して不安症状も出ているということで、頓服薬も貰ってしまった。調べてみると、ネット見かけるような依存症にはなりづらい薬だという。とはいえ、頼りすぎないよう気を付けなければ。
20XX年 3月XY日(月)
診断を勧めてくれた学部長に検査結果の報告をした。
「やはりそうだったのですか。大桃君に検査を勧めてよかった。就職後に苦しんで、うつ状態になった後でようやく障害が発覚する例も多いですから。」
と言ってくださった。困った時はできるだけ力になる、とも。自分一人ではわからないことが多い状態なのでとても有難い。頼りたい時は頼らせていただこうと思う。
そうしたやりとりの最後に、学部長が尋ねてきた。
「大桃君、このことはもうご両親には伝えたのかい?」
簡素にいいえ、とだけ伝えると、
「そうかい。伝えなければならない時はきっと来るから、その時でいいと思うよ。」
とだけ言ってくださった。この気遣いは、今の僕には有難い。
そういえば、明後日に淳の電子工作の買い出しに付き合うことになった。淳…もとい久住 淳(クスミ ジュン)は、大学でできた信頼のできる親友だ。障害のことを伝えてもいいかもしれない。
20XX年 3月XZ日(火)
今日は家で趣味の園芸に力を注いでいた。室内の植物達のメンテナンスをしていた訳だが、とりわけサイネリアが見事な青い花を咲かせているのが印象的だった。最近購入したばかりなので当然といえば当然だが。そのサイネリアだが、散りそうになっている花弁も目立ってきたので摘んでおいた。これで蕾がまた見事な花を咲かせてくれることだろう。最近調子が悪かったモウセンゴケもちゃんと粘液が出てきて元気になっているようで一安心だ。
今も昔も、僕は植物が大好きだ。大桃という名字に樹という名前、植物好きだということで随分とからかわれたし、高校では虐めも受けたものだった。
でも、それでもやっぱり植物が好きだ。
植物といえば、小学生の頃に祖父母に連れていってもらった尾瀬が忘れられない。凛とした佇まいのブナ林、広々とした湿原に咲く花々。特に7月あたりは素晴らしい。色とりどりの花が見られる。鮮やかな黄色のニッコウキスゲ、オレンジ色の花被片の内側の斑模様が洒落ているコオニユリ、紫色の帽子のような花が印象的なコバギボウシ、池塘のコウホネにヒツジグサ等々。眺めていて楽しいものばかりだ。挙げはじめたらきりがない。
8月頃も勿論愉快な花ばかりだ。暗い赤紫色で秋の訪れを告げるミヤマワレモコウや、ブラシ状の花と草丈の高さで素晴らしい見栄えのクガイソウ、なんだか稲に似ていて微笑ましい気分になるアブラガヤ。僕のお気に入りはヤナギランだ。ピンク色の花が群れを成して咲いている姿は、ひたすら美しく、圧倒的だ。
……本当にきりがないので花を挙げるのはここでやめにしておく。
植物が好きで、育てることも見ることも好きで。そして、人間が何を考えているのかわからず、人間関係が億劫で、面倒で、恐ろしく、常に苦悩ばかりで。何も感じないかは知らないが、あるがままにそこに居る植物になりたいと思った時期もあったな、と、ふと思い出した。
20XX年 3月XA日(水)
大変なことが起こった日だった。
10時頃に駅前で親友である淳と無事合流した後、専門店であれこれ買い物し、適当なファミレスに入って昼食をとった所まではよかった。検査や障害のことも話せたし、受け入れて貰えたから。
そろそろ会計をしよう、と思っていたところで事件は起こった。突然窓ガラスから見える空が煌々と光りだした。窓の外を見てみると、巨大な火の玉が滑るように空を飛んでいくのが見えた。
「なあ樹、あれ、隕石なんじゃないか!?」
と、興奮半分、恐れ半分な声色で淳が火の玉を指差していたのを覚えている。僕もそうだと思ったし、そう伝えた。動画サイトで見たロシアの隕石落下動画にそっくりだ、とも。
結局、すぐにファミレスの外には出ず、隕石通過後にやってきた衝撃波を店内でやり過ごしてから淳と別れて帰宅した。ファミレスの窓ガラスは特殊な強化が施されていたから衝撃波でも割れなかったものの、それ以外の駅前の建物は悲惨なことになっていた。駅でもホームの天井破損などがあったらしく、電車は一部路線が臨時運休になってしまっていた。淳が利用してる路線が運休にはなってなかったのは幸いだったが。
帰宅してSNSやニュースサイトを覗いてみると、どこも隕石の話題で持ちきりだった。ロシアのときより大きな隕石が大気圏中で爆発して分裂しただとか、日本国内だけではなくアジア圏にも隕石か降ってきて被害を及ぼしているだとか、そういった話題ばかりだ。
今回の隕石はかなり大きなもので、世界各国が衝撃波や隕石本体による被害の取り纏めでてんてこ舞いらしく、隕石本体の解析はできていないようだ。起きていてもこれ以上進展はなさそうだし、早く寝よう。
20XX年 3月XB日(木)
淳と電子工作をする予定になっていたのだが、淳の実家が件の隕石の被害に遭ってしまい、片付けをしなければいけないということで、用事がなくなってしまった。
しょうがないので、花たちの世話をしつつ積んでいた小説を読んだりしていた。買ったはいいけども暇がなくて読めなかった辞書並みに分厚い小説は……半分以上読めただろうか?
