完売御礼

 「カリオテの男」に続き、「冠の男」も、去る二〇一九年十一月のイベントにて完売したとの報告がきております。ブログ記事を上げるのが遅くなり申し訳ございません。アンソロジー作品の執筆をしておりました(まだ途中)(しかも二本)。

 さて、「冠の男」が、何故こんなにも記事が遅くなったのかと言いますと、理由があります。


「カリオテの男」と比べてドラマチックな思い出がない。


 そもそも「冠の男」の構成を思いついたのは、今でも親交のある、矢追教会のある神学者が、聖書について講義をしていたときに、「ステファノは史上初の助祭で、パウロとは兄弟弟子だったという説があります。」と仰った、この一言だけなのです。

 「兄弟弟子で殺し合い? 素敵やん!! えっちじゃん!! 絶対掛け算出来てる奴!!!」と、かつき(not骨林)と盛り上がり、一気に書き上げました。カリオテの男を完結させた直後だったこともあり、両作品には世界観の繋がりはありませんが、非常に近い空気、価値観で書かれてあります。

 イスカリオテのユダが「鳩の姿の神の使い」として登場したのは、この作品が初となります。意地でもユダを入れたかったんです。仕方ないね。推しだからね。

 また、ユダの「裏切り」と、パウロの「殺害容認」をかけたかったのもあります。この辺りは非常に微妙な風体でして、といいますのは、ユダはプロテスタントなら大体悪役なのですが、パウロは東西を問わず、まともなキリスト教ならほぼ全てで尊敬されています。加えて、彼の学術的価値は非常に高く、彼がキリスト教を作ったと言っても過言ではないほどです。

 しかし当然ながら、両者は神の前に罪人であり、その差を誰よりも分かっていたのはパウロです。後世の人間からどれだけ尊敬されても、彼が人を殺す事に賛成していたのは事実です。

 パウロ書簡(パウロの手紙シリーズ)以外でパウロが否定的に書かれているのって、このステファノが死ぬシーンくらいなのです。それは多分、初代教会が原始教会からの伝統を継ぎ、パウロに忖度したんではないか、と思うのです。

 けれども、それが一体何だと言うのでしょう。断罪でしか救えない罪というのもあるのです。裁かれなければ穏やかになれない後悔というのもあるのです。

 それは今日の自殺幇助型社会に生きる我々には、身につまされて実感できる事ではないでしょうか。「貴方は悪くない」という言葉が、どれほど重く、残酷で、絶望に満ちているか。どうしようもない怒りが自分に向いているのなら、その怒りを宥めるのではなく、共有して責めて欲しい。例えそれが、他ならぬ自分であったとしても。

 本編ではそのような問いかけに対して、『悲しむ優越感』という形で表現してみましたが、伝わりましたでしょうか。


 あと、特筆すべきと言えば、やっぱりアレですね。「このハゲー」の本について。

 このシーンはガラテア2:11という所に実際に出てくる包茎が神の前に正しいか正しくないかという論争について、パウロ(書き手側)がガチギレしたことが書かれています。ただ、この本の初稿は二〇一二年、「このハゲー」は、二〇一七年の頃の事ですので、私の方が先に書いています。

 ということはつまりどういうことかといいますと、「冠の男」を「このハゲーの本」と売り出すアイディアは骨林です。天才かと思いましたね。二千年の時を越え、時事ネタに繋げるとは。ちなみによく売れたそうです。


 反省点としましては、「カリオテの男」が一人称で終始「先生」しか見ていなかったのに対し、「冠の男」では、多くの登場人物に関心が向いていますので、和名が乏しかったことでしょう。パウロの弟子は作中では、ルカ、マルコ、テモテなど居るのですが、今読み返してすぐに人名を思い出せません(え)。資料サイトが閉じちゃったのよね………。


 何はともあれ、これにて完売は二作目。「カリオテの男」は第二版という形で、豪華特典と一緒に再販になりましたが、「冠の男」の再販はかなり絶望的です。誠に申し訳ないのですが、DL版でのご提供のみとさせて下さい。

 いえ、出来ればお届けしたいし、骨林にも努力させたいんですが、父の部屋が私の本で占拠されてるのをみたら流石に………。


 報告によりますと、三作目「双子の男」が、五部を切っているそうです。三千円の鈍器が先か、お試し短編集が先か、はたまたワンコインの叙情詩が先か、少し楽しみです。


 それではこの辺りで失礼します。うー、原稿疲れでおしりがいたい………。パウロ書簡を書いていた弟子も、おしりが痛くなったんでしょうか?


2019/12/16 PAULA0125

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