また、隕石のニュースが気になったのでSNSとニュースサイトを周回する。昨日よりは多少騒ぎが収まっただろうか。各国の被害状況がまとめられていたりしていた。どうやら、ことはアジア圏だけではなく、ヨーロッパから南北アメリカ、アフリカ、オーストラリアにも及んでいるらしい。どれ程大きい隕石だったのか、想像するだけで身震いする。空中で分裂せずに落下していたら氷河期でも到来していたんじゃないか?
202X年 3月XC日(金)
来週月曜からは5日間の集中講義だ。土日はバイトで忙しいし、そうなると多忙で買い物などしていられないから、日用品の諸々の買い出しと通学用の車のガソリン補充をしなければ。と思いつつも、結局外出したのは午後3時になってからだった。あれこれやりたいと考えつつも家に引きこもりがちになるのは悪い癖だと自覚している。
街路樹の冬芽が徐々に緩んできていることに喜びを感じながら日用品店のレジ袋を持って雑踏を歩いていて、ふと気付いた。髪の毛の一部が緑色になっている人が目立つことに。くすんだ緑などではなく、新緑のような鮮やかな緑色。大体頭頂部の一部が緑色状態な人が一番多い。もしかしたら、緑色に気づいていないのかもしれなかった。
そうなると自分の髪の毛が気になって、帰宅後に自分の頭を掻き乱すようにして探ってみた。あった、鮮やかな緑色の髪の毛が頭頂部に短いのが何本か。プツン、と一本採取してみると、植物を摘んだ時のような青臭い香りが漂う。髪の毛が蔓状植物に置き換わっている?原因不明の事態に困惑を隠せなかったが、僕一人にはどうしようもできないことだった。
ネット掲示板では話題になり始めていたので、髪の毛の写真を身バレがない程度に加工して、詳細なコメントと共に載せておいた。
20XX年 3月XD日(土)
朝から多忙でヘトヘトだ。失敗せずに終わったのが奇跡な程に忙しかった。
バイト先のシェフ達やオーナーも髪の緑化現象に頭を悩ませていた。今日明日、厨房のシェフ達は取り寄せた給食帽子を被って調理を行うらしい。
外出前と帰宅後に髪を確認したが、昨日と比べて僅か一日程度で短かったのが頭頂部以外でも目立つ程度の長さになり、本数も数十本に増えていた。
植物は勿論大好きだが、これは少し気味が悪い。
20XX年 3月XE日(日)
この土日を無事乗り越えられたことにホッとしている。
それにしても、僕と比較してシェフ達やオーナー達の髪の緑化の進行が早い気がする。僕は緑のメッシュが入ったようになっているところだが、シェフ達は緑髪のほうが地毛であるかのような状態だ。個人差なのだろうか?オーナーはまだ黒髪が少し目立つので個人差かもしれない。
帰宅すると、「髪の緑化、原因は調査中であるが今のところ人体に影響はなし、または有益の可能性あり」という政府発表がされていた。髪の緑化している部分は本当に植物になっており、光合成をおこなって発生した有機物は少なくとも人体に影響をもたらさないという。
本当だろうか?半信半疑でも、今は信じるしかなかった。
【追記】
寝る直前に、突然の情緒不安定。処方された頓服薬を服用。飲んで30分後に効きはじめる。それと同時に頭がざわざわする感覚。すぐに収まった。なんだったんだ。
20XX年 3月XF日(月)
今日から集中講義だ。5日間1限から5限まで全コマ授業というのはかなり辛いが頑張ろう。
今日講堂に行ってみてまず驚いたのが、履修する学生の髪で部屋が緑色だったことだ。ついでに講義担当の教授も髪が増量した上で緑化していた。禿げ上がった状態からフサフサになるのは予想外過ぎる。ともかく、緑化が予想以上に進んでいたことにただ唖然とするばかりだ。淳も「あの教授がフッサフサとか想像できねえよ…ふ、ふへっ」と必死で笑いをこらえていた。
そんな淳の髪も全体的に緑化していた。淳も僕と同様に3日前くらいから急速に緑化してきたらしい。何も異常なく元気そうなのは良かった。
帰宅してニュースを見る。世界的に進行している毛髪緑化は全世界を賑わせているようだ。中には本格的に光合成だけで生命維持を図ろうとし始めた人もいるらしい。
隕石落下の被害の話題は緑化に押し退けられていたが、隕石落下箇所の都市の修復や隕石の成分調査が始まったというニュースは辛うじて掲載されていた。
20XX年 3月XG日(火)
遂に僕の髪も全部緑化した。
大学構内や駅前を歩いていると、遥か昔から人類の髪は緑色だった気がしてくる。それほどまでに人々は髪の緑化を受け入れているようだった。
淳は最近日光をできるだけ浴びるように心がけているらしい。日光浴をするとなんだか身体が軽いのだという。未だに髪の緑化の原因とそれによる副作用の報告は見当たらない。研究機関でも未だに研究中ということだろうか。
帰宅後、入浴してふと頭頂部を触ったら、小さなたんこぶ程度のできものができていた。頭頂部をどこかにぶつけた記憶はないのだが…一応塗り薬はつけておいた。
【追記】
頓服薬服用。飲んですぐに吐き気を感じる。胸焼けのような吐き気ではなく、胃それ自体が拒否反応を示しているような吐き気。結局吐いた。副作用とは違う気がする。
20XX年 3XH日(水)
死体を見た。僕の、人類の今後に関わる可能性もあるので、思い返すのも嫌だが記しておく。
朝8:30頃、大学に到着。4階窓ぎわに立つ女性の姿あり。頭からナンバンギセル(寄生植物)が生えていた。女性は窓を開けると躊躇なく飛び降りた。周囲にいる学生たちの悲鳴。僕は悲鳴すら出なかった。そのうち救急車と救急隊員がやって来て、女性を搬送していった。助かるとは思えなかったが。飛び降りた女性は既に肉塊になっていた上、その血液は濃い緑色をしていた。
大学は閉鎖、集中講義はお流れになり、再開は未定になった。帰宅後にネットを見れば、自殺多発のニュースばかり。今日だけで全国で100人以上は飛び降り自殺をしているらしい。海外も酷いものだそうだ。
何がどうしてああなったのか。わからない。全くわからない。でも一つわかるのは、そもそも髪が緑化し始めた頃から何かが狂い始めたということ。何故髪の毛を構成するタンパク質が植物に置き換わった?人類に何が起こっている?
早めに寝ることにする。頭頂部のできものははち切れんばかりに大きくなった。
20XX年 3月XI日(木)
寝れずに深夜2時、ニュース速報が入る。隕石の解析結果とそれに関する重大発表。
隕石に含まれていたのは未知のミクロ寄生植物。隕石に含まれていた寄生植物は、大気圏内で隕石が爆発しても生存しており、それが地球上に降り注いで人類の髪の緑化を引き起こしたのだという。
寄生植物は寄生先の動物の細胞や血漿などを植物細胞や葉緑素などに置換し、ある程度まで侵食したら、体内で生成したミクロの寄生植物を撒き散らす為に動物を高所から飛び降りさせて殺すのだという。冬虫夏草のような、捕食寄生的のような生態だ。
そして、寄生植物が飛び降りを決行するよう仕向けるのは、頭頂部の植物がある程度成長した時だという。
思わず頭頂部を触る。できものが破け、木の芽のようなものが確認できた。
僕は発表を読み進める。結局、身体が植物に置換している上にそもそも人体に有害であるため、除草剤を飲む訳にもいかず、治療法が存在しない。人類の滅亡はほぼ確定的となった、と書いてあった。
どうにもならないことに勝手に巻き込まれて、勝手に命の期限が切られた。
やってられるか、と頭まで布団を被って無理矢理寝た。
筈だったのだが、昼前には目が覚めてしまった。どこか遠くで人が地面に叩きつけられる音がする。ドン、ドン、ドン、ドン。トマトが潰れるように人間がアスファルトに潰される。心なしか遠くから罵声が聞こえる気がする。実家を思い出して気が滅入る。大切な花たちの水やりや世話をする気も起きない。何も食べる気も起きない。無論、起きる気もない。
おやすみ。
20XX年 4月XJ日(金)
朝5時。起きてLINE二件。淳と母から。
淳からは別れの挨拶だった。時刻は昨晩10時。
書いてあったのは、ご家族が飛び降りようとしているのをビニール紐で拘束して首を締めて殺したところであることと、植物としてではなく人間として死ぬ為に今から首を吊ること、「迷惑かけた。ごめん。ありがとう。さようなら」。
なんだかんだで誠実な奴だった、こんな情緒不安定な奴と仲良く付き合ってくれたし、と、ぼんやり思う。僕自身も植物に侵されて判断力が鈍っているのか、あまりにも現実感がなかった。悲しい筈、悲しい筈なのに。早めにこの世を去る決断をした淳に静かな敬意を持っている自分がいた。一枚だけ添付された不慣れな自撮りには、頭頂部で見事な花を咲かせたリンドウが写っていた。淳らしい花だ。
母からは助けを呼ぶメッセージだった。時刻は先程…4時。
父が頭からアサガオを生やして飛び降り自殺してしまった、自分もぼんやりしてると足を高所に向けようとしてしまうから足をなんでもいいから拘束してほしい。
結局父は家族を疎んであれほど暴言と暴力を振り撒きつつも家族の目の届く場所で死んだのか。母も懲りずに傍にいたのか。嫌ならばさっさと離れればいいのに何故離れなかったのか。両親は僕には理解できないことばかりしている。
それでも、行かない訳にはいかない。助けを求められたなら手を差しのべるべきだろうし、もう死んでたとしても最期に顔を見るべきだと思ったから。
頭から飛び出した木の芽のせいで頭頂部が染みるものの風呂に入り、身支度を整え、花たちに水をたっぷり与えてから一昨日ぶりに車のカギを取り出し、車で実家へ向かった。
フロントガラス越しから見える世界はそれはもう酷かった。
歩道や道路脇にうず高く積もった緑色の飛び降り自殺による死体からは緑色の血液が湧き出て車道にまで及んでいたし、まだ頭頂部から植物が生えきっていない人々は略奪に及んでいた。紛れもなく国家の崩壊であり、倫理の崩壊だった。
でも、美しくもあった。
歩道や道路脇の死体で花が咲き誇っていた。スノードロップ、トリカブト、バラ、ロベリア、ユリ、アザミ、オトギリソウ…夢にまで見たような花畑。色とりどりの、あまりにも美しい、死体の花壇。人類がどうなる、なんて書いていたが、結局植物の魔性の美しさに勝てない僕がいた。
そうしているうちに実家についた。
玄関前にアサガオが、家の裏手にダリアが咲いていた。
なにもかもどうでもよくなった。
この世の終わりを嘆くネットも、やけくそになって略奪に及ぶ現実の人間も、どうでもいい。伝えないといけなかったことも、できるだけ伝えたかった感謝も、何もかも伝えられなかった僕にはどうでもいい。こんな状況でこんな命に価値などあるものか。
一晩寝たら、尾瀬に行こう。ガソリン略奪も覚悟の上だ。
永遠に眠るなら、尾瀬がいい。心の故郷で眠りたい。
?月?日
ガソリン略奪しようにも、ガソリンスタンドに到達する前に車がガス欠になってしまってひたすら歩いたり途中の鍵つきの車で走れるところまで走っていたので、日付がわからなくなった。最後の日記から一週間は経過しただろうか?二週間?一ヶ月?……まあ、もう日付はどうでもいい。
一旦帰宅して、植木鉢の植物たちを道端の花壇に植え替えたりしたりもしたが、やっと鳩待峠に到着した。全く空腹にならなかったのは良くも悪くも光合成をしてくれる寄生植物のお陰か。今も元気に動ける。水も雨を浴びるだけで事足りる。なんで自殺願望が沸かないのか不思議で仕方ないが。寄生植物は、僕が高地へ向かっていることを知っているのかもしれない。
そして、これがきっと最後の日記になる。
今から僕は尾瀬に向かう。尾瀬に到着したら、尾瀬に身体を横たえて、眠る。
飛び降りないことを寄生植物が許すかどうかは知らない。でも、意識があるうちは尾瀬に骨を埋めることにする。
後にこれを読む誰かがいるとは思えないが、一応この日記も持っていこう。結局ここまでの付き合いになってしまったことだし。
さあ、最後の力を振り絞って雪道を進もうか。
ところで、僕の頭頂部に生えたのはヤチヤナギだった。尾瀬にも生えている、葉を擦ると良い香りのする低木。
僕は、許されたのだろうか。
風にめくられた日記帳は、再び閉じられる。
日記帳のすぐそばには、まだ季節外れの雄花を咲かせたヤナギランが、独特な香りを漂わせつつ青々とした葉を伸ばしていた。
大地を歩く夢を見ていた 冬眠鼠 瓠瓜 @nailblossom
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